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2023.02.24

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第61回「品質の約定を軽視するべきではない」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第61回
『品質の約定を軽視すべきではない』

A社はB社から不織布生産設備を購入した。B社が設備を納品した後、A社は「当該設備で生産した不織布の厚さが均一ではなく、保温力も高くなく、マスクの生産基準に達していない。」と主張した。B社は何度もA社に赴き設備トライを行い、A社はその都度異議を申し立てはしなかったが、半年以上経過した後、訴訟を提起し、設備の品質不良を理由に、契約の解除及び設備代金の返金を請求した。

これについて、B社は「A社は不織布製品の売れ行きが悪いので、わざと口実を作って設備を返品したい。当該設備は多種の規格の不織布を生産することができる。A社は設備購入時に不織布の生産に用いると言っただけで、具体的な用途を言わなかった。設備は正常に稼働することができ、生産した多種の規格の不織布はすべて正常に使用することができ、設備返品を認めない。」と主張した。

『分析』:

本件については2つの見方がある。

1番目の見方は、B社から提供された設備はA社の要求を満たすことができず、B社は違約責任を負うべきであるというものである。

2番目の見方は、B社は必ずしも違約になるとは限らない。製品に品質問題があるか否かは、契約の具体的な約定及び実際の履行状況を照合して総合的に判断するべきであるというものである。私たちとしては、2番目の見方に同意する。

裁判所は、「本件に係る設備で生産した不織布は、マスクの生産のみならず、他の不織布製品の生産に用いることもできる。不織布の用途によって品質要求は完全に同じではない。A社は設備購入時に、当該設備で生産する不織布がどのような基準を満たしていないかを立証することができない。B社は設備引渡後に、担当者に設備トライを行わせた。設備トライ後に、A社は品質問題を指摘しなかったし、設備に品質問題があるという証拠も提供しなかった。A社は訴訟により設備品質に異議を申し立て、合理的な期限を超えており、常識に合わない。」と判断し、最終的にA社の請求を棄却した。 

製品に品質問題が発生した場合に、双方は品質が要求に合っているか否かについて意見が一致しないことが多い。そのため、紛争解決の根拠となるものを提供するために、契約締結にあたり、事前に約定を行っておくべきである。これについて、以下の通り提案する。 

まず、契約において、購入する商品がどのような使用目的を満たすかを明確に約定する。本件において、不織布は多くの用途に用いることができ、医療衛生、日常生活、建築工業など多くの分野に使われている。分野によって品質要求が異なるので、契約締結時に、購入する設備の使用目的を明確にするべきである。

次に、契約において具体的な品質基準を明記する。国家基準、業界基準などがあれば、それを明記する。国家基準、業界基準がなければ、契約において、本件の不織布の厚さ、保温性能など、買主に必要な品質基準を明確に約定するべきである。

又、品質問題を発見したら、遅滞なく積極的に解決する。実務において、理非をわきまえる明確な証拠がない場合は、裁判所は異議申立が合理的な期限を超えたと判断し、請求を認めないケースがある。品質紛争を積極的に解決するために、双方は契約において設備の修理・トライ及び製品品質の異議申立てなどに対して具体的な期間を約定することができる。権利の行使、義務の履行を怠る場合は、不利な結果になるという責任を負う。

最後に、第三者機関に対して品質検査又は鑑定を適時申請し、書面報告を取得する。双方は契約において、「製品品質について紛争が発生した場合、関連機関から発行される検査報告書の結論に準ずることを約定することができる。訴訟において裁判所に対して司法鑑定を申請することもでき、これを品質問題の有無を判断する基準とすることができる。  

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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