2020.08.25
インドネシア【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第58回『Eコマース事業に関する新たな商業大臣規制の制定』
- 【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第58回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第113号(2020年8月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇インドネシア:Eコマース事業に関する新たな商業大臣規制の制定
2020年5月19日、電子取引事業者のライセンス・広告・指導・監督に関するインドネシア商業大臣規則2020年第50号(「新規則」)が公布されました。新規則は、電子取引に関する政府規則2019年第80号規則(「本政令」)の施行規則であり、2020年11月19日に施行されます。
本政令及び新規則は、インドネシア国内におけるEコマース事業に関与する国内外の事業者に適用され、その内容は多岐にわたりますが、以下では、主にインドネシア国外の事業者がインドネシアでのEコマースに関与するために必要となる要件を中心に解説します。
(1) Eコマース事業者の分類
本政令及び新規則上、Eコマース事業者は、(a) マーチャント、(b) Eコマース運営者、(c) 仲介サービス運営者に分類されています。
(a)は、Eコマースサイトで商品を販売する事業者、(b)はEコマースサイト等のプラットフォームを提供する事業者、(c)はEコマース取引を円滑に行うための仲介者であり検索エンジン等を提供する事業者等が含まれます。定義上、自ら運営するEコマースサイトで商品を販売する事業者は、(a)と同時に(b)に該当することとなります。
(2) インドネシア国外の事業者がインドネシアのEコマースに関与するための要件
(a) マーチャント
本政令及び新規則上、インドネシア国外のマーチャントが他者が運営するインドネシア国内のEコマースサイトで商品を販売する場合、インドネシアにおいて取得が必要となるライセンスは特段存在しません。
もっとも、当該マーチャントが自国において有効な事業ライセンスを有していることを、Eコマースサイトを運営するインドネシアのEコマース運営者に対して登録する必要があります。
また、インドネシア国外のマーチャントが自ら運営するインドネシア国内のEコマースサイトで商品を販売する場合には、下記Eコマース運営者記載の要件が適用されます。
(b) Eコマース運営者
本政令上、一定の要件を満たすインドネシア国外のEコマース運営者は、インドネシアにおいて外国商事駐在員事務所の設置義務を負う旨規定されていましたが、その詳細な基準については明らかではありませんでした。
新規則では、当該Eコマース運営者の提供するプラットフォームを通じて、インドネシアにおいて、1年間で1,000人超の顧客の取引が成立したこと、又は1年間で1,000個超の商品が配送されたこと、という要件の両方又は一方を満たす場合には、当該Eコマース運営者がインドネシアにおいて外国商事駐在員事務所を設置する義務を負うことが明確化されました。
新規則では、同駐在員事務所は、消費者保護、インドネシア国産品の競争力向上のガイドラインの策定及び紛争解決に関する各事項に関して、国外のEコマース運営者を代表することができるものとされています。
(c) 仲介サービス運営者
本政令及び新規則上、仲介サービス運営者は、原則として電子取引商業ライセンスの取得が必要となります。もっとも、当該仲介サービス運営者が、Eコマース取引から直接利益を受けず、かつ、Eコマース取引当事者間の契約関係に直接関与しない場合には、当該ライセンスの取得は不要とされています。
新規則の制定により、インドネシア国内のEコマースに関与する国外事業者に対し、その関与の仕方によってどのような要件が課されるのかについて明らかになりましたが、本規則が、本年11月の施行後にどのように運用されていくのかについては、実務動向を注視する必要があります。
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作