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2024.04.01

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第77回「新『会社法』における株主の知る権利」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第77回
『新『会社法』における株主の知る権利』

会社の株主は会社の投資家や出資者であり、会社財産の最終的な所有者である。株主が投資により会社を設立する主な目的は収益を得ることにある。そのため、株主には会社の生産経営、利潤などの状況を知る権利、即ち株主の知る権利がある。

これについて、現行の『会社法』では、「会社の株主は会社の定款、株主会の議事録、取締役会の決議、監査役会の決議、会計報告書を閲覧・複製することができ、会計帳簿の閲覧を要求することができる」と定められた。これまでの司法実務において、株主が会計証憑を閲覧する権利の有無、親会社の株主が完全子会社の関連資料を閲覧する権利の有無については意見が一致していなかった。改正後の新『会社法』では、株主の知る権利について関連規定を追加した。

『分析』:

一、株主が知る権利を行使する対象となる書類の範囲

(1)閲覧・複製する書類の範囲について、改正後の新『会社法』では会社定款、株主名簿(株式会社の場合)、株主会の議事録、取締役会の決議、監査役会の決議、会計報告書をそのまま残し、株式会社の株主名簿を新規追加し、株式会社の債券の控えを削除した。

(2)閲覧のみに限る書類の範囲について、改正後の新『会社法』では会社の会計帳簿をそのまま残し、会計証憑を新規追加した(株式会社であれば、180日以上連続して単独又は合計で会社の3%以上の株式を保有する株主は閲覧する権利があり、定款には別途規定がある場合を除く)。

『会計法』の規定によると、会計帳簿(総勘定元帳、明細帳、日記帳及びその他の補助帳簿を含む)を作成する場合は、審査を経た会計証憑を根拠としなければならない。会計証憑(原始証憑と記帳証憑を含む)は会計帳簿の範囲外であるが、原始証憑は会計帳簿を作成する基礎であり、会計帳簿の真実性と完全性を示す資料である。株主は会計証憑を閲覧する権利があり、会計証憑の閲覧は会計帳簿の閲覧に必要であり、かつ会計帳簿の真偽を証明することができる。

従って、これまでの司法実務において、株主が裁判所に会社の会計証憑の閲覧を請求するケースは少なくなかった。裁判所は通常慎重に扱い、法律では「株主は会計証憑を閲覧する権利がある」ことを明確にしていない状況下で、株主の請求は認められないことが多い。しかし、今後、株主は法により会社に対して会計証憑の閲覧請求を出すことができる。

二、親会社の株主が知る権利を行使する範囲は、親会社の完全子会社にまで及ぶ

新『会社法』によると、株主の知る権利の対象は親会社のほか、親会社の完全子会社にまで及ぶ。つまり、会社の株主は完全子会社の関連資料を閲覧・複製する権利があり、株主が完全子会社に対して閲覧・複製の権利を有する資料の範囲は、株主が当社に対して閲覧・複製の権利を有する資料の範囲と一致する。これまでの司法実務において、親会社の株主が子会社に対する知る権利の行使を請求するケースはある。裁判所は通常、子会社自体の人格の独立性を考慮し、親会社の株主の請求を認めていない。しかし、今後、親会社の株主は法により完全子会社に対して関連資料の閲覧・複製要求を出すことができる。

三、株主が知る権利を行使する方法の追加

現行の『会社法』では、株主が知る権利を行使するときに他人に委託できるか否かを明確にしていない。新『会社法』では、株主は知る権利を行使するときに、会計士事務所、弁護士事務所などの仲介機関に関連資料の閲覧・複製を委託することができることを明確にした。又、関連情報の漏洩による会社の損害を避けるために、新『会社法』では、「仲介機関はその知り得る国家秘密、商業秘密、プライバシー、個人情報に対して守秘義務を負う」ことを定めた。

四、株主が知る権利を行使する前置手続き、制限、救済ルート

新『会社法』には現行の『会社法』と一致する規定がある。具体的に言えば、株主は会社の会計帳簿、会計証憑を閲覧する場合、会社に書面で要求を出し、目的を説明しなければならない。会社は、「株主に不正な目的があり、会社の合法的利益を損なう可能性がある」と合理的な根拠をもって判断した場合は、閲覧要求を拒否することができる(15日以内に書面で株主に返事し、かつ理由を説明する)。会社が閲覧要求を拒否した場合、株主は裁判所に民事訴訟を提起することができる。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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