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2024.05.07

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第78回「AIにより故人を「復活」させることは違法であるか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第78回
『AIにより故人を「復活」させることは違法であるか』

最近、AI業界に従事している甲は、AIにより故人を「復活」させることがネット上でブームになっていることに気づき、お金儲けができると考えている。そして甲はオンラインプラットフォームにより、委託を受けてAI技術により故人の動画・映像を作成できる旨の広告を掲載した。
思った通り、アイドルを「復活」させたいファン、亡くなった家族を「復活」させたい人などから次々と注文が入り、甲は非常に忙しい。しかし、その後、甲には、当該行為が故人の肖像権を侵害したという苦情が寄せられた一方、「これらの動画・映像のおかげで、家族の姿を再度見られる」旨の感謝の言葉を伝えられ、多くの顧客から好評を博した。甲さんはどうしたらよいか分からず苦慮している。

『分析』:

科学技術の急速な発展に伴い、AI技術は日常生活に影響を及ぼし、大きな利便性を提供する一方、それによる法律問題も次々と発生している。中国では関連法令の整備を推進している。

中国の『民法典』によると、自然人は出生時から死亡時まで、民事権利能力を有し、法により民事権利を享有し、民事義務を負うものとする。従って、故人は死亡した時点で民事権利能力が消滅するため、肖像権を享有しない。しかし、故人の肖像を侵害する行為(肖像の無断合成を含む)は法的制約を受けないという意味ではない。

中国の『インターネット情報サービス深層合成管理規定』によると、深層合成サービスの提供者と技術支援者は顔や声などの生体識別情報の編集機能を提供する場合、深層合成サービスの利用者に対し、編集される個人に法により通知し、かつ個別の同意を得るよう促すものとする。従って、編集される本人の同意を得ずに、AI合成技術により無断で顔や声などを合成してはならない。

中国の『民法典』によると、故人の氏名、肖像、名誉、栄誉、プライバシー、遺体などが侵害された場合、その配偶者、子供、両親は法により行為者に民事責任を負わせることを請求する権利がある。故人に配偶者、子供がおらず、かつその両親がすでに死亡した場合は、その他の近親者は法により行為者に民事責任を負わせることを請求する権利がある。当該規定では、故人の肖像等を侵害する行為を禁止する一方、故人の親族を保護する観点から、故人の親族の追憶、故人を偲ぶ精神的権益を保護している。従って、許可を得ずに無断で故人の肖像などを侵害する場合は、故人の親族に権利侵害責任を負わなければならない。

注意すべきことは、亡くなった以上、その本人はAIによる編集・合成に同意する意思表示をすることはできない。従って、故人の近親者であっても、他の機関や個人がAIにより故人を「復活」させることを許可する権利を有しない。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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