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2021.12.23

インドネシアインドネシア【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第74回「雇用創出法に対する条件付き違憲無効判決」
【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第74回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights132号(202112月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇インドネシア: 雇用創出法に対する条件付き違憲無効判決

本レターで多数回にわたってご紹介してきた雇用創出法(通称オムニバス法)ですが、インドネシア憲法裁判所は、本年11月25日に雇用創出法を条件付きで違憲無効とする判決(「本判決」)を下し、政府等に対し2年以内の違憲状態の是正を命じました。
憲法裁判所の判決に対しては制度上不服申立てが認められていないため、本判決は確定しています。そこで本稿においては、本判決の概要をご紹介するとともに、今後の実務への影響について触れたいと思います。
 
(1) 判決要旨
 
本判決の要旨は以下の二点です。

(a)雇用創出法の制定は憲法違反であり、インドネシア政府等において本判決より2年以内(2023年11月25日まで)の憲法違反状態の是正(雇用創出法の改正を含む。)を命じる。本判決より2年以内に是正がなされない場合、雇用創出法は確定的に違憲無効で法的拘束力を有しないこととなり、雇用創出法施行以前の法律(旧法)が有効となる。

(b)2023年11月25日までは現在の雇用創出法は暫定的に有効であるが、インドネシア政府は雇用創出法に基づく戦略的又は広範な影響を有する施策の執行を停止し、インドネシア政府による雇用創出法に基づく下位規則の施行を禁じる。
 
なお、本判決に対するインドネシア政府側の反応として、ジョコ大統領より、現在の雇用創出法は(是正措置が講じられずとも本判決から2年間は)引続き有効であり、かつ、現在の雇用創出法の下位規則についても有効である旨の見解が公表されています。
 
(2) 判決理由
 
本判決理由には、雇用創出法の実質的な内容に関する違憲判断よりも、形式的な立法手続上の瑕疵に関する違憲判断が主に記載されています。
具体的には、①雇用創出法という一つの法律により既存の80近くの法律を一括で改正・廃止するアプローチ自体が、法令制定に関する法律2011年12号において想定されている法形式ではないこと、②立法過程における透明性が担保されていなかったこと(実際に公布された雇用創出法が国会で可決された法案から誤植修正されただけでなく一部内容まで変更されたこと、雇用創出法制定過程に公衆の意見が十分に取り入れられなかったこと等)が詳細に記載されています。
 
(3) 実務への影響
 
ジョコ大統領第2期政権の重要施策である雇用創出法がこのような形で違憲判断を受けてしまったことは想定外の出来事であり、本判決により、インドネシア投資に関する不確実性は高まったといえます。
他方で、インドネシア政府としても、憲法裁判所の判断は尊重し、現状を是正するために必要な措置をとることを表明していることや、現在の雇用創出法も是正措置が講じられずとも本判決より2年間は有効であるため、当面の間は、これまで通り、現在の雇用創出法及び下位規則に従った実務が続くように思われます。
もっとも、雇用創出法を実施するための細則を定める下位規則を制定できないことによる支障は投資実行等の際に支障になり得る可能性もあり、インドネシア政府がどのようなステップとスピード感をもって本判決で指摘された是正に取り組むかという点については、現時点では必ずしも全容までは明らかになっていないため、今後の動向について引き続き注視する必要があります。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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