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2020.08.17

その他のアジア【フィリピン】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《フィリピン編》第9回「解散・清算」 NEW
【フィリピン】第9回「解散・清算」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《フィリピン編》 9回「解散・清算」
 
フィリピンにおいて会社の事業を全て終結させ、会社を清算して撤退する場合の手続のポイントについて解説します。
 
1.人員整理
事業を全て終結させ、会社を解散し清算を行う方針に決めた場合、まずは順次人員整理を行っていく必要があります。解雇手続については、整理解雇を行う場合には、原則として、①整理解雇の回避努力を行ったこと、②整理解雇基準に合理性があること、③通知義務が果たされていること、④解雇手当が支払われていること、の4要件が必要となります。整理解雇を行う場合、役員のリストラ等による経費削減努力を果たした後、正社員以外の従業員の解雇や希望退職者の募集等を実施し、整理解雇の回避努力を行うことがまず必要です。そのうえで、整理解雇の合理的な基準を設定します。かかる基準については、基準自体の合理性に加え、その適用の公平性についても求められるため、公平に適用されたとの証拠が示されないと解雇を無効とされてしまう可能性があるので注意が必要です。また、解雇の通知については、解雇の30日以上前に、会社は対象となる従業員及び労働雇用省(DOLE)に対し、書面による通知が義務付けられています。解雇手当については、最低1か月の給与の半額×勤続年数の解雇手当の支払いが求められます(最低額は1か月分の給与)。日本企業の場合は、法に定められた解雇手当以上の金額を退職金として支払うことが少なくありません。
 
2.資産整理
人員整理が落ち着いたら、残った従業員で会社資産の整理を行っていくことになります。具体的には、新規発注を抑えて在庫を減らす、債権回収を図る、債務を支払う等の通常の対応を行った上で、手持ちの外貨は親会社等への債務の支払に充て、銀行預金口座についても、清算期間中の現地費用を支払うためのペソの当座口座だけは残しておき、残りは徐々に絞っていくなどの対応を行っておくのが望ましいです。また、備品や設備類についても、買取りについて数社に見積もりを依頼することや、自社グループ内での買取りを検討する等の対応も必要になってきます。なお、会社が、PEZA登録企業として無税で設備等を輸入していた場合には、売却や廃棄においてPEZAの許可や通関手続が必要となることがあるため注意を要します。
 
3.解散の方法
人員整理、資産整理を終えると、フィリピン会社法に定められた解散手続を行っていくことになります。フィリピンで設立された会社の解散には、任意解散と証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、以下「SEC」といいます。)による強制解散の2つの方法があり、前者については、債権者に影響を及ぼす場合と及ぼさない場合とで、異なる要件・手続が定められていますが、いずれの場合も取締役会及び株主総会により解散が承認されることが必要になります。任意解散については、加えて、定款上定められた会社の存続期間を短縮し、簡易に任意解散の効力を生じさせる方法も認められています。以下では、これらの解散手続を検討します。
 
4.任意解散
(1)解散承認を得る場合
会社解散が債権者の権利を害さない場合には、解散手続は、取締役会の過半数の賛成による承認と、発行済株式の過半数の株主の賛成による株主総会での承認が必要になります。この株主総会による承認については、フィリピン会社法の改正前は、発行済株式の過半数の株主の賛成による承認が必要とされてきましたが、改正により要件が緩和されました。会社は、20日前までに個別の株主総会招集通知を発送し、株主総会の開催日までに新聞等で公告する必要があります。
会社解散が債権者の権利を害する場合は、取締役会の過半数の賛成による承認と、発行済株式の3分の2以上の株主の賛成による株主総会での承認が必要になります。また、債権者の権利を害する場合の手続においては、公告は週1回、3週間連続で行う必要があります。
いずれの場合においても、会社の解散の効力が生ずるのは、SECにより解散証明書が発行されたときですが、SECへの解散の申請の際には、内国歳入庁(Bureau of Internal Revenue、以下「BIR」といいます。)が発行する財務清算証書(Tax Clearance、以下「タックス・クリアランス」といいます。)を添付書類として提出する必要があります。

(2)存続期間を短縮させる場合
フィリピンにおいて一般的に利用されている方法が、会社の存続期間を短縮し、存続期間の満了をもって会社を解散する方法です。この場合、定款変更の手続が必要となるため、過半数の賛成による取締役会決議及び発行済株式の3分の2以上の賛成による株主総会決議が必要となり、会社は、かかる決議に基づく定款変更についてSECに届出を行うこととなります。
SECへの届出の際に、一般的に必要とされる添付書類は、以下のとおりです。

