2024.03.07
インド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第14回/「会社の種類・構成・設立」(インド編③)
- 【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第14回/「会社の種類・構成・設立」(インド編③)
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1.会社の種類
(1)公開会社・非公開会社・一人会社(法第3条1項)
2013年インド会社法(以下「法」という。)は、会社の株主等の構成の見地から、①公開会社(public company)、②非公開会社(private company)、及び③一人会社(One Person Company)の3つの形態の会社を規定しています。
①公開会社(法第2条71項、3条1項 (a))
法第2条71項において、公開会社とは、非公開会社ではない会社を意味するものと定義されています。なお、会社法施行時において公開会社の最低資本金は50万ルピーとされていましたが、2015年改正によりこの要件は撤廃されました。
また、公開会社においては、その株主数の上限は規定されていませんが、7名以上の株主を要する旨が規定されています。
②非公開会社(法第2条68項、3条1項 (b))
法第2条68項において、非公開会社は、その附属定款に以下の事項が規定されている会社を意味するものと定義されています。
・株式譲渡の制限
・株主数が200名以下
・有価証券の公募の禁止
なお、会社法施行時において非公開会社の最低資本金は10万ルピーとされていましたが、2015年改正によりこの要件は撤廃されました。また、非公開会社の株主数については、上記の通り上限を規定するとともに、その下限を2名とする旨が規定されています。
③一人会社(法第2条62項、3条1項 (c))
一人会社とは、2013年インド会社法において新設された会社の種類であり、法第2条62項において、株主が1名のみの会社を意味するものと定義されています。一人会社が認められたことにより、完全子会社の設立の可能性が期待されましたが、一人会社における株主は自然人を想定しており、会社を唯一の株主とする完全子会社の設立は現状では認められていません。
(2)有限会社・無限会社(法第3条2項)
また同法は、上記の種類の会社につき、以下のいずれかの種類をとり得る旨を規定しています。
(a)株式有限責任会社(company limited by shares)
株式有限責任会社とは、会社の基本定款により、株主が保有する株式につき未払部分があればその未払額まで株主の責任が制限されている会社を意味すると定義されています(法第2条22項)。
(b)保証有限責任会社(company limited by guarantee)
保証有限責任会社とは、会社の基本定款により、会社の解散の際に会社資産への寄与を約する額まで社員の責任が制限されている会社を意味すると定義されています(法第2条21項)。
(c)無限責任会社(unlimited company)
無限責任会社とは、社員の責任に制限がない会社を意味すると定義されています(法第2条92項)。
2.会社の設立
インド会社法に従った会社設立手続きの概要は以下のとおりです。
(1)電子署名認証(DSC: Digital Signature Certificate)の取得
会社設立の登記申請はオンラインにおいて行われるため、そのオンライン申請において必要となる署名はDSCによって行われます。したがって、まず事前の準備としてDSCの取得が必要となります。なお、従前は取締役識別番号(DIN: Director Identification Number)の取得も事前に必要でしたが、会社設立手続の簡素化に伴い、設立時取締役のDINについては、会社設立時に割り当てられることになりました。
(2)商号承認申請
設立する会社の名称として使用を予定する商号は、会社設立申請前に会社登記局に申請する必要があります(法第4条4項)。そして、商号が会社登記局によって承認された場合、当該商号は申請日から60日間は留保されます(法第4条5項 (i))。したがって、この留保期間中に会社設立申請を行う必要があり、会社設立申請を行わないままこの期間が徒過してしまった場合、再度商号承認申請を行わなければならない点には注意が必要です。
なお、商号選定に関する主な要件は以下のとおりです。
・商号の末尾は、公開会社の場合には「Limited」、非公開会社の場合には「Private Limited」としなければなりません(法第4条1項)。
・既存の会社の商号と同一又は極めて類似する商号であってはならず、また法律に違反するもの、中央政府が望ましくないと考えるものであってはなりません(法第4条2項)。
・中央政府の事前の承認がない限り、中央政府・州政府、これらが設立した機関等と関係を有する、又はこれらから支援されているとの印象をあたえる単語・表現を用いてはなりません(法第4条3項)。
(3)基本定款(Memorandum of Association)及び附属定款(Articles of Association)の作成
(a)基本定款
基本定款は、主に会社の目的の範囲を記載するものであり、併せて商号、登記事務所が所在する州、発起人名およびその引受株式数・引受額等が記載されます。
(b)附属定款
附属定款には、主に会社の運営に関する事項が記載されます。会社法には附属定款の標準モデルが規定され、附属定款において別段の定めがない限りこの標準モデル上の規定が適用されることには注意が必要です。
(4)会社設立申請
上記の基本定款・附属定款、その他必要な書類及び申請フォームと共に、登記事務所の所在予定地を管轄する会社登記局にオンラインで設立申請を行わなければなりません。
会社設立申請に不備がなければ会社が登記され、会社登記局から設立証明書(Certificate of Incorporation)が発行されます(法第7条2項)。このように登記された会社は、設立証明書に記載された日から法人格を有することになります(法第9条)。
なお、会社設立手続きの簡素化に伴い、従前は会社設立後に別途申請及び取得が必要であった恒久税務番号(PAN: Permanent Account Number)、源泉徴収番号(TAN: Tax Deduction and Collection Number)、物品サービス税(GST)識別番号(GSTIN:GST Identification Number)、従業員積立基金登録(EPFO:Employees’ Provident Fund Organization)、及び従業員州保険登録(ESIC:Employe’ State Insurance Corporation)等についても、会社設立申請と同時に申請することが可能となりました。
(5)会社設立後の主な手続き
会社の設立後に行わなければならない主な手続きは以下のとおりです。
・第一回取締役会の開催(設立後30日以内)
・会社名義の銀行口座の開設
・発起人による資本金の払込み、及び発起人に対する株式の割当て
・各種許認可の取得、登録(店舗及び施設法、工場法等)
なお、2013年インド会社法は、発起人による払込みが完了し、払込株式資本が法定の最低資本金額以上となっている旨の宣誓書及び登記事務所確認書を会社登記局に提出しない限り事業を開始してはならない旨が規定されていましたが、2015年改正による最低資本金額の廃止に伴い該当条文は削除されました。
以 上※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
インド編第4回に続きます。
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