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2021.08.30

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第53回「実行すべきセクハラ防止対策」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第53回
『実行すべきセクハラ防止対策』

 『民法典』の施行前、中国の『女性権益保障法』、『治安管理処罰法』、『女性従業員労働保護特別規定』等の法令では、セクハラ禁止及びセクハラによる法的責任を定めた。但し、証拠調べや責任追及が難しく、隠蔽性が高く、被害者が名誉毀損、報復を心配し、最終的に被害を訴えないので、セクハラ事件は多発し、かつセクハラ加害者に責任を追及することが難しい。

 当該問題を解決するために、『民法典』は現行の立法及び実務経験に基づいて、第1010 条において「他人の意思に背き、言語、文字、画像、身体的行為などの方式で、他人に対してセクハラを行った場合、被害者は法に従い行為者に民事責任を負わせることを請求する権利がある。機関、企業、学校などの組織は合理的な予防、苦情申立の受理、調査処分などの措置を講じ、職権、従属関係を利用したセクハラを防止、制止しなければならない。」ことを定めた。
 
『分析』:
 司法実務において、セクハラに対して認定、処罰を行うために、上述の『民法典』の規定では、セクハラの認定基準、表現形式、法的責任を明確にするとともに、機関、企業、学校などの組織(以下「組織」と総称する)のセクハラ防止・制止義務を定めた。

 組織が『民法典』で定められた義務を如何に履行するかについて、2021 年3 月24 日、深セン市婦人連合会、深セン市教育局、深セン市公安局、深セン市人力資源・社会保障局、深セン市総工会等9 つの部門は共同で『深セン市セクハラ防止ガイドライン』(以下『ガイドライン』という)を公布し、率先して『民法典』第1010条の規定に応えた。これは組織がセクハラ防止に取り組む根拠、方針のみならず、全国においても重要なヒントや参考になる。

 『ガイドライン』に基づき、組織はセクハラ防止において、以下のポイントに重点を置いて進めるべきである。

一、セクハラに対する容認ゼロの姿勢を明確に示し、組織がセクハラ防止の環境をつくる。
 セクハラを厳正に防ぐ姿勢、セクハラ防止に対する重視は、抑制効果が著しく大きいからである。又、セクハラ行為者に乗ずるすきを与えないために、事務所などの設置において、公開性、開放性、透明性の原則を考慮し、プライバシー・閉鎖性を抑えるべきである。

二、セクハラ防止制度を制定し、組織内のセクハラ防止を規範化、制度化する。
 セクハラ防止制度を制定するときに、組織の実状を考慮するとともに、セクハラの範囲、構成、セクハラに該当する行為、内部苦情申立手続、相応の懲戒措置などを織り込むべきである。

三、セクハラ防止の宣伝、教育を展開し、セクハラ防止意識を向上する。
 説明、標識、電子看板、教育などの方式を利用してセクハラ防止を宣伝し、ホットラインを設置し、セクハラに対する認識、証拠収集・保存の能力を高める。

四、セクハラ防止部門を設置し、セクハラ被害のコンサルティング、苦情申立、処理を行わせる。
 セクハラ防止部門は被害者、苦情申立人を公開せず、秘密を守り、かつ被害者、苦情申立人が苦情申立、証拠提供、内部通報により報復を受けないことを確保するべきである。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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