2022.04.25
- その他のアジア【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第78回「公共サービスに関する外資規制の緩和」
- 【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第78回「公共サービスに関する外資規制の緩和」
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第137号(2022年4月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇フィリピン: 公共サービスに関する外資規制の緩和
2022年3月21日、公共サービス法を改正する法律(共和国法第11659号。以下「改正公共サービス法」といいます。)が成立しました。改正公共サービス法は、公共サービス事業のうち、外資規制の対象となる公益事業(Public Utility)の範囲を限定することにより、従前は外資規制の対象となっていた事業を外資に開放しました。
改正公共サービス法は、2022年4月7日に施行されています。
(1) 改正公共サービス法における公益事業の範囲
フィリピンにおいては、公益事業に対する外資規制が存在し、公益事業を営む会社に対する外国人の出資比率は40%までとされます(フィリピン憲法12章11条)。
改正公共サービス法の成立前は、公益事業の範囲は解釈に委ねられており、例えば、電気、ガス、水道、輸送、電話、電信等の物品やサービスを継続的に供給する事業は公益事業と解されていました。
これに対し、改正公共サービス法においては、原則として以下の表で掲げる事業のみが公益事業とされています(ただし、フィリピン国家経済開発庁は、一定の基準を満たす公共サービスについて、公益事業に追加するよう国会に提案することができます(改正公共サービス法4条))。
上記表のとおり、公益事業の範囲が限定された結果、通信、海上輸送、航空輸送、鉄道、高速道路、輸送ネットワーク等の事業は、公益事業に該当せず、外資規制の対象から除外されることになります。
なお、通信業その他公共サービスのうち特に重要なものとして大統領が定めるサービスについては、「重要なインフラストラクチャー(critical infrastructure)」として特別な規制が課されており(改正公共サービス法25条)、その運営及び管理については、相互主義(Reciprocity)の要件が課されています。すなわち、重要なインフラストラクチャーについては、フィリピン人に対して同等の取扱いが認められている国の外国人でなければ、過半数を出資することが禁止されます。
(2) 緊急時における出資の制限等
改正公共サービス法においては、緊急時等において、外資による出資等を制限する条項が存在します。
すなわち、国家の安全にかかわる場合には、大統領は、公共サービスを対象とする外資による合併、取得又は投資を停止又は禁止することができます(改正公共サービス法23条)。
また、公益事業に該当しない公共サービスは、フィリピン憲法12章17条及び18条における公益に関係する事業(business affected with public interest)とされ、緊急時において政府が当該事業を一時的に取得若しくは運営の指示を行い、又は、国家の福祉若しくは防衛のために補償金を支払うことにより政府に移管することができます(改正公共サービス法4条)。
さらに、外国政府が支配し、外国政府のために行為し、又は、外国政府が所有する企業については、公益事業及び重要なインフラストラクチャーに対する出資が禁止されます(改正公共サービス法施行前に既に出資している場合には追加の出資が禁止されます。)。ただし、ソブリン・ウェルス・ファンド及び独立した年金ファンドは30%まで公益事業及び重要なインフラストラクチャーに出資することが認められます(改正公共サービス法24条)。
(3) 施行規則(Implementing Rule and Regulation)
改正公共サービス法の施行規則(Implementing Rules and Regulation)は、改正公共サービス法の施行日から6か月以内に制定されるものとされており(改正公共サービス法30条)、引き続き動向を注視する必要があります。
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