2024.05.02
インドネシア【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第102回「 有期雇用契約の中途解約時における従業員に対する金銭補償に関する最高裁通達」
- 【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第102回「 有期雇用契約の中途解約時における従業員に対する金銭補償に関する最高裁通達」
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◇インドネシア
インドネシアの最高裁は、2023年12月29日付けで、有期雇用契約の中途解約時における従業員に対する金銭補償義務を明確にする通達を公表しました(最高裁通達2023年3号:「本通達」)。本通達は、最高裁から下級裁判所宛の通達であり、インドネシアの法令の一部を構成するものではないですが、各裁判所は遵守すべきものとなります。本通達は、会社運営実務上も考慮すべきものですので、本レターにおいて概要を解説いたします。
インドネシアの雇用契約は、大別すると、期限の定めがある有期雇用契約、及び期限の定めがない無期雇用契約の2つの類型が存在します。
このうち、本通達の対象である有期雇用契約は、雇用期間中に中途解約することができ、この場合の従業員に対する金銭補償義務は、インドネシア労働法62条及び政令2021年35号(「本政令」)17条においてそれぞれ規定されています。
労働法62条においては、有期雇用契約が中途解約された場合、一定の例外的な場面(従業員が死亡した場合、裁判所の決定がある場合、雇用契約・就業規則等に記載の雇用契約終了事由が生じた場合等)を除いて、雇用主は従業員に対して残存契約期間の給与相当額の支払義務を負う旨が規定されています。
また、本政令17条では、従業員との有期雇用契約を中途解約する場合、当該解約時点において雇用開始日から1か月以上継続して勤務をしている従業員に対しては、一定の補償金((勤続期間(月数)÷12)×1か月分の給与(基本給+固定手当)相当額)の支払義務を負う旨が規定されています。
もっとも、実務上は、有期雇用契約が早期に終了したとしても雇用主が上記法令に基づき従業員に対する各金銭補償を行っていない事案が多く見られます。特に、残存契約期間の給与相当額の支払については、雇用契約上、労働法62条の適用排除の特約がなされている事案やそのような特約がない場合であっても実際には支払が行われていない実態も見られるところです。
上記実務は、法令に則していない労働者の保護に欠けるものであるため、最高裁としても、本通達の公表を通じて、改めて法令上の従業員の権利を明確化することを狙ったものと思われます。
本通達でも明確にされているように、有期雇用契約に基づき雇用をしている従業員について早期に契約を終了する場合には、上記2種類の支払を適切に行う必要があります。
本記事掲載URL
20240422-033032.pdf (mhmjapan.com)
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- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作