2019.08.28
インドネシア【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第46回『個人情報保護法草案・電子システム及び取引運営に関する政府規則草案の公開』
- 【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第46回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第101号(2019年8月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇インドネシア:個人情報保護法草案・電子システム及び取引運営に関する政府規則草案の公開
インドネシアでは、現在、国会には未提出ですが、個人情報保護法草案及び電子システム及び取引の運営に関する政府規則草案(「電子システム政府規則草案」)が法務人権省法制局(Badan Pembinaan Hukum Nasional)のウェブサイトに公開されています。
現在、インドネシアには個人情報保護に関する統一的・横断的な法律は存在しません。その代わりに、電子取引等を行う事業者に適用される、電子情報及び取引に関する法律2008年11号、同法施行規則である電子システム及び取引の運営に関する政府規則2012年82号、同政府規則の施行規則である情報通信大臣規則2016年20号等において個別に個人情報保護に関する規定が存在している状況です。
今回公開されている個人情報保護法草案は、インドネシア初の統一的・横断的な個人情報保護法に関する草案となります。また、電子システム政府規則草案は、電子情報及び取引に関する法律2008年11号の施行規則として位置付けられます。
これらはいずれも現時点では未制定でありますが、今後のインドネシアにおける個人情報保護に関する法律案制定動向を探る上で参考になると考えられます。各草案の内容のうち、実務上重要と考えられるポイントについて、以下解説します。
(1) 個人情報保護法草案
・個人情報の国外移転について
現行法令上、電子システムを用いた個人情報の国外移転について、本人(個人情報によって識別される特定の個人。以下同じ。)の同意のほか、インドネシア情報通信省との連携が必要であるとされています。情報通信省との連携内容としては、個人情報の国外移転実施に関する計画の報告(移転先国の名称、受領者の名称、実施日、国外移転の理由・目的を含む)、実施結果の報告等が必要とされています。もっとも、同連携については、情報通信省においても実務運用が必ずしも確立しているものではありません。
個人情報保護法草案では、個人情報の国外移転について、情報通信省との連携は不要とされています。個人情報の国外移転のためには、本人による書面による同意のほか、(a)移転先国又は個人情報を受領する組織等がインドネシア個人情報保護法に規定された水準以上の個人情報保護に関する水準を有していること、(b)個人情報送信者と受領者との間で個人情報保護に配慮した契約を締結すること、及び(c)移転先国とインドネシアで条約が締結されていることが要件とされています。
上記規定に違反して個人情報の国外移転を行った個人には、最大500億ルピア(現在のレートで約3億7千万円)の罰金が課され得るものとされています。また、違反者が法人等である場合には、最大で個人の場合の3倍の罰金が課され得るものとされています。
(2) 電子システム政府規則草案
・データローカライゼーションについて
現行法令(情報通信大臣規則2016年20号)上、公共サービスに関する電子システム運営者は、個人情報保護のためのデータセンター及び事故復旧センターをインドネシア国内に設置する必要があるとされています。しかし、「公共サービス」の範囲は必ずしも明確ではありません。
電子システム政府規則草案では、電子システム運営者を、公的電子システム運営者と私的システム運営者に分類しています。公的電子システム運営者は、データセンター等をインドネシア国内に設置しなければならず、外国に設置する必要がある場合には、大統領の同意を得なければならないとされています。他方で、私的電子システム運営者はデータセンター等をインドネシア国内又は国外に設置することができるとされています。
もっとも、現時点の草案では、公的電子システム運営者は、政府機関等に加え、法令で定められた国家のミッションを提供する意思・能力を有する私的法人も含まれる趣旨が定められており、「法令で定められた国家のミッション」の範囲が不明瞭です。そのため、現行法令同様、データセンター等を設置する義務を負うことになるサービス提供の内容について、不明瞭であることから、今後の立法過程でこの点が明確化されることが望まれます。
個人情報を含むデータの利活用がより重要となってくる近時において、インドネシアにおける統一的・横断的な個人情報保護法制定の動きは世界の潮流に沿った動きといえます。もっとも、現時点では草案の段階であるため、今後の法令制定動向にも注視する必要があります。アップデートがあり次第、本ニュースレターでも引き続き取り上げさせていただく予定です。
(直近記事)
〇第43回『対外商業借入の規制緩和』
〇第44回『Personal Data Protection Act(個人情報保護法)の施行』
〇第45回『関連会社への貸付、サービス提供について、外国人規制対象事業から除外する旨の省令の正式施行』
- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作