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2019.10.30

その他のアジア【マレーシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第48回『会社法改正法案』
【マレーシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第48回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights103号(201910月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇マレーシア:会社法改正法案

2019年会社法改正法案(Companies (Amendment) Bill 2019:「本改正法案」)が、2019年7月10日にマレーシア議会代議院(下院)を、同月31日に同議会元老院(上院)を、それぞれ通過し、またマレーシア国王による承認を受けました。公布・施行の日は未定です。本稿では、本改正法案による特に重要な改正点につき、ご紹介します。
 
(1) 会社による署名手続
 
現行会社法上、会社を代表して文書に署名をする場合、会社のコモンシールを捺印するか、最低2名の代表者(うち1名は取締役)が署名することが必要であるとされていますが、この規定の適用範囲は不明確となっていました。本改正法案により、この規定が適用されるのは、法令、決議、契約又は定款により、会社が署名することが義務付けられている文書であるということが明確化され、単なる内部文書等には適用されないことが明らかになります。
 
(2) 優先株式の償還の場合の取り扱い
 
現行会社法上、優先株式の償還は、(a)利益、(b)新株発行による払込金及び(c)資本金を原資として行うことができ、上記(b)の場合を除き、償還された金額と同額を資本金に組み入れなければならないとされていますが、これが(c)の場合にも適用されるのかは不明確となっていました。本改正法案により、この組入義務が(a)の場合にのみ適用されることが明らかになります。
 
(3) 株式併合等の手続
 
現行会社法上、株式併合や分割等については株主総会の特別決議が必要であるとされていましたが、本改正法案により、定款に別途定めがない限り、普通決議のみで足りることとなります。
 
(4) 公開会社における監査人選任・監査人の報酬決定手続
 
現行会社法上の公開会社における定時総会決議事項に関する規定が改正され、監査人の選任及び監査人の報酬決定が定時総会決議事項であることが明確化されます。
 
(5) 更生管財手続の却下要件の緩和
 
現行会社法上、High Courtは更生管財命令(倒産手続の専門家としての資格を有する更生管財人を選任し、会社の運営を行わせる命令)が会社又はその取締役若しくは債権者から申し立てられた場合、(a)管財人(receiver)又は管財人及び管理人(manager)が指名され又は指名される予定があり、かつ、(b)担保債権者からの異議がある場合に限り、申し立てを却下することができるとされています。本改正法案により、(a)か(b)のいずれかが満たされればHigh Courtは却下が行えるということになり、却下のための要件が緩和されるといえます。
 
(6) 訴訟費用の担保提供規定の復活
 
現行会社法の前身である1965年会社法において、会社が訴訟手続を開始したものの、被告が勝訴した場合に被告の訴訟費用を負担できないと合理的に信じる理由がある場合には、High Courtは会社に対し、訴訟費用負担のための担保を裁判所に提出するよう命じることができるとする規定がありましたが、2016年に改正された現行会社法ではこれに対応する規定がありませんでした。本改正法案においては規定が新設され、上記に相当する規定が再び設けられることとなります。
 
本改正法案により、2016年に改正された現行のマレーシア会社法に初めて実質的な改正が加えられることとなります。施行時期については引き続き注視が必要となります。
(※本記事は2019年10月23日時点のものです。)

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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