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2024.03.29

インドインド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第15回/「株式」(インド編④)
【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第15回/「株式」(インド編④)
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

1.発行可能な株式の種類

インド会社法は、株式有限責任会社が発行可能な株式として、普通株式及び優先株式の2種類を規定しています(法第43条 (a) (b))
 
(a)普通株式(equity share capital)
普通株式とは、優先株式ではないすべての株式を意味すると定義されており、法はさらに①議決権を有する普通株式、及び②配当、議決権、又は別途規則に従ったその他の事項に関し異なる種類の権利を有する普通株式の発行を認めています。
 
(b)優先株式(preference share capital)
優先株式とは、利益配当、会社清算の際の残余財産の分配等に関して優先権を持つ株式を意味するものと規定されています。なお、優先株式はその償還を伴わなければならず、原則として発行日から20年以内に償還されなければなりません(法第55条1項・2項)。
 
2.株式譲渡

(1)公開会社(Public Company)
公開会社の株式は、原則として自由に譲渡することができます(法第58条2項)。
もっとも、法は、株主間において株式譲渡を制限する契約を締結することを認めており、このような株主間契約において株式譲渡を制限することは可能です(同条項但書)。
 
(2)非公開会社(Private Company)
非公開会社はその附属定款に株式譲渡を制限する旨が規定されている会社と定義されているため(法第2条68項)、非公開会社の株式を譲渡する場合は、附属定款の規定に従った会社の承認が必要となります。

3.新株発行

(1)新株発行方法
(a)公開会社
法は、公開会社における新株発行方法として、①公募(public offer)、②私募(private placement)、もしくは③株主割当(rights issue)又は株主無償割当(bonus issue)を規定しています(法第23条1項)。
 
①公募による新株発行は、目論見書(prospectus)を通じて一般に対して株式を発行する方法です。②私募による新株発行は、個別の募集通知の発行を通じて株式の引受を募集又は勧誘し、募集に応じた特定の者に対して株式を発行する方法です。また、③株主割当による新株発行は、既存株主に対し、その持株割合に応じた株式を割り当てる株式発行方法です。また、株主無償割当による新株発行は、任意積立金、有価証券払込剰余金、又は資本償還準備金を財源とする既存株主に対する無償の株式発行方法です。
 
(b)非公開会社
非公開会社はその附属定款に有価証券の公募を禁止する旨が規定されている会社と定義されているため(法第2条68項)、法は、非公開会社の新株発行方法として、公開会社のような公募は認めておらず、①私募(private placement)、もしくは②株主割当(rights issue)又は株主無償割当(bonus issue)のみを規定しています(法第23条2項)。
 
 
(2)新株発行の決定権限
新株発行の決定権限については、新株発行による増資に関する規定である法第62条がこれを規定しています。同条によると、既存株主に対しその持株比率に応じて割り当てる株主割当の場合は取締役会決議でこれを決定することができます。しかし、従業員ストック・オプション制度に基づいて従業員に対する新株発行、もしくは第三者割当発行(この第三者には、上記の既存株主や従業員を含むか否かを問いません)の場合には、既存株主の持株比率の希薄化を伴うため、既存株主の利益保護の見地より、株主総会の特別決議でこれを決定する必要があります。

4.株式譲渡・新株発行における注意点

(1)譲渡価格
日本企業がインド人株主から株式を譲り受ける場合のように、インド居住者からインド非居住者への株式譲渡に該当する場合、このような株式譲渡は1999年インド外国為替管理法(The Foreign Exchange Management Act, 1999 )に基づくレギュレーションやインド準備銀行が発行する通達等において規律されています。特に譲渡価格については以下のように規定し、インド居住者の保護を図っています。
 
(a)上場会社の株式の場合
この場合、インド証券取引委員会のガイドラインに従って算定される価格以上を発行価格としなければなりません。
 
(b)非上場会社の株式の場合
この場合、独立当事者間取引に基づく株価評価として国際的に受け入れられている株価算定方法に従って算定され、インド勅許会計士又はインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカーによって認証された公正価格以上を譲渡価格としなければなりません。
 
