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2024.09.30

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第82回「 会社解散に伴う職業健康診断」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第82回
 会社解散に伴う職業健康診断 

甲社は化学工業企業であり、作業場には多くの職業病危害要素があり、甲社と労働関係を構築した従業員の中に、職業病に罹患する危険のある作業に従事している者が100人余りいる。赤字経営により、甲社は2024年3月31日(以下「解散日」という)に早期に解散し、かつ解散日に全従業員と労働関係を終了することを決定した。2024年2月の初め、甲社は職業病に罹患する危険のある作業に従事する従業員を対象に退職前の職業健康診断を行ったところ、1人は「職業病の疑いがある」、5人は「再検査」、3人は「職業禁忌証」、その他の人員は「正常」又は「その他の疾病や異常」と認定された。長期にわたって職業病に罹患する危険のある作業に従事しているため、50人余りの従業員は個人職業健康診断報告書を受け取った後、甲社に対して「職業病診断を手配し、かつ解散日に労働関係を終了してはならない」との要求を出した。
 
『分析』:


『職業病防治法』の関連規定によると、労働者が退職前の職業健康診断を行っていない場合は、雇用企業は労働契約を解除または終了してはならない。本件において、甲社は従業員を組織して退職前の職業健康診断を行っており、この場合、「解散日」に従業員と労働契約を終了することは可能か?

職業健康診断結果によって労働者個人の健康診断の結論は以下の5種類に分けられる。
a)現時点で異常が見られない。
b)再検査。
c)職業病の疑いがある。
d)職業禁忌証。
e)その他の疾病や異常。

『雇用企業の職業健康監護監督管理弁法』第17条には、「雇用企業は職業健康診断報告書に基づき、以下の措置を講じなければならない。(1)職業上の禁忌がある労働者に対して、転任又は元職位からの離脱を実施する。(2)健康被害が職業と関係し得る労働者に対して、適切な対策を講じる。(3)再検査を必要とする労働者に対して、職業健康診断機構の所定期日通りに再検査と医学的観察を手配する。(4)職業病の疑いがある患者に対して、職業健康診断機構の提案通りに医学的観察又は職業病診断を手配する。(5)職業病危害が存在する職位に対して、直ちに労働条件を改善し、職業病防護施設を完備し、労働者のために国家基準に符合する職業病危害防護用品を配備する。」と規定している。

上述の規定によると、甲社は従業員の職業健康診断結果によって、相応の措置を講じるべきである。
(1)職業健康診断により、a)現時点で異常が見られない、d)職業禁忌証、e)その他の疾病或いは異常と認定された場合、甲社は法により労働契約を終了することができる。(2)職業健康診断により、b)再検査と認定された場合、甲社は職業健康診断機構の所定期日通りに再検査と医学的観察を手配しなければならない。再検査を必要とする従業員は職業病に係る異常が存在し得るため、甲社はそれらの従業員と労働契約を終了してはならない。(3)職業健康診断により、職業病の疑いがあると認定された場合、甲社は職業健康診断機構の提案通りに医学的観察または職業病診断を手配しなければならず、医学的観察期間と職業病診断期間中に労働契約を終了してはならない。

以上のことから、退職前の職業健康診断により、再検査又は職業病の疑いがあると認定された従業員に対して、雇用企業は規定通りに再検査、医学的観察又は職業病診断を手配しなければならず、かつ労働契約を終了又は解除してはならない。

本件の甲社は2024年3月末に解散することを決定しており、2024年2月に職業病に罹患する危険のある作業に従事する従業員を対象に退職前の職業健康診断を行った。退職前の職業健康診断を手配する期日が解散日に近いため、従業員が職業病診断を要求した場合及び、会社が労働契約を終了してはならない場合に、会社が解散日までに相応の措置を講じられず、人員整理方案の実施に影響を与え、さらに会社清算抹消手続にも影響を与える可能性がある。そのため、企業は大規模な人員整理を行う場合、もし職業病に罹患する危険のある作業に従事する従業員がいれば、職業健康診断結果が人員整理方案の実施及び会社清算抹消手続に対する影響を減少するために、予定の労働契約解除日又は終了日の90日前までに従業員を対象に退職前の職業健康診断を行うことができる。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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