2019.05.28
インド【インド】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第43回『対外商業借入の規制緩和』
- 【インド】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第43回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第98号(2019年5月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇インド:対外商業借入の規制緩和
インド準備銀行(Reserve Bank of India)は、2019年1月16日付けでExternal Commercial Borrowings (ECB) Policy – New ECB Framework(対外商業借入の新枠組)に関する通達(「本通達」)を出し、即日発効しました。
インドにおいては、インド居住者がインド非居住者から借入れ(「対外商業借入」)を行う際の規制が定められています。具体的には、①対外商業借入を行うことができる貸出人及び借入人の要件、②資金使途に関する制限、③借入条件に関する制限が定められており、インド居住者がこれらの規制に反してインド非居住者から借入れを行うことは認められていません。もっとも、本通達により、従前の規制が大きく緩和されました。主な改正ポイントは以下のとおりです。
(1) 借入人となりうる業種の拡大
従前の対外商業借入規制では、対外商業借入は、ローン通貨とローンの期間により設定された、Trackと称される分類ごとに借入人となりうる業種が設定されていました。借入人の業種としては、主に製造業やホテル、病院、ソフトウェアといった業種が設定されており、商社や販売会社は借入人の業種から外されていました。しかし、本通達により、借入人の業種は、外国直接投資が認められているすべての業種に拡大され、従前は対象でなかった商社や販売会社といった業種も借入人となることが認められることとなりました。
(2) 規制構造の簡素化
従前の対外商業借入規制では、上記のとおり、対外商業借入は、ローン通貨とローンの期間により設定された、Trackと称される分類に従って分けられていましたが、本通達により、外貨建対外商業借入とインドルピー建対外商業借入の2つの分類に纏められました。従前の対外商業借入規制は、Trackごとに細かく規制が定められるという複雑な構造でしたが、規制の構造がシンプルになったといえます。
(3) 自動ルートでの借入れ
従前の対外商業借入規制では、借入人となりうる業種の中において、ホテル、病院、ソフトウェア等の所定の業種かそうでないかによって対外商業借入に際してインド準備銀行の事前承認を得なければならないか否かが異なっていました。しかし、本通達において、一会計年度における借入金額が7億5,000万米ドル(現在の為替レートで約824億円)以下であれば、例外なくインド準備銀行の事前承認が不要な自動ルートと呼ばれる方式での借入れが可能とされました。
(4) 報告様式の簡素化
対外商業借入に係る報告フォームについて、従前の対外商業借入規制において使用されていたForm 83という報告フォームが廃止され、報告様式が簡便化されました。
以上のとおり、本通達により、対外商業借入に係る規制が大きく緩和されました。とりわけ、日本の商社や販売会社のインド子会社が、日本の親会社から借入れを行う道が開けることとなりました。もっとも、新枠組の下で対外商業借入がどのように運用されていくかはまだ不透明であるともいえ、今後の動向を注視していく必要があります。
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