2021.06.23
- その他のアジア【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第68回『小売事業の外資規制の緩和の動向』
- 【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第68回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第126号(2021年6月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇フィリピン:小売事業の外資規制の緩和の動向
2021年5月19日、フィリピンの上院(Senate)は、小売事業の外資規制を緩和する法案(Senate Bill 1840)を決議しました。下院(House of Representative)においては、既に2020年3月に小売事業の外資規制を緩和する法案(House Bill 59)が決議されており、今後は、上院の法案と下院の法案を統合した法案が作成され、大統領の署名を経て成立することになります。
現行法においては、小売事業自由化法(The Retail Trade Liberalization Act of 2000)により、外資企業がフィリピンで小売事業を営むためには、一定の最低払込資本額の要件や外国小売業者の要件、株式公開要件を満たす必要があり、厳しく制限されていましたが、上院と下院で決議された法案は、いずれも小売事業の外資規制を大きく緩和するものであり、フィリピン進出を検討する小売業者にとって重要な法案といえます。
特に外国小売業者の要件と株式公開要件が撤廃されることは、小売業の外資規制を大きく緩和する内容といえます。
もっとも、上院で決議された法案(Senate Bill 1840)は、下院で決議された法案(House Bill 59)と比べると、ややトーンダウンしており、1店舗当たりの投資額の要件(原則として2店舗以上営む場合)が、2,500万フィリピンペソ(現在の為替レートで約5,750万円)という金額で維持されたことは、今後も障害となる可能性があります。
現行法、上院の法案(Senate Bill 1840)、下院の法案(House Bill 59)における主な違いは以下に記載のとおりです。
(1) 最低払込資本額の変更
(2) 外国小売業者(Foreign Retailer)の要件
(3) 株式公開の要件
株式公開要件(小売事業を営む現地法人に対する外資の出資比率が80%を超える場合、事業開始から8年以内に最低30%の株式を市場において公開する必要)は、上院及び下院のいずれの法案においても撤廃。
上記のとおり、上院の法案と下院の法案とは異なる点があり、最終的な法案はまだ確定していませんが、いずれにせよ小売事業の外資規制が大きく緩和される方向で進んでいることには変わりなく、今後の動向に注目する必要があります。
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作