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2022.03.25

タイタイ【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第77回「バイオ循環型グリーン(Bio-Circular-Green)経済の進展」
【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第77回「バイオ循環型グリーン(Bio-Circular-Green)経済の進展」
 このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights135号(20223月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇タイ:バイオ循環型グリーン(Bio-Circular-Green)経済の発展

 タイは、2021年以来、バイオ循環型グリーン(Bio-Circular-Green)経済(「BCG経済」)を国家戦略として掲げており、また、同年11月に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)においては、2050年までにカーボンニュートラル、2065年までに二酸化炭素排出量ネットゼロを達成目標とするなど、環境保護や循環型経済への取組みを強化しています。本稿では、タイが国家戦略として掲げるBCG経済の概要及び具体的な施策の内容を概説します。
 
(1) BCG経済の概要
 
 BCG経済とは、バイオ経済(Bioeconomy)、循環経済(Circular Economy)及びグリーン経済(Green Economy)を統合した概念であり、生物資源の利活用、資源の管理・再利用、及び経済発展と天然資源の保護の調和による持続的発展を目指す経済モデルです。このような経済モデルは、国連が提唱する持続的な開発目標(SDGs)の概念とも軌を一にしており、今後重要性を増すものと考えられます。
 
 タイ政府は、BCG経済について、以下の4つの戦略的重点分野を設定しています。
 
(a)農業と食品(Agriculture and Food)
(b)医療及び健康(Medical and Wellness)
(c)バイオエネルギー、生体材料、生化学(Bioenergy, Biomaterial and Biochemical)
(d)観光と創造的経済(Tourism and Creative Economics)
 
 タイ政府は、上記の戦略的重点分野を中心に、BCG経済の進展を図るべく、首相を議長とするBCG政策委員会(BCG Policy Board of Directors)及び高等教育科学研究革新大臣(Minister of Higher Education, Science, Research and Innovation)を議長とするBCGモデル実行委員会(BCG Model Implementation Committee)を設置しており、これらの会議体がBCG経済モデルの推進に関する役割を担っています。
 
(2) 具体的な施策
 
 タイでは、BCG経済の実現に向け、既存法令の改正や新法令の制定等に関する様々な施策が検討されており、例えば、現時点では詳細は不明であるものの、食品医薬品局(Food and Drug Administration)が、リサイクルプラスチックの利用を促進する観点から、食品包装基準の改正を検討しています。また、エネルギー省(Ministry of Energy)は、廃棄物発電(Waste to Energy)やそれにより発電された電力の買取りに関する施策を進めています。

 このほかに、BCG経済に関連する経済活動については、タイ投資委員会(Board of Investment of Thailand)からの投資奨励が取得可能なケースもあり、投資奨励を取得した場合、その内容に応じて、法人税及び機械・原材料・研究開発材料等に関する輸入関税の減免、外資規制の緩和、外国人による土地所有規制の緩和等の恩典を受けることができます。近年の例としては、2020年に、植物工場(Plant Factory)に関する事業が新たに投資奨励の対象となり、5年間の法人税の免除を含む恩典が付与されました。このほか、同年には、投資奨励対象業種のうち、①植物、野菜、果物、花の品質選別、包装、保存、②冷蔵・冷凍倉庫、又は冷蔵・冷凍倉庫及び冷蔵・冷凍運輸、③動物用飼料・飼料成分の製造、④スマートシティ地域・関連システム開発事業等について、高度技術を利用する場合又はISOその他の国際標準規格を取得した場合等に付与される恩典を(そうでない場合と比較して)引き上げる、若しくは投資奨励の取得要件に環境負荷に関する要件を設定するなどの改定も行われています。
 
 以上のとおり、タイにおいては、BCG経済モデルの推進の観点から様々な法令・制度の改正及び策定がなされており、今後同様の動きはさらに加速することが予想されます。これらはタイへの投資及びタイでの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があるため、引き続き最新動向を注視することが必要と考えられます。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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