2025.04.11
インド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第26回/「労働法⑥」(インド編⑮)
- 【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第26回/「労働法⑥」(インド編⑮)
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◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
労働法⑥
Ⅳ.女性労働者に関する法規②
1961年インド出産給付金法(Maternity Benefit Act, 1961)及びこれに基づいて規定された規則
1.規定内容
1961年インド出産給付金法(以下「出産給付金法」)は、女性が妊娠・出産により就労できない期間における女性及びその子供の健康維持について規定することにより、母性と出産の尊厳を保護するために制定された法律です。具体的には、出産前後の一定期間における女性労働者の就労規制(産休の付与)、出産給付金の支給、及びその他の福利厚生等を規定しています。
2.適用対象出産給付金法は、(i) 工場、鉱山、プランテーション等の施設、(ii) 直近12ヶ月間のいずれかの日に10名以上の労働者が雇用されていた、又は現に雇用されている店舗及び施設に対して適用されます。
3.出産給付金
(1)受給資格
出産給付金法が適用される施設において出産予定日前の12ヶ月間に80日以上労働しているすべての女性労働者に、出産給付金の受給資格が認められています(同法第5条2項)。なお、受給資格を有する女性労働者には、正規労働者のみならず、契約社員等の非正規労働者も含まれます。
(2)給付金額
後述のとおり、出産給付金法は、女性労働者に対して出産前後の一定期間について産休を認めています。この期間において実際に産休を取得した女性労働者は、その産休期間の日数について一日あたりの平均賃金額を出産給付金として受領する権利を有しています(同法第5条1項)。
但し、当該女性労働者が、産休期間中に重大な非行を理由に解雇された場合、雇用主は、出産給付金の支給を拒むことができます(同法第12条2項 (a) 但書)。
なお、一日あたりの平均賃金とは、産休取得日の直前3歴月の期間中の就労日について支払われるべき賃金の平均額、又は1948年インド最低賃金法(the Minimum Wage Act, 1948)によって定められた最低賃金、又は10ルピーのうち最も高い金額を意味すると規定されています(同法第5条1項Explanation)。
4.産休
出産給付法は、女性労働者に対し、出産の前後において最長26週間の産休を認めており、出産前の産休は、出産予定日の8週間前から取得することを認めています(同法第5条3項)。
但し、第三子以降の出産の場合の産休は最長12週間とされ、この場合の出産前の産休は、出産予定日の6週間前から取得することを認めています(同条項但書1)。なお、同法は、雇用主に対して、上記の産休取得中に女性労働者を解雇することや上記の産休取得を理由に女性労働者を解雇することを禁じています。
また、上記産休中に通知期間が満了するような日付で解雇通知を送付することや雇用条件を不利に変更することについても禁じています(同法第12条)。
5.その他の福利厚生
出産給付金法は、雇用主に対して、出産給付金の受給資格がある女性労働者に出産前後のケアを無料で提供する義務を課しています。また、雇用主が上記の提供をしない場合、雇用主は当該女性従業員に対して3,500ルピーの医療給付金(medical bonus)を支給しなければならないと規定しています(同法第8条及び規則)。
なお、上記の医療給付金の額について、中央政府は、3年ごとに官報で通知することにより、20,000ルピーを上限に増額することができます。
6.出産給付金法の周知
雇用主は、出産給付金法及びその規則の要旨を、女性労働者が雇用されているすべての施設の目立つ場所に現地語で掲示しなければなりません(同法第19条)。
7.罰則
雇用主が、出産給付金法に基づき受給資格のある女性労働者に対し出産給付金を支給しない場合、もしくは産休取得中又は産休取得を理由に女性労働者を解雇した場合の罰則として、3ヶ月以上1年以下の禁固及び5,000ルピー以下の罰金が規定されています(同法第21条1項)。
以上※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。第16回に続きます。
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