(i) 過半数の取締役による証明書
(ii) 変更された定款
(iii)最終年度の監査済財務報告書
(iv) 会社の社長及び財務役による宣誓証明書
(v) BIRが発行する財務清算証書
(vi) 週に一度の頻度で、連続3週間の公告を行ったことについての証明書
(vii)秘書役による証明書
ただし、手続に反対する債権者が存在する場合、会社解散が債権者の権利を害する場合と同様の、正式の申請手続を経る必要があります。

(3)タックス・クリアランスの取得
上記のとおり、解散に係るSECへの申請手続において、BIRからのタックス・クリアランス(財務清算証書)の添付が求められているため、会社はこれを取得する必要があります。これは、会社が清算に係る財務諸表を作成の上、これに基づいた税務申告と納付を行った後に、税務当局から納税完了を証する書面を入手する手続であり、会社がフィリピンにおける事業を閉鎖する前に、政府に対する納税義務を完全に果たしていることを確実にしておくために必要な手続です。
タックス・クリアランスの申請を行うと、事業閉鎖までの課税対象年のうち監査が済んでいない全ての年について、BIRが監査を行うこととなるため、帳簿の不備や税金の未納等があるとタックス・クリアランスの取得には時間を要してしまうこととなり、通例では1年以上の期間を要します。
SECは、このタックス・クリアランスが整わないと、清算手続を開始しないため、結局、清算手続全体で3年以上の期間を要することが一般的であり、時間を要することには留意が必要です。

(4)許認可の取消手続
会社は、BIRへのタックス・クリアランスの申請と同時並行で、他の許認可の取消手続も開始する必要があります。具体的には、会社が許可を申請した全ての政府機関に解散の承認を求めるか、又は、許可の取消を正式に申請する必要があります。これには、会社が本社を構える地方自治体による許可(営業許可又は市長の許可)、並びに投資促進機関(フィリピン経済特区庁(PEZA)等)及び政府社会保障関連機関((Social Security System (SSS)、Philippine Health Insurance Corporation (PHIC) 、Home Development Mutual Fund (HDMF))における登録が含まれます。

(5)SECに対する申請
上記の任意解散のいずれの場合であっても、会社はSECに対し、解散の申請又は解散のための会社の存続期間の短縮についての定款変更の申請を行うことになります。前者の場合、会社は、SECに対し、解散の理由、解散承認の決議を行う通知の形式、方法及び時間、解散を承認した株主、取締役等の名前、決議が行われた日付、場所及び時間、並びに、公告の詳細などを明らかにする必要があります。また、会社は、解散承認の決議に係る議事録の写しや公告の証明書等についても提出する必要があります。
SECは、解散申請の受領後、撤回がなされない場合には、申請を承認し、会社に対し解散証明書を発行します。そして、かかる解散証明書の発行をもって解散の効力が生ずることになります。
 
5.強制解散
会社の強制解散は、SECの判断により、又は、会社の利害関係人の正式な不服申立てにより行われます。会社の強制解散事由の概要は、以下のとおりです。

①設立から5年以内に事業を開始しない場合
②設立後事業を開始した後5年間事業を行わず、SECから休眠会社として認定された後2年以内に事業を行わない場合
③裁判所により解散命令を受けた場合
④詐欺により会社が設立されたとの終局判決が下された場合
⑤証券犯罪、脱税、密輸、資金洗浄、贈賄に関与すること等を目的として設立されたこと、若しくはこれらの違法行為を株主が認識しつつ行ったこと、又は取締役等が故意に反復して贈賄、詐欺的行為、その他の違法行為を行ったことを内容とする終局判決が下された場合
 
6.清算
会社は、解散の効力発生日以降3年間は、訴訟の当事者となり、会社の業務等を閉鎖し、財産を換価し、資産を分配する等の目的の範囲内において、その法人格を保持します。清算手続中の会社の資産の分配は、原則として全ての債務を弁済した後でなければ、行うことができません。また、清算中の会社の事業等の閉鎖をする際、所在不明の債権者・株主に対する資産の分配は、原則として、国庫に帰属したものとして取り扱われます。

以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。   
   
第10回に続きます。
 
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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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