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2018.09.26

ベトナムベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第35回『ベトナム 競争法の改正・施行』
【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第35回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights90号(20189月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇ ベトナム 競争法の改正・施行(2019年7月1日)

2018年6月12日、ベトナムの国会において新競争法が可決され、2019年7月1日からの施行が予定されています。これにより、現行の競争法(2005年施行:「現行競争法」)におけるカルテル等の競争制限行為や企業結合に関する規制の枠組みが大幅に変更される見込みです。本稿では、新競争法の改正内容のうち、特に実務に大きな影響を与えうる (1) 競争制限的行為規制の改正内容、(2) リニエンシー制度の導入、及び(3) 企業結合規制の改正内容についてご紹介します。
 
(1) 競争制限的行為規制の改正内容
 
現行競争法上、競争制限的行為(カルテルや垂直的取引制限)として、大要、①商品等の価格の拘束、②販売市場・原料供給の分配、③生産・購入・販売量の制限・調整、④技術開発・投資の制限、⑤売買契約の相手方に対する売買に関係しない義務・条件の強要、⑥他の事業者の事業参入・拡大の阻止・制限、⑦協定に参加しない事業者の市場排除、⑧入札談合に関する協定について一定の制約が課せられています。この点に関して、新競争法では、主に以下の内容に改正されることが予定されています。
 
(a) 現行競争法上、上記①~⑤については、協定の参加事業者の関連市場シェアが30%以上である場合に限り、協定の締結が禁止されているところ、新競争法では、関連市場シェアにかかわらず協定の締結が禁止されることとなります。
 
(b) 上記①~⑧に限らず、重大な競争制限効果をもたらす事業者間の協定全般について、締結が禁止されることとなります。
 
このように、競争制限的行為として禁止される範囲が拡大し、また上記(b)の競争制限効果が重大か否かは当局が市場シェアや参入障壁の有無、消費者に与える影響等の様々な要素を考慮して評価することとされているため、当局の裁量がより大きくなり、規制の運用が厳格化する可能性は否定できません。
 
(2) リニエンシー制度の導入
 
現行競争法においては、リニエンシー制度(自己申告による罰金減免制度)は存在しませんが、新競争法では、リニエンシー制度の導入が予定されています。具体的には、事業者が競争制限的行為を行った旨を自発的に国家競争委員会(National Competition Committee)に申告した場合、①国家競争委員会による調査決定が行われる前であること、②競争制限的行為に関するすべての情報・証拠を提出したこと、③国家競争委員会に対して最初に申告を行う企業であること等の一定の条件を満たせば、罰則の適用の免除を受けることができる(2番目に申告を行った企業は罰金の60%、3番目に申告を行った企業は罰金の40%の減額を受けることができる)という制度が導入される予定です。
 
(3) 企業結合規制の改正内容
 
現行競争法では、吸収合併・新設合併、企業買収及び合弁事業(「経済集中」)に参加した事業者の関連市場における合計市場占有率が①50%を超える場合は当該経済集中を行うことが禁止され、また②30%~50%となる場合には競争局への事前届出を行わなければならないとされています。
これに対し新競争法では、まず、経済集中禁止規制に関して、現行競争法上の合計市場占有率50%超という基準は廃止され、代わりに、経済集中によりベトナムにおける「市場競争が著しく抑制される」おそれがある場合には当該経済集中を行うことが禁止されます。この市場競争が著しく抑制されるか否かについては、上記(1)と同様、当局が市場シェアや参加事業者の関係性等の様々な要素を考慮して評価するとされており、当局に相応の裁量が認められることとなります。
また、事前届出規制についても、新競争法では、現行競争法上の合計市場占有率30%~50%という基準は廃止され、代わりに、①経済集中の参加事業者の総資産額、②経済集中の参加事業者の総売上高、③経済集中の取引金額、及び④経済集中の市場シェアに関する基準のいずれかを満たす場合には事前届出が必要となります。新競争法上、これらに関する具体的な数値基準は示されていませんが、政府は当該規制に関する具体的なガイドラインを出すことを予定しており、今後、金額基準を含めた具体的な要件が示される見込みです。
 
以上のとおり、新競争法においては、既存の規制の枠組みが大幅に変わり、また当局の裁量も更に広がる見込みであるため、実際に新競争法がどのように運用されていくか、また実務にどのようなインパクトを与えるか、その動向を注視する必要があります。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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