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2018.10.30

その他のアジア【アジア】みらいニュース/「海外現地法人の運営ポイント~足元をすくわれない!~」第8回/全11回
【アジア】みらいニュース/「海外現地法人の運営ポイント~足元をすくわれない!~」第8回
◇『みらいニュース』は、海外ビジネスの経営課題の解決をサポートするみらいコンサルティング様からの情報を皆様にお届けするレポートです。海外ビジネスを展開される企業様にお役立ていただければ幸いです。

本稿では、「海外現地法人の運営ポイント」について、全11回のシリーズで解説しています。
第8回は、「日本本社の国際人事・労務のポイント」についてとりあげます。

4.日本本社の国際人事・労務のポイント
 
日本親会社が海外事業展開において留意すべき「人事・労務」上のポイントは、以下のような点です。
 
(1)各国の人事・労務関連規制
 
多くの経営者の方が、進出前に検討する第一のポイントといえば、まずは進出国のマーケット・ボリューム、市場としての有用性ではないでしょうか。その一方で、現地の人事・労務関連の規制については、最終的に見落とされがちです。
たとえば、そもそも就労ビザの取得に際して、最低給与額・投資額規制、法令上の人選制限といったものが存在する国があります。これを無視すると、海外に人を送ることすらできず、その結果現地法人の設立・登記ができないという状況に陥る可能性があります。
また、日本とはくらべものにならない割増残業代の制度があり、人件費負担が過大となることを事前に想定すべきケースもあります。さらに、従業員を解雇する際に「法定退職金」が定められている場合には、最終的に「撤退」を決断しなければならないときに、さらなる資金負担が必要となり、日本本社の損失がよりふくらむこともあります。
進出国の人事・労務関連規制の最新情報を、日本本社が常に把握していることが重要です。
 
(2)赴任者選定のポイント
 
赴任者を選ぶ時には、「海外で勤務経験がある」、または「英語ができる」といった要素が重視されがちです。しかし、このような社員が、「当社にとって」海外赴任に適しているとは限りません。
赴任者にとってより重要なのは、「自社の業務内容に精通していること」です。また、日本本社との距離がはなれるため、連絡・相談がしっかりとできる、信頼してまかせられる、といった要素がとても重要になります。
 

 
(3)赴任者の給与や待遇はどうやって決める?
 
赴任者の人選がすみ、現地法人の設立が完了すると、実際の赴任者の送り込み段階となります。この段階で見落としがちなポイントは、赴任者の給与・待遇の決定方法です。海外赴任をしたばっかりに、給与や待遇面で不利な思いをしたという噂が広がると、海外赴任を希望する人材がいなくなります。これは、中小中堅企業の海外展開にとって一番大きなダメージとなります。
給与の決定方法には色々な種類がありますが、最近では「手取額を保障する」制度を採用する企業が増えています。また、日本に帰ってきたときにうまく「社会保険」を引き継げるような対策をとってあげることも、赴任者にとっては安心材料となります。
上記のような制度は、毎回その場限りの対応で決めるのではなく、「海外給与システム」や「海外赴任規程」、「海外出張旅費規程」などの決まりを整備し、会社として画一的な対応をしていくことが求められます。
 
(4)「税務」面の対応をわすれない
 
一見無関係と思われがちですが、人事・労務面の検証時には「税務」の論点が大きく関わってきます。
たとえば、海外赴任者は、原則として現地で「所得税」を払うことになります。海外赴任者の多くは、日本国内法人と現地法人の両方から給与を受け取ることになりますが、所得税の対象となる金額には日本で支給された給与も含まれます。これを忘れて赴任が10年近くにおよぶと、未払いの所得税が数千万円発生している、といったケースに陥る可能性があります。
また、日本本社と現地法人の給与の負担関係があいまいである場合、税務調査が入ったときに、支払った給与が税務上は費用として認められないおそれがあります。現地法人との間で「法人間出向契約」を締結するなど、社会保障、福利厚生を含めた費用負担関係を明確にしておくことも、忘れてはいけません。
 
(5)人材活用のうえで気をつけるべきことは?
 
最後に、進出後の現地スタッフを含めた、人材活用のポイントに関して触れます。
現地スタッフのモチベーションの維持と定着が、もっとも重要なポイントといえます。多くのアジア諸国では、現地スタッフ雇用と年次報告が、海外現地法人に義務化されています。要件を満たせないと、最悪は現地法人のライセンス更新不能といった事態にいたります。現地スタッフをいかに安定的に雇用するかが、カギとなります。
そのため、日本流を移入する前に、各国の人事・労務慣例、さらには「国民性」をしっかりと理解して、人事労務制度を調整していく姿勢が求められます。たとえば、副業が当たり前であったり、能力より肩書きでの処遇を重視すると、離職・転職を誘発してしまう国も存在します。
また、今後の日本の労働力人口の低下を見越して、海外拠点の人材を日本で活用しようと考える経営者も多いかと思います。その際に落とし穴となるのが、日本の入管法です。日本側の法令にもとづく、設立時出資比率規制を満たしていないと、現地スタッフを日本に招くためのビザ(在留資格)が取得できず、人材交流ができないことになりかねません。
人事・労務面に関しては、事前の作り込みが最大のキーとなります。進出初期段階から注意して、整備・修正をされることをお勧めします。
 
※本稿の著作権は、みらいコンサルティング株式会社に帰属しています。

第9回に続きます。

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本稿では、「海外現地法人の運営ポイント」について、全11回のシリーズで解説します。
 
◇本ニュースの内容
 はじめに
  ・グローバルビジネス成功のための現地法人運営・・・・・・・・・第1回
1.現地法人編
 (1)現地法人の社長の悩み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2回
 (2)現地法人の事件簿  
   ①【アジア】事件簿Ⅰ:とまらない!賃金アップ要求・・・・・・第3回
   ②【中 国】事件簿Ⅱ:パートナーに「だまされた?」・・・・・第4回
   ③【中 国】事件簿Ⅲ:「二重帳簿」によるリスク・・・・・・・第5回
   ④【ベトナム】事件簿Ⅳ:ウラガネ要求への対応・・・・・・・・第6回
 (3)現地法人の「現地化」の成功事例とそのポイント・・・・・・・第7回
2.日本本社編
 (1)日本本社の国際人事・労務のポイント・・・・・・・・・・・・第8回
 (2)日本本社の国際税務のポイント・・・・・・・・・・・・・・・第9回
 (3)現地法人管理のポイント・・・・・・・・・・・・・・・・・・第10回
 (4)現地法人の「見直し」時に気をつけるべきこと・・・・・・・・第11回

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【掲載元情報】
みらいコンサルティング株式会社  作成

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