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2021.09.06

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第54回「出前の食品に異物の混入を発見した場合は誰を被告とすべきか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第54回
『出前の食品に異物の混入を発見した場合は誰を被告とすべきか』

張さんは出前サイトに計800 元の昼食の出前を注文した。食事中に異物を発見したので、当該出前サイトを訴え、800 元の返金及び10 倍の賠償金を請求した。しかし、当該出前サイトは、「食べ物は店舗が張さんに販売したもので、出前サイトとは無関係である。出前サイトは店舗の情報、営業資格などを厳格に審査して合理的な審査義務を尽くし、かつ店舗の実名などの情報を張さんに提供したので、責任を負う義務はない。」と主張した。

『分析』:

『中華人民共和国消費者権益保護法』第44 条には、「消費者はオンライン取引プラットフォームにより商品を購入、又はサービスの提供を受けるときに合法的権益が損なわれた場合、販売者又はサービス提供者に賠償を要求することができると規定している。

オンライン取引プラットフォーム提供者が販売者又はサービス提供者の真実の名称、住所、有効な連絡先を提供できない場合は、消費者はオンライン取引プラットフォーム提供者に賠償を要求することもできる。オンライン取引プラットフォーム提供者は消費者に対してより有利な条件を示した場合、条件通りに実施するものとする。

オンライン取引プラットフォーム提供者は賠償を行った後、販売者又はサービス提供者に求償する権利がある。オンライン取引プラットフォーム提供者は、販売者又はサービス提供者が当該オンライン取引プラットフォームを利用して消費者の合法的権益を侵害したことを知っている、又は知るはずであり、必要な措置を講じない場合は、法に従い当該販売者又はサービス提供者と連帯責任を負う。」と規定している。

『食品安全民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(一)』第3 条には、「電子商取引プラットフォーム経営者がプラットフォーム内の食品経営者について実名登録と許可証審査を行わず、又は報告、オンライン取引プラットフォームサービスの停止等の義務を履行せず、消費者の合法的権益を損ない、これによって消費者が電子商取引プラットフォーム経営者に対してプラットフォーム内の食品経営者と連帯責任を負うよう主張する場合、人民法院は消費者の主張を認めるべきである。」と規定している。

上述の規定及び契約の相対性からみて、オンライン取引プラットフォーム上の店舗は消費者と取引契約関係を構築した相手方であるため、被告となる。但し、特殊な状況下で、オンライン取引プラットフォームは被告として責任を負う可能性もある。

消費者と比べ、オンライン取引プラットフォームが情報の優位性を有し、当該オンライン取引プラットフォーム上で事業運営を行える店舗に対して一定の支配力を有するので、消費者を保護するために、法律ではオンライン取引プラットフォームの義務を定めた。例えば、オンライン取引プラットフォームは消費者に対して、オンライン取引プラットフォーム上の販売者又はサービス提供者の真実の名称、住所、有効な連絡先を提供する義務を負う。特に食品経営に係るオンライン取引プラットフォームは食品経営者に対して実名登録、許可証審査、報告、規定に合致しない場合にオンライン取引プラットフォームサービスを停止する等の法定義務を負う。

オンライン取引プラットフォームがそれらの義務を履行せず、又はオンライン取引プラットフォーム上の店舗が消費者の権益を損なったことを知っていながら、措置を講じない場合に、被告として相応の法律責任を負う可能性もある。
 

本件において、最終的に裁判所は、「店舗がオンライン取引プラットフォーム上に事業運営を行う前に、出前サイトは当該店舗の営業資格などに対して合理的かつ必要な審査義務を尽くしており、当該店舗の真実の身分を公表できる。」と認定し、張さんの請求を全て棄却した。

消費者はオンライン取引プラットフォームにより商品を購入し、又はサービスの提供を受けるときに紛争が起こる場合は、まず店舗と協議して解決するべきであり、店舗の連絡先を知らない場合は、オンライン取引プラットフォームに公表を要求する権利がある。オンライン取引プラットフォームが店舗情報を提供できない場合は、消費者はオンライン取引プラットフォームに対して賠償を要求することができる。又、出前に異物の混入を発見した場合は、関連ビデオ、写真、異物原物などを保存するとともに、オンライン取引プラットフォーム及び店舗とのチャット履歴などを保留する、つまり、権利保護の過程で関連証拠を保存するべきである。
 

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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