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2024.11.07

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第83回『「損をしたら事業主が負担、儲けたらパートナーで均等に分ける」とはどのような提携か』
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第83回
『「損をしたら事業主が負担、儲けたらパートナーで均等に分ける」
                           とはどのような提携か 


張さんは八百屋を開業するつもりだが、資金が足りないので、友人の李さんに「パートナーになってほしい」と誘い、かつ「店の経営を心配しなくてもいい。損をしたら私個人が負担し、儲けたらみんなで分ける」ことを保証した。李さんは「安定的に儲けられ、損をしない商売だ」と判断し、喜んで受け入れた。双方は「投資提携協議書」を締結し、「張さんは店を経営し、李さんは出資金10万元を支払う。毎月張さんは李さんに固定配当として2000元を支払う。」ことを約定した。その後、張さんは一人で店を経営していた。1年後、経営不振のため、張さんは李さんに引き続き配当金を支払うことができなくなった。張さんが約束を果たさないので、李さんは出資金の返還を請求した。しかし、張さんは「当初の出資金は完全になくなっており、李さんもパートナーだから、一定の責任を負うべきである」と言った。李さんは怒りのあまり、訴訟を提起した。
 
『分析』:


『民法典』第967条には、「パートナー契約とは、2人以上のパートナーが共同の事業目的のために締結し、利益を共に享受し,リスクを共に負担する合意を指す。」と規定している。従って、パートナー契約は共同投資、共同経営、収益共有、リスク共有の特徴があり、最終的に収益を得られるか否かにも不確定性がある。二者間のパートナー契約において「当事者の一方が固定収益を享受するだけで、経営に関与せず、リスクも負わない」ことを約定する場合、明らかに上述のパートナー契約の特徴と合致しない。

『〈中華人民共和国民法典〉契約編通則の適用における若干問題に関する最高人民法院の解釈』第15条には、「人民法院は当事者間の権利義務関係を認定するには、契約の名称にこだわるべきではなく、契約の約定に基づくべきである。当事者が主張する権利義務関係と、契約内容に基づいて認定された権利義務関係とが一致しない場合、人民法院は契約締結の背景、取引目的、取引構造、履行行為及び当事者が取引対象を虚構したか否かなどに基づいて、当事者間の実際の民事法律関係を認定するものとする。」と規定している。

『民法典』第667条には、「民間金銭貸借契約とは,借主が貸主から金銭を借り入れ、期限到来時に借入金を返済し、かつ利息を支払う契約をいう。」と規定している。民間金銭貸借関係において、借主が借入金を使って収益を得たか否かは貸主とは無関係であり、双方の約定通りに元金を返済し、かつ利息を支払わなければならない。

本件において、一方の当事者が資金を提供し、固定的に収益を得るという取引モデルは民間金銭貸借の特徴に合致する。そのため、実務において裁判所はこのような関係を「パートナーシップと呼び、実際の貸借である」と判断して最終的に民間貸借関係と認定し、固定配当を貸借による利息と認定し、「出資金を取得した当事者が相手に借金を返済し、かつ一定の利息を支払う」と判決を下すことが多い。

以上のことから、パートナーシップは共同経営、リスク共有、収益共有の特徴がある。パートナーは共同で経営管理に関与し、日常経営に係る事項を共同で決定する。出資や配当について詳細な約定を行い、パートナーシップから離脱の条件や離脱時の資本計算などを明確にすることにより、パートナー契約が「名実相伴わない」として民間金銭貸借契約と認定されないように注意するべきである。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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