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2024.01.04

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第73回「新業態における雇用モデルについて」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第73回
『 新業態における雇用モデルについて』

2020年8月11日、田さんはe運転代行者アプリを登録し、A社によって運営される運転代行プラットフォームの運転手になった。田さんの勤務時間も勤務場所も固定したものではなく、労働報酬は受注量によって決められる。受注が完了した後、顧客は費用を支払い、A社はその中から一定の費用を受け取る。

2021年6月2日、田さんは受注後、運転の途中に事故が発生し、今回の事故による医療費、入院食事手当などの費用はA社が負担すべきだと主張したが、A社は費用負担を拒否したので、田さんは訴訟を提起した。労働仲裁、一審裁判所、二審裁判所はいずれも田さんのすべての請求を棄却した。本件係争の焦点は、田さんとA社の法律関係を如何に認定するかにある。  
 
『分析』:

インターネットプラットフォーム経済の発展に伴い、大量のネット予約配送、移動、出前、ライブなどのインターネットプラットフォームが出ている。この新業態において雇用モデルは主に以下のものを含む。

(1)プラットフォームと従事者が労働関係を直接構築する「労働雇用モデル」。当該モデルにおいて、プラットフォームは従事者を直接管理し、雇用企業の義務を履行する。

(2)プラットフォームとアウトソーシング機構が提携し、アウトソーシング機構と従事者が労働関係を構築する「アウトソーシングモデル」。当該モデルにおいて、アウトソーシング機構と従事者が労働関係を構築し、プラットフォームとアウトソーシング機構が契約関係を確立し、プラットフォームと従事者はいかなる関係をも構築しない。 

(3)プラットフォームと派遣会社が提携し、派遣会社と従事者が労働関係を構築する「派遣モデル」。当該モデルにおいて、プラットフォームと派遣会社が派遣協議書を締結し、プラットフォームを派遣先とし、派遣会社を雇用企業とする。

(4)プラットフォームと、自由意志でサービスを提供し、かつプラットフォームと労働関係を構築しない従事者がアウトソーシング関係を構築する「クラウドソーシングモデル」。「クラウドソーシング」とは、会社や機構が、そもそも従業員によって遂行される任務を不特定の大衆にアウトソーシングすることを指す。当該モードにおいて、プラットフォームと従事者が民事法律関係しか構築せず、民事法律関係の調整を受ける。 

(5)需要者と供給者の取引を成立させることを目的とする「仲介モデル」。当該モデルにおいて、プラットフォームが仲介サービスを提供するだけで、顧客と従事者に対してリソースの交換・共有、契約締結の機会と便宜を提供する。

上記のモデル以外に、新業態の雇用モデルには労務関係、労働者共有、業務請負などのモデルも含まれる。現時点で「クラウドソーシングモード」はインターネットプラットフォームで最も一般的な雇用形態である。本件において、田さんはe運転代行プラットフォームで運転手として登録して運転代行サービスを提供し、A社はプラットフォームを通じて田さんに対して運転代行情報を提供し、田さんは顧客に対して運転代行サービスを提供し、運転代行費用を受け取る。このことから、A社の雇用モデルは典型的な「クラウドソーシングモデル」である。

本件からみて、新業態の雇用モデルにおいて、複数の主体が現れ、法律関係がさらに複雑になる可能性はある。従って、各主体(プラットフォームにしても、従事者にしても)は、雇用モデルによってそれぞれの権利義務が異なることを認識するべきである。
従って、下記のように提案する。(1)書面協議書を締結し、各自の法律関係を明確にしなければならない。(2)プラットフォームはサービスタイプと業務タイプによって異なる雇用形態を設置し、雇用形態とセットになった規則制度と管理措置を策定し、従事者に対して十分かつ必要な説明を行う。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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