2024.03.18
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第76回「新『会社法』における簡易登記抹消制度」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿/第76回
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『新『会社法』における簡易登記抹消制度』
2016年、市場監督管理総局(元工商局)は「企業簡易登記抹消改革の全面推進に関する指導意見」を発表し、全国で企業簡易登記抹消制度を推進することになっている。現在、企業簡易登記抹消制度は全国で実施されている。2023年に改正された『会社法』(以下、新『会社法』という)では簡易登記抹消制度を規制・整備している。
『分析』:
1、簡易登記抹消の「簡易」を如何に示すか?
まず、登記抹消手続が簡素化されている。簡易登記抹消手続を利用する企業は清算グループの届出を行わず、公告期間は45日から20日に圧縮され、しかも全過程でインターネットにより登記することができる。次に、申請書類が簡素化されている。企業は清算報告書、清算グループ届出証明書などの書類を提出する必要がなくなる。簡易登記抹消を申請する市場主体は、「企業登記抹消申請書」、「全投資家承諾書」、営業許可証の正本・副本を提出するだけで登記抹消を申請することができる。
2、簡易登記抹消の手順
簡易手順を通じて会社登記抹消を行うには、国家企業信用情報公示システムにより公告しなければならない。公告期間は20日を下回らない。公告期間満了後、異議が申し立てられていない場合、会社は20日以内に会社登記機関に会社の登記抹消を申請することができる。
3、簡易登記抹消の適用条件
会社が存続期間中に債務が発生しておらず、又は全ての債務を返済した場合、全株主の承諾を得て、規定通りに簡易手順を通じて会社の登記抹消を行うことができる。
4、会社登記抹消前の債務を如何に負担するか
「企業簡易登記抹消改革の全面推進に関する指導意見」では、投資家が企業簡易登記抹消手続を悪用して債務を逃れたり、他人の合法的権利を侵害したりした場合、利害関係者は民事訴訟を通じて、投資家に相応の民事責任を主張することができる。投資家が法令に違反し、犯罪になる場合は、法に基づいて刑事責任を追及されることを定めているが、投資家がどのような責任を負うかを明確にしていない。新『会社法』では、会社が簡易手順を通じて会社登記抹消を行うにあたり、株主は会社が簡易手順の適用条件を満たしているか否かについて虚偽の承諾を行った場合、登記抹消前の債務に対して連帯責任を負わなければならないことを明確にしている。
新『会社法』における簡易手順の関連規定から見て、国は簡易登記抹消制度を推進し、市場主体の市場退出メカニズムを完備すると同時に、債権者利益への保護を重視している。会社は登記抹消前に自社の実情に応じて簡易登記抹消の適用を受けるか否かを判断するべきである。株主は会社簡易登記抹消時に虚偽の承諾を行わないように注意するべきである。そうしないと、会社登記抹消前の債務に対して連帯責任を負うことになる。
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員