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2024.12.27

インドインド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第24回/「労働法④」(インド編⑬)
【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第24回/「労働法④」(インド編⑬)
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

労働法④

Ⅲ.社会保障に関する法規②

1952年インド従業員積立基金及び雑則法(Employees Provident Funds and Miscellaneous Provisions Act, 1952)

1.規定内容

1952年インド従業員積立基金及び雑則法は、従業員の退職後の生活保障、及び在職中の死亡の場合の遺族のための生活保障を目的として規定されています。同法に基づき、以下の3つのスキームが策定されています。
 ①1952年インド従業員積立基金スキーム(Employees’ Provident Fund Scheme, 1952)
 ②1995年インド従業員年金スキーム(Employees’ Pension Scheme, 1995)
 ③1976年インド預託保険スキーム(Employees’ Deposit Linked Insurance Scheme, 1976)

2.適用対象

インド従業員積立基金及び雑則法は、①同法のSchedule 1に規定される産業に従事し、かつその従業員が20名以上のすべての工場、②別途インド中央政府によって通知される従業員20名以上のその他の施設に適用されます。なお、従業員20名未満の施設も自発的に同法の対象となることに同意できますが、インド中央政府によって通知されなければなりません。
上記の要件を充たす工場及び施設の従業員のうち、月額賃金が15,000ルピー以下の従業員のみ前述の3つのスキームへの加入が義務付けられます。なお、月額賃金が15,000ルピーを超える従業員も任意で加入することができますが、一旦加入した場合は脱退することは許されず、負担金を支払い続けなければなりません。

3.具体的内容(積立金・保険料の負担)
(1)従業員積立基金
雇用主は、従業員の賃金の12%に相当する金額を従業員の賃金から控除し、同額を「従業員負担金」として同基金に納付しなければなりません。同様に、雇用主も従業員の賃金の12%に相当する金額を「雇用主負担金」として同基金に納付しなければなりません。このように納付された負担金のうち、従業員負担金はそのまま従業員の積立基金口座に積み立てられます。他方、雇用主が負担した12%のうちの3.67%が従業員の積立基金口座に積み立てられます。

(2)従業員年金基金
従業員年金基金においては、従業員積立基金として雇用主が負担した負担金の一部が従業員年金基金として積み立てられます。すなわち、上記(1)の雇用主負担金の12%のうち、8.33%が従業員の年金基金口座に積み立てられます。

(3)預託保険
預託保険において、雇用主は、従業員の賃金の0.5%を同保険の保険料として負担しなければなりません。
 
4.罰則
雇用主が、前述のスキームに基づく報告書・記録の提出を怠った場合、又は負担金・保険料・管理費の支払いを怠った場合等の違反行為に対して、その違反行為の態様に応じて禁固及び罰金を規定しています。
 
1972年インド退職金支払法(Payment of Gratuity Act.1972)

1.規定内容
1972年インド退職金支払法は、工場又はその他の施設において雇用されているすべての従業員に対する退職金の支払いについて規定する法律です。

2.適用対象
インド退職金支払法は、①すべての工場、鉱山、油田、プランテーション(大規模農場)、港湾、鉄道会社、②10名以上が雇用されている又は過去12ヵ月の任意の日に雇用されていたすべての店舗又は施設、③10名以上が雇用されている又は過去12ヵ月の任意の日に雇用されていたその他の施設で、中央政府がこの点につき通達によって規定している施設に適用されます(同法第1条3項)。

3.具体的内容
(1)受領資格及び要件
5年以上の期間中継続して雇用されていた従業員は、その雇用終了時に退職金を受領することができます。退職金を受領することができる場合の雇用終了事由は、①定年退職、②自主退職、又は③死亡・事故・病気を原因とする就労不能を理由とする退職とされています。
なお、従業員の退職理由が、雇用主の所有物の破壊、又は損害・損失をもたらした作為又は故意による不作為の場合、雇用主は発生した損害・損失の限度で退職金を減額することができます

(2)退職金の金額
従業員が受領できる退職金の金額は、15日分の賃金×勤続年数で計算されますが、その最高額は200万ルピーと規定されています(但し、中央政府の公務員については250万ルピーが最高額とされています)。
なお、雇用主は、契約等により、これよりも高額な退職金を支払うこともできますが、最高額を超える部分については、1961年インド所得税法(Income Tax Act, 1961)に基づく所得税が免除されない点については注意が必要です。

(3)退職金の支払時期及び方法
雇用主は、支払期日より30日以内に従業員に対して退職金を支払わなければなりません。なお雇用主は、当該従業員が望む方法(現金、銀行手形、小切手)で退職金を支払うことができます。

4.罰則
雇用主が、退職金の支払いを免れる目的で虚偽の書類を作成した場合、雇用主には6月以下の禁固、又は10,000ルピー以下の罰金、又はその両方が科せられる旨が規定されています。
また、雇用主が、本法及びその規則等の条項に違反した場合、雇用主には3月以上1年以下の禁固、又は10,000ルピー以上20,000ルピー以下の罰金、又はその両方が科せられる旨が規定されています。但し、退職金の不払いに関する違反行為の場合、上記の禁固刑が加重され、雇用主には6月以上2年以下の禁固が科せられる旨が規定されています。
 
以上
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
   第14回に続きます。
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  制作

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