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2021.09.21

インドインド【インド】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第71回「インド不動産法制の特徴(日本との比較も交えて)」
【インド】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第71回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights129号(20219月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇インド:インド不動産法制の特徴(日本との比較も交えて)

インドでは、昨年以降、新型コロナウイルスが猛威を振るい、一時期は、毎日の新規感染者が数十万人規模に達する感染爆発やそれに伴うロックダウン(都市封鎖)によって、経済活動に深刻な影響を見られたことは記憶に新しいところです。もっとも、最近では、新規感染者が減少し、経済に関して明るい話も見られます。このような状況下、インドへの投資活動を検討している日系企業もあると思われますが、本稿では、様々なインドの法律分野の中でも特に理解が難しいといわれることがあるインドの不動産法制について、日本の不動産法制との比較を織り交ぜながら、簡単にご紹介します。
 
(1) 土地に関する権利
 
日本では、土地に関する権利として、所有権と賃借権が思い浮かぶところですが、インドでは、土地に関する権利としては、freeholdとleaseholdが一般的です。
freeholdは、当該土地に対する完全な法的所有権であり、日本の所有権と同じであると考えることができます。
これに対して、leaseholdは、一定期間賃貸人との間で締結されるリース契約に基づき、排他的に当該土地を占有し使用することができる権利です。当事者間の合意により権利の内容が定まるという意味では日本の賃貸借に近い要素があります。他方、インド法上、リースホールドは「right in rem」(第三者に対して権利を主張できる権利)であると考えられています。単なる債権的な権利ではなく、日本法でいうところの物権的性格を合わせ持つ権利であることから、「期間制限付きの所有権」という言い方も可能であるように思われます。
 
(2) 不動産登録制度
 
日本における不動産登記制度では、法務局に対して届け出る対象は、いわゆる登記事項(不動産の権利関係と物理的現況に関する一定の事項)であり、それが登記簿に記載され公示されるという仕組みが採られています。不動産の登記は義務ではありません(ただし、相続の登記を除きます。)。また不動産の所有権の移転に関して、当事者間の合意により所有権が移転する(意思主義)一方、第三者との関係で権利を主張するには登記の具備を必要とするという考え方(対抗要件主義)が採られています。
これに対し、インドにおける不動産登録制度では、当事者間で作成された不動産に関する取引文書(例えば、不動産譲渡証書(sale deed)や不動産賃貸借証書(lease deed))が登録所へ提出され、その正本又は謄本が年代順に編綴される仕組みが採られています。具体的には、100インドルピー(現在の為替レートで約150円)以上の価値を有する不動産上の権利の譲渡・発生・消滅に関する取引や1年以上の期間の定めのある不動産賃貸借に関する取引文書について登録義務があります。これらの取引文書の登録は、当該取引の効力発生要件であり、登録がなければ、当事者間でも当該取引は無効です。また、登録されていない取引文書は、訴訟において証拠として認められず、当該契約は執行することができません。
以上について日本の不動産登記制度との違いをまとめると以下のとおりです。
 
  インド 日本
 登録/登記の対象  一定の不動産取引に関する「文書」  不動産の権利関係と物理的現況に関する「情報」
 登録/登記の義務  一定の不動産の取引文書は義務 (相続登記を除き)義務ではない
 登録/登記の効果  効力発生要件  対抗要件
 
(3) 不動産に関連する外資規制の概略
 
不動産に関連する外資規制については、国によりその内容は様々ですが、一般的に2つのカテゴリに分けることができます。不動産の「取得・利用」に関する外資規制と不動産に関連する「事業」に関する外資規制であり、インドについてもこの2つの観点から見ることが有用です。
前者の不動産の「取得・利用」に関する外資規制に関して、インドでは、インド非居住者による不動産の取引は原則として禁止されます(ただし、5年以下の期間の賃借権取引を除きます。)。もっとも、インド居住者は、原則として自由に不動産の取引を行うことができるとされています。
不動産に関連する「事業」に関する外資規制については、インド法上、不動産業(real estate business)に対する外国直接投資が全面的に禁止されています。もっとも、建設開発プロジェクト(construction-development project)というカテゴリに該当する場合には、一定の条件の下で、自動ルートで、外資による出資が100%まで可能です。
 
最後に、本稿の内容を含め、弊事務所のインド・プラクティスグループにおける不動産案件の豊富な経験とノウハウに基づき、インドの不動産法制及び実務を理論面と実践面から総覧的にまとめた書籍が「インド不動産法制-理論と実践:不動産に関連する法制度一般から合弁・M&A等のプロジェクトまで」(川村隆太郎編著、株式会社商事法務、2021年4月)です。本書の発刊を祈念して、小山洋平弁護士及び川村隆太郎弁護士にて、インド不動産法制に関するウェビナーを全4回シリーズで近日中に随時リリースして参ります。ぜひご活用いただけますと幸いです。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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