2024.03.05
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第75回「『会社法』の改正に伴う有限責任会社の持分譲渡に係る変更点」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿/第75回
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『「会社法」の改正に伴う有限責任会社の持分譲渡に係る変更点』
一、株主以外の者に持分を譲渡する場合は、他の株主の同意を得る必要がない
改正前の『会社法』によると、株主は株主以外の者に持分を譲渡するには、事前に他の株主の同意を得る必要がある。他の株主の過半数が同意した場合にのみ持分を譲渡することができる。改正後の『会社法』では、「他の株主の同意を得る必要がある」の規定を廃止し、「譲渡側は持分譲渡の数量、価格、支払方式、期限などを書面で他の株主に通知すればよい。他の株主は通知を受けた後、同様の条件で優先的に購入することができる。書面による通知を受けた日から30日以内に返事がない場合は、優先購入権を放棄したと見做される。」ことを定めた。当該規定の変更により、持分譲渡のプロセスはより簡素化される。
二、持分譲渡を行う場合は書面で会社に通知し、株主名簿を変更しなければならないという規定の新規追加
改正後の『会社法』では、「株主は持分を譲渡する場合、書面で会社に通知し、株主名簿を変更するように依頼しなければならない。会社登記機関にて変更登記を行う必要がある場合は、会社に変更登記を依頼することができる。会社が拒否した場合、または合理的な期限内に返事をしない場合は、譲渡人、譲受人は法により人民法院に訴訟を提起することができる。」の規定を新規追加した。当該規定は株主に訴訟の権利を与える一方、会社や他の株主が持分譲渡への協力を拒否したり、無理な妨害をすることによって持分譲渡に係る新旧株主が権利を実現しにくくすることを防止する。
三、持分譲渡後に譲受人が株主の権利を行使できる時点の明確化
持分譲渡は時間がかかるので、実務において状況が複雑である。持分譲渡協議書を締結してから、又は持分譲渡の対価を支払ってから権利を行使できることを主張する新株主もいれば、持分譲渡協議書締結前に株主の職責を履行している新株主もいる。改正前の『会社法』では、新株主がいつから株主の権利を行使できるかを明確にしていない。改正後の『会社法』では、「持分譲渡を行う場合は、譲受人は株主名簿に記載された時点から、会社に株主の権利行使を主張することができる」ことを明確にし、これにより実務上の難題を解決した。
四、株主が出資に瑕疵がある持分を譲渡する場合に、誰が出資義務を負うかの明確化
『会社法の司法解釈三』の規定によると、有限責任会社の株主が出資義務を履行せず、または一部しか履行せずに持分譲渡を行い、譲受人がこれを知ったか、または知っているはずであり、会社が当該株主に出資義務を履行させ、譲受人に連帯責任を負わせるよう請求する場合は、人民法院は当該請求を認める。但し、『会社法の司法解釈三』では、出資期限未到来の株主が持分を譲渡する場合、出資の問題を如何に解決するかを明確にしていない。
今回の改正により関連規定を明確にした。改正後の『会社法』によると、株主は払込を引き受けたものの出資期限が未到来の持分を譲渡する場合、譲受人は当該出資を払い込む義務を負う。譲受人が期限通りに出資を全額払い込んでいない場合、譲渡人は譲受人が期限通りに払い込んでいない出資に対して不足額補填責任を負う。
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員