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2020.04.06

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㊾「偽造印鑑を押印した契約は有効であるか」NEW
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊾
『偽造印鑑を押印した契約は有効であるか』

甲社と乙社は『金銭消費貸借契約』を締結し、「乙社が甲社から3000万元を借り、新工場の建設に用いる。借入期間を6か月とする」などを約定した。乙社の法定代表者の李さんは借入者として署名し、乙社の公印を押印した。

その後、乙社の法定代表者が変わった。借入期間満了後に乙社は約定通りに返済しなかったので甲社に催促されたが、乙社の新たな法定代表者は「金銭貸借のことを知らなかった」と主張した。甲社から提示された『金銭消費貸借契約』について、乙社は「契約での押印は、前任の法定代表者が偽造印鑑を押したものである」と主張し、工商部門にて会社登録登記を行うための書類押印に用いる印鑑を提供した。対比により、甲社は二つの印影が確かに一致しないことを確認したが、「仮に偽造印鑑が押印されたとしても、乙社は期限通りに返済すべきである」と主張し、裁判所に訴訟を提起した。

本件については二つの意見がある。一つの意見は、契約主体は、契約の約定が真実の意思表示によるものであることを表明するために、公印を押印する。偽造印鑑を押印する場合は、契約の約定が契約主体の真実の意思表示によるものではないことを表明し、契約は無効であるというものである。
もう一つの意見は、乙社の法定代表者が会社の名義で対外的に契約を締結したので、甲社は、「乙社の法定代表者は乙社を代表して意思表示を行う権利がある」と信じる十分な理由がある。仮に偽造印鑑を押印したとしても、契約は有効であるというものである。
 

『分析』:
偽造印鑑を押印した契約の有効性について、実務において、各地の裁判所の間で意見が一致しない。最高人民法院民事審判法廷の裁判官が数回会議により検討した上で、2019 年11 月8 日に最高人民法院は『全国法院民商事審判業務会議紀要』を配布し、規定を明確にした。
当該会議紀要によると、司法実務において、会社は故意に複数の印鑑を刻印したり、法定代表者又は代理人が勝手に公印を刻印したりし、契約締結時に悪意をもって未届の公印又は偽造印鑑を押印し、紛争を起こした後、偽造印鑑の押印を理由に契約の効力を否定するケースが珍しくない。裁判所は審理において、押印時に締約者の代表権又は代理権の有無を重点的に審査し、これによって代表又は代理の関連規則に基づいて契約の効力を確定する。
 
通常、法定代表者又は法定代表者から権限を与えられた者が契約締結時に「会社の名義で締約する」ことを表明し、かつ会社の公印を押す場合は、相応の法的責任を会社が負う。会社が法定代表者の代表権喪失、偽造印鑑による押印、押印されたものと届出済みの印鑑が一致しないなどを理由に、契約の効力を否定する場合、裁判所に認められない。
 
代理人は被代理人の名義で契約を締結する場合、法に従い被代理人から権限を与えられているものとする。被代理人から合法的に権限を与えられた後に、代理人が被代理人の名義で契約を締結する場合、相応の責任は被代理人が負う。被代理人が代理人の代理権喪失、偽造印鑑による押印、押印されたものと届出済みの印鑑が一致しないなどを理由に、契約の効力を否定する場合、裁判所に認められない。
 
注意すべきは、法律に特別な定めがある場合に、上記の規定は適用されない。例えば、『会社法』によると、会社は対外的に担保を提供する場合、董事会又は株主会、株主総会の決議を経なければならない。董事会又は株主会、株主総会の決議を経ずに法定代表者が会社の名義で締結した担保契約について、会社は必然的に法的責任を負うわけではない。
 

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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