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2019.11.22

シンガポールシンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第49回『外国判決相互執行法・コモンウェルス判決相互執行法の改廃』
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第49回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights104号(201911月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

シンガポール:外国判決相互執行法・コモンウェルス判決相互執行法の改廃

シンガポールでは、外国判決の承認・執行について、外国判決相互執行法(Reciprocal Enforcement of Foreign Judgments Act)及びコモンウェルス判決相互執行法(Reciprocal Enforcement of Commonwealth Judgments Act)という2つの法律が規律しています。今後、2019年10月3日に施行された外国判決相互執行法改正法(「改正法」)及び国会で承認を受け同月1日に官報に掲載された(施行時期は未定)コモンウェルス判決相互執行法廃止法(「廃止法」)により、外国判決相互執行法の枠組に一本化されることが予定され、承認・執行される外国の判決等の範囲が拡大されます。これは、シンガポール国際商事裁判所の創設(本レター第58号(2016年6月号)参照)やシンガポール調停条約の署名(本レター第101号(2019年8月号)参照)等にみられるような、国際仲裁以外の面でもシンガポールを紛争処理のハブにしていこうというシンガポールの政策の一環であり、まず自ら他国の判決等を承認・執行し易くすることで、ゆくゆくは自国の判決等の承認・執行が他国でされる範囲も広げようという意図があると思われます。
以下では、改正法の内容を踏まえたシンガポールにおける外国判決の承認・執行の要点についてご紹介します。
 
(1) 適用対象法域
 
現行法では、11の法域(英国、豪州、香港、ニュージーランド、スリランカ、マレーシア、インド(ジャンムー・カシミール州を除く)、パキスタン、ブルネイ、パプアニューギニア及びウィンドワード諸島)における判決を対象としています。改正法によって直ちに対象国が変更されることはありませんが、改正法の下で、今後対象国が拡大する可能性があります。なお、日本を含む対象国に含まれていない国の判決については、従前と同様に、本枠組とは別途コモンローの法理に基づいた承認・執行手続を経ることになります。
 
(2) 改正法による承認・執行対象となる判決等の範囲の拡大
 
改正法は、他の法域における最上級審における終局判決のみでなく、下級審における終局判決、中間判決・命令、同意判決・命令(consent judgment/order)や裁判上の和解(judicial settlement)についても新たに承認・執行の対象に加えています。シンガポール法務省によると、資産凍結命令(freezing injunction)等の仮処分も承認・執行の対象になるとされているため、その意義は大きく、比較法的にも先進的な内容になっていると言えます。
また、改正法により、金銭給付を命じる外国判決・命令のみでなく、特定履行請求、差止め等の非金銭的な事項に関する判決・命令についても新たに対象に含まれることになりました。
 
改正法は、上記のとおり従前よりも適用対象を拡大しており、冒頭のとおり、シンガポールをより紛争解決の中心地として打ち出していく意欲の強い現れといえます。今後、適用対象法域がいわゆるコモンウェルス法域以外にどのように拡大するのかが特に注目されます。
 
(ご参考)
本レター第58号(2016年6月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00022425/20160621-060911.pdf
本レター第101号(2019年8月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00037177/20190821-034942.pdf
 
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて、資格を有するシンガポール法事務所と協働して対応させていただきます。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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