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2020.06.22

その他のアジア【フィリピン】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《フィリピン編》第5回「労働契約の終了」 NEW
【フィリピン】第5回「労働契約の終了」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を「進出」~「撤退」までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

《フィリピン編》 第5回「労働契約の終了」

フィリピン労働法(Labor Code of the Philippines)は、労働者保護の観点から比較的厳格な規制を敷いており、労働契約の終了についても規律を設けています。
とりわけ、使用者による解雇は、法律上規定された理由が存在する場合に限って許容されており、かつ、適切な手続きを履践する必要がありますので、注意を要します。
そこで本稿では、①使用者による労働契約の解除(解雇)、②労働者による労働契約の解除について、その内容を概説することにいたします。
 
1.使用者による労働契約の解除(解雇)
(1)概要
フィリピン労働法が規定する解雇事由は、①正当事由(Just Cause)と、②許可された事由(Authorized Cause)の2種類に限られており、これら以外の事由による解雇は認められていません。日本法と異なり、法律によって、ある程度具体的な事由が定められている点が、特徴的といえます。
解雇された労働者が、使用者のなした解雇の効力を争った場合、使用者は、当該解雇の有効性を証明する責任を負います。
すなわち、使用者は、自ら証拠を提出して、①解雇事由に該当すること及び②適切に手続を履践したことを立証しなければならず、かかる立証に失敗した場合、当該解雇は、違法なものとして無効とされます。
この場合、不当に解雇された労働者は、復職する権利に加え、満額のバックペイを受ける権利等を有することになります。そのため、使用者は、予め、これらを裏付ける十分な証拠を確保しておく必要があるといえます。

以下、フィリピン労働法が規定する解雇事由を順に見ていきます。

(2)正当事由(Just Cause)
次のいずれかの事由が認められる場合、使用者は、労働者との労働契約を終了させることができます。

①使用者又はその代表者による適法な業務命令に対する重大な違反行為、又は意図的な不服従があった場合
②労働者が自己の職務を重大かつ常習的に懈怠した場合
③使用者又はその正当な授権を受けた者からの信任に対する、詐欺的又は意図的な違反があった場合
④使用者、その近親者又はその正当な授権を受けた者に対して、犯罪行為又は違反行為をした場合
⑤上記に準ずるその他の事由

(3)許可された事由(Authorized Cause)
前記の場合のほか、使用者において施設を閉鎖する場合や人員削減の必要性がある場合又は労働者が疾病に罹患している場合のうち、以下のいずれかに該当する場合には、使用者は、労働者との労働契約を終了させることができます。

①労力の節約を可能とする装置を導入する場合
②過剰人員を整理する場合
③損失防止のため人員を削減する場合
④施設を閉鎖又は事業を停止する場合
⑤労働者が、勤務を継続することが法律上禁止されている疾病、又は当該労働者及び他の労働者の健康に害を与えるような疾病に罹患している場合

(4)解雇の場合に履践すべき手続
ア 正当事由(Just Cause)に基づく解雇の場合
判例上、以下の3つの手続を経る必要があるとされています。

(ア)使用者は、解雇を予定する労働者に対し、予め、解雇原因となる具体的な事由、及び、合理的期間内(当該通知の受領から少なくとも5暦日)に会社に対して書面を提出することにより弁明を行う機会が与えられている旨、を記載した書面による通知を送付する必要があります。

(イ)その後、当該労働者が、弁護士などの代理人や組合による支援を希望する場合には、その助力を得て、反論をし、自身に有利な証拠を提出し、不利な証拠に対して反証を挙げて、弁明するための機会を与える必要があります。判例上は、かかる弁明の機会として、当事者が出席をして対面で審理を行う方式が望ましいが、書面により弁明をして証拠等を提出する方法も許容されています。

(ウ)弁明の機会を与えた後、使用者が、正式に、解雇手続を進めることを決定した場合には、当該労働者に対し、最終決定通知を送付しなければなりません。

イ 許可された事由(Authorized Cause)に基づく解雇の場合
使用者は、少なくとも1か月前までに、解雇を予定する労働者に加え、フィリピン労働雇用省(DOLE)に対しても、解雇通知を送付しなければなりません。
また、解雇を予定する労働者に対しては、解雇手当を支払う必要があります。解雇手当の金額は、以下のとおり、解雇の理由によって異なります。

①労力の節約を可能とする装置を導入する場合、過剰人員を整理する場合
少なくとも1か月分の支給額、又は、勤務年数(6か月以上の期間については1年とみなす)×1か月分の支給額のうち、いずれか高い金額

②損失防止のため人員を削減する場合、施設を閉鎖又は事業を停止する場合(ただし、重大な営業損失若しくは財政破綻を原因とする場合を除く)
少なくとも1か月分の支給額、又は、勤務年数(6か月以上の期間については1年とみなす)×半月分の支給額のうち、いずれか高い金額

③労働者が、勤務を継続することが法律上禁止されている疾病、又は当該労働者及び他の労働者の健康に害を与えるような疾病に罹患している場合
少なくとも1か月分の支給額、又は、勤務年数(6か月以上の期間については1年とみなす)×半月分の支給額のうち、いずれか高い金額

2.労働者による労働契約の解除
(1) 事前通知による労働契約の解除
労働者は、使用者に対し、少なくとも1か月前に、書面による通知を送付することにより、正当事由が存在していない場合であっても、労使関係を終了させることができます。
かかる事前通知を受領しなかった使用者は、当該労働者に対し、損害賠償を求めることができるとされています。

(2) 正当事由による労働契約の解除
前記の場合のほか、以下のいずれかに該当する場合、労働者は、使用者に何ら通知することなく、労使関係を終了させることができます。

①労働者の名誉及び人格に対する使用者又はその代表者による重大な侮辱があった場合
②使用者又はその代表者によって、非人間的かつ受容不能な扱いが行われた場合
③使用者又はその代表者によって、労働者又はその家族に対する犯罪行為又は違反行為が行われた場合
④上記に準ずるその他の事由

以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。  
 
第6回に続きます。

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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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