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2019.09.27

ベトナムベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第47回『新汚職防止法及び新政令の施行』
【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第47回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights102号(20199月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
 
◇ベトナム:新汚職防止法及び新政令の施行
 
ベトナムにおいて贈収賄を規制する基本的な法律としては、これまで汚職防止法と刑法が存在していました。今般、旧汚職防止法(Law No.55/2005/ND-CP)が廃止され、新汚職防止法(Law No.36/2018/ND-CP):「新汚職防止法」が2019年7月1日に施行されるとともに、新汚職防止法に関する政令(Decree No.59/2019/ND-CP):「政令59号」が同年8月15日より施行されました。
新汚職防止法等による重要な改正点としては、旧法下では汚職規制の対象が公的機関や公務員等のみであったのに対して、新法では民間企業・組織やその一部の職員についても汚職規制の対象に含まれることとなりました。
本稿では、この新汚職防止法及び政令59号の重要な改正点である民間企業・組織やその職員に関する汚職規制を中心にご紹介します。
 
(1) 汚職行為の禁止
 
まず、新汚職防止法では、民間企業・組織の一定の職員の汚職行為を禁止しています。具体的には、「非公的機関の企業・組織(enterprises and organizations in nonpublic sector)」:「民間企業・組織」の「地位・権限を有する者(person with title / power)」は「汚職行為(acts of corruption)」を行ってはならないと規定されています。
上記の「民間企業・組織」には、文言上、広く一般の民間企業・組織も含まれると考えられます。
そして、「地位・権限を有する者」については、給料の有無を問わず、契約その他の形式に基づき、特定の任務・義務を行うために任命、選任又は雇用され、そのための権限を与えられている者と定義され、その例として、管理職の地位(management position)にある者が含まれることが明示されました。なお、管理職の地位を有さない者であっても、特定の任務・義務を与えられ、そのための権限を付与されている場合には、「地位・権限を有する者」に含まれる可能性がある点に留意を要します。
これら民間企業・組織における一定の職員は、公的機関の公務員等が禁止される汚職行為の範囲と比べて限定的ではあるものの、一定の「汚職行為」を行うことが禁止されています。公的機関の公務員等が行った場合「汚職行為」とされる行為と、民間企業・組織の「地位・権限を有する者」が行った場合「汚職行為」とされる行為とを対比した表が、以下のものです。
 
                               【表】禁止される汚職行為の内容
公/民 公的機関 民間企業・組織
禁止される汚職行為















 
① 横領
②収賄
③私利目的による企業・組織に対する贈 
  賄又は賄賂の仲介
④ 資産の不正流用のための権限濫用
⑤ 私利目的による任務・義務の遂行上 
     の権限濫用
⑥ 私利目的による権限逸脱
⑦ 私利目的で他人に影響を及ぼすため
   の権限濫用
⑧ 私利目的による偽造
⑨ 権限濫用による私利目的での公的資
   産の不正使用
⑩ 私利目的での嫌がらせ
⑪ 私利目的による義務の不履行又は不
   適切履行
⑫ 私利目的による法律違反の隠匿のた
  めの権限濫用、調査妨害等
① 横領
② 収賄
③ 私利目的による企業・組
   織に対する贈賄又は賄
  賂の仲介












 
 
以上の汚職行為を行った者は、違反の重大さや性質に応じて、組織内における懲戒処分、行政罰や刑罰の対象となります。なお、この場合に適用される行政罰については、行政罰に関する法律・政令がまだ制定されておらず、現時点では明らかではありません。
 
(2) 汚職防止措置の実施
 
(a) 民間企業・組織一般に課せられる汚職防止措置の実施義務
 
次に、新汚職防止法は、民間企業・組織に対して、汚職防止を目的として、以下の行為を実施する一般的な義務を課しています。
 
①汚職防止措置の実施
②企業・組織内で発生した汚職行為の発見及び当局への報告、並びに法律・規則に基づく当該汚職行為への措置に関する当局との協力
③汚職行為に関する当局への迅速な情報提供及び汚職防止措置に関する当局との協力
 
以上の義務の一環として、民間企業・組織は、利益相反及び汚職行為の防止のため、行為規範(Code of Conduct)及び内部管理機構(internal control mechanism)を定める必要があります。また、民間企業・組織は、新汚職防止法において、義務ではないものの、従業員を対象とする職業倫理・企業倫理に関する規則を制定することを推奨されています。
以上の汚職防止措置の実施義務については、新汚職防止法ではその違反に対する罰則等は特段定められておらず、現時点では当該義務違反に対する罰則等を定める他の法律・政令は制定されていません。
 
(b) 公開会社等に特別に課せられる義務
 
以上の民間企業・組織に課せられる汚職防止措置の実施義務に加えて、民間企業・組織の中でも特に公開会社、金融機関等の一定の企業・組織(「公開会社等」)に対しては、以下の義務が課せられています。
 
①明性確保のための措置に関する社内規則の制定及び一定の情報(従業員の権利・給与・労働時間等に関する規則、行為規範、定款、会社組織・人事構造その他関連法規)のウェブサイト等での公開
②利益相反の管理(利益相反に該当するケースの特定、利益相反行為の取扱い、報告義務等に関する社内規則の制定、法律に基づく当局への通報義務等)
③汚職行為に関する組織の代表者の責任に関する社内規則の制定
 
新汚職防止法上、公開会社等が上記の義務に違反した場合、行政罰の対象となるとされていますが、現時点で行政罰に関する法律・政令は制定されておりません。また、公開会社等の管理職の地位を有する者は、当該義務違反が生じた場合は社内規則に従い処分されることとされています。
当該公開会社等の義務違反の状況について、当局は調査権限を有しており、もし公開会社等が義務違反につき管理職を処分しなかった場合には、当局により公開会社等の名称、住所、違反内容が公表される可能性があります。
 
以上のとおり、新汚職防止法及び政令59号により、新たに民間企業・組織やその職員が汚職規制の対象に加えられましたが、民間での収賄・贈賄行為(いわゆる商業賄賂)については、2018年1月1日に施行された新刑法で既に処罰の対象とされていました(新刑法における商業賄賂に関する改正内容は、本レター第62号(2016年9月号)をご参照ください)。今般の新汚職防止法及び政令59号の施行により、商業賄賂に対する注目が高まり、規制が強化される可能性がある点にご留意ください。
 
(ご参考)
本レター第62号(2016年9月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00023431/20160921-040331.pdf

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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