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2025.11.21

【中国】陳弁護士の法律事件簿/第93回『飲酒後に自転車に乗ることは違法になるか』
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第93回
『飲酒後に自転車に乗ることは違法になるか』

『経緯』

飲み会で「差しつ差されつ」して心ゆくまでお酒を飲んだ後、李さんは自転車で家に向かっていた。李さんは「自転車は車ではなく、飲酒後に乗るのは全く問題ない」と認識していた。しかし、思いもよらず、自転車が急に傾き、酔いが回ってきた李さんは反応する時間がなく、歩行者の王さんに直接ぶつかり、二人はそのために口論になり、王さんは警察に通報した。交通警察は駆けつけた後、李さんが酒気を帯びていることに気づき、飲酒したか否かを尋ねた。李さんは胸を張って「お酒がどうしたの?自転車に乗っただけで車を運転していない!」と言った。アルコール検査の結果、李さんの血中アルコール濃度は120 mg/100 mlに達しており、80 mg/100 mlの飲酒基準をはるかに超えていた。交通警察は李さんに過料20元を科した。

『焦点』

自転車に乗る人は一般的に「車を運転する場合にのみ飲酒運転になる。自転車は非自動車であり、飲酒後に自転車に乗る場合は法的責任を負う必要がない。」と考えている。この認識が正しいか?
 
『分析』


一、行為の性質を確定する根拠
『道路交通安全法実施条例』第72条の規定によると、道路で自転車、三輪車、電動自転車、障害者用電動車椅子を運転する場合、酒酔い運転をしてはならない。当該規定から見て、酒酔い運転は自動車に限らず、自転車、三輪車、電動自転車、障害者用電動車椅子も含まれる。

二、車両を定義する根拠
『道路交通安全法」第119条の規定によると、「車両」は自動車と非自動車に分け、自転車は法定の非自動車の範疇に属する。そのため、自転車に乗る行為は自動車運転と同様に交通法律法規による拘束を受ける。

三、血中アルコール濃度の基準
『車両運転者の血液、呼気中のアルコール含有量の基準値と検査』(GB19522-2024)によると、飲酒後に運転する行為は2種ある。①車両運転者の血液100ミリリットル中に含まれるアルコールが20ミリグラムに達し、又は20ミリグラム以上80ミリグラム未満の場合は、飲酒後の運転(「酒気帯び運転」という)に該当する。②車両運転者の血液100ミリリットル中に含まれるアルコールが80ミリグラムに達し、又は80ミリグラム以上の場合は、飲酒運転に該当する。

四、処分の根拠
『道路交通安全法』第89条の規定によると、歩行者、乗車者、非自動車運転者が道路交通安全関連法律、法規における道路通行に関する規定に違反する場合、警告または5元以上50元以下の過料を科す。非自動車運転者が過料処分を拒否する場合、その非自動車を押収することができる。そのため、交通警察が自転車の飲酒運転に対して警告を行い、又は過料を科す行政処分には法的根拠がある。 
 
『ヒント』

飲酒後の自動車運転の関連規定とは異なり、飲酒後の非自動車運転は必ずしも交通違反行為になるとは限らない。現行の法律では、非自動車の飲酒運転を明確に禁止しているだけで、非自動車の酒気帯び運転を明確に禁止しておらず、罰則も定めていない。それにもかかわらず、飲酒後に自転車に乗る場合は、事故発生率を著しく増やすほか、自転車に乗る人自身が怪我をしたり、他人に損害を与えたりする可能性がある。そのため、「飲酒後は運転を一切行わない」ことをしっかりと覚えておいて、交通法規を積極的に遵守したほうがよい。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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