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2024.01.31

シンガポールシンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第99回「 重要投資審査法(Singapore Significant Investments Review Act 2023)の成立」
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第99回「 重要投資審査法(Singapore Significant Investments Review Act 2023)の成立」
◇シンガポール

シンガポールでは、2024年1月9日、重要投資審査法(Singapore Significant Investments Review Act 2023:「本法」)が成立しました。本法は、シンガポールの国家安全保障に影響する事業を行う事業体への投資を監督・規制するものとなります。本法の施行日はまだ決定されていませんが、シンガポール企業への投資に一定の影響が生じる可能性があることから、以下その概要をご紹介いたします。

(1) 国家安全保障に影響する企業の指定
 
本法の規制の対象となる投資先企業として、シンガポールの国家安全保障に重大な影響を及ぼすとされる事業者(「指定事業体」)については、今後数か月以内に当局によって公表される見込みです。指定事業体のリストについては、その後も当局によって逐次見直され改訂される予定です。
ここでいう「国家安全保障」の定義は、当局が本法を柔軟に運用できるようにするため、本法では規定されていませんが、シンガポールの一部の実務家によると、現時点で当局が指定を検討している事業者については、すでに当局から連絡を受けているといった情報もあります。
 
(2) 指定事業体に関する規制
(a)
持分割合に関する規制
本法により、指定事業体について一定以上の持分を取得、処分等する場合には、当該取得又は処分をする者は、通商産業大臣への届出又は許可の取得が必要となります。具体的な規制内容は以下のとおりです。

  ●指定事業体の持分の5%以上を新たに取得する場合:通商産業大臣への届出
  ●指定事業体の持分の12%、25%又は50%以上を新たに取得する場合(間接的な保有や事業
   譲渡による取得等も含む:通商産業大臣の許可
  ●指定事業体の持分の処分により持分割合が50%又は75%を下回ることとなる場合:
   通商産業大臣の許可

また、指定事業体は、上記の届出又は許可が必要となる取引の存在を認識した場合には、指定事業体自身も当局に通知する必要があります。

(b)指定事業体の持分を取得する者の資質に関する規制
指定事業体の持分の12%、25%又は50%を直接又は間接に取得した者及びその関連当事者は、関連するガイドラインが定める資質(fit and proper)に関する基準を充足している必要があります。また、指定事業体の事業は、引き続きシンガポールの国家安全保障に関する利益に反しないものであることが求められます。

(c)指定事業体の役員等の指名等に関する規制
指定事業体が所定の役員(CEO、取締役、取締役会議長等)を指名する場合には、通商産業大臣の許可を取得することが求められます。また、通商産業大臣は、国家安全保障に反すると認められる所定の役員を解任することもできます。

(d)大臣の許可を取得しなかった場合の効果
必要とされる通商産業大臣の許可を得ないで指定事業体の持分を取引した場合には、当該取引は無効とみなされます。また、一定の場合、通商産業大臣が是正措置(許可の要件が遵守されなかった場合、指定事業体の持分の移転・処分を命じる等)を出すこともできます。
また、所定の役員の指名にあたって通商産業大臣の許可を取得しなかった場合には、通商産業大臣は当該役員の解任を命じることができます。
 
(3) 指定事業体を含むシンガポール国内の全当事者への規制
 
本法では、指定事業体に限らず、シンガポールで設立された者、シンガポールで商品・サービスの提供等の活動を行う者等、あらゆる事業体がシンガポールの国家安全保障に関する利益に反する行為を行った場合、通商産業大臣が当該事業体が行った取引について広範な審査を行うことができるとされており(「calling-in権」と呼ばれます。)、通商産業大臣はそのような取引について必要な措置をとることができるとされています。この審査に関する権限は、取引が行われたときから2年間行使できるものとされています。
 
本記事掲載URL
20240122-034324.pdf (mhmjapan.com)

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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