(2)発行価格
子会社であるインドの現地法人から日本の親会社に対して新株発行による増資を行う場合のように、インドの会社の株式を「インド非居住者」に対して発行する場合、その発行価格に関しては以下のように規制されています。
 
(a)上場会社の株式の場合
この場合、インド証券取引委員会のガイドラインに従って算定される価格以上を発行価格としなければなりません。
 
(b)非上場会社の株式の場合
この場合、独立当事者間取引に基づく株価評価として国際的に受け入れられている株価算定方法に従って算定され、インド勅許会計士又はインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカーによって認証された公正価格以上を発行価格としなければなりません。
なお、インド会社法の規定に従って会社を設立する際に、インド非居住者が発起人としてその株式を引き受ける場合においては、その株価は券面額とすることができます。
 
(3)インド準備銀行への報告
 
(a)株式譲渡の場合
Master Circular on Foreign Investment in Indiaは、インド居住者に対し、株式譲渡の対価を受領した日から60日以内に、当該株式譲渡に関する内容を記載したForm FC-TRSをインド準備銀行が認定しているAD Category-I Bankに対して提出する義務を課していました。もっとも、2018年9月1日以降は、手続きが簡素化され、当該株式譲渡に関する内容は、SMF(Single Master Form)の形式で、オンラインによって報告すればよいことになりました。
 
(b)新株発行の場合
同Master Circularは、発行元のインド企業に対し、新株発行日から30日以内に、当該新株発行に関する内容を記載したForm FC-GPRをインド準備銀行が認定しているAD Category-I Bankに対して提出する義務を課していました。もっとも、2018年9月1日以降は、手続きが簡素化され、当該新株発行に関する内容は、SMF(Single Master Form)の形式で、オンラインによって報告すればよいことになりました。

5.株券の電子化

(1)対象となる会社
公開会社においては、すでに株券の電子化が義務付けられていますが、非公開会社についても2023年10月27日付通達による2014年インド会社(目論見書及び有価証券割当)規則(The Companies (Prospectus and Allotment of Securities) Rules, 2014)の改正により、「小会社(small company)」を除くすべての非公開会社に株券の電子化が義務付けられることになりました。
 
■例外となる「小会社」の定義
ここで小会社とは、2013年インド会社法第2条85項において、公開会社以外の会社で、①払込済株式資本が4,000万ルピー以下又は直近の会計年度における売上高が4億ルピー以下であること、及び②持株会社、子会社、2013年インド会社法第8条に基づいて登録された会社(慈善事業を目的とする会社)、もしくは特別法によって規律される会社又は法人ではないものを意味すると定義されています。

上記に鑑みれば、日本本社の子会社であるインド現地法人は、小会社の定義に該当しないため、株券の電子化が義務付けられることになります。
 
(2)義務の内容及び対応期限
2023年3月31日以降に終了する会計年度の末日現在において、当該会計年度の監査済財務諸表において上記に該当する対象会社は、当該会計年度終了後18ヶ月以内に下記の対応をしなければなりません。例えば、2023年3月31日現在においてすでに上記に該当する対象会社は、2024年9月30日までに、下記の対応をしなければなりません。
 
(a)株券を含む有価証券を電子化された形態でのみ発行すること
(b)発行するすべての有価証券の電子化を促進すること
 
(3)電子化された株券等の預託
電子化された株券等の有価証券は、DEMAT口座に預託して管理されることになります。DEMAT口座の開設は、インド証券取引委員会に登録されたDepository Participantsと呼ばれる預託機関の代理業者を通じて行うことになります。Depository Participantsは、国家証券預託機構(NSDL:National Securities Depository Limited)及びインド中央証券預託機構(CDSL:Central Depository Services (India) Limited)のウェブサイトにそのリストが掲載されています。
 
以 上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
第5回に続きます。


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