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2021.05.24

その他のアジア【ASEAN】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第67回『RCEPの国会承認』
【ASEAN】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第67回
  このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights125号(20215月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇ASEAN:RCEPの国会承認

 日本は、日本、ASEAN10か国、中国、韓国、豪州及びニュージーランドが2020年11月15日に署名した包括的な経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership:「RCEP」)に関する国会承認手続を2021年4月28日に完了しました。RCEPは、世界の人口、GDP及び貿易総額の約3割を占める世界最大の経済連携協定(Economic Partnership Agreement:「EPA」)であり、締約国の貿易・投資等に重要な役割を果たすことが期待されています。本稿では、本年中の発効を目指しているRCEPのうち物品及びサービスの貿易に関する規定の概要をご紹介します。
 
(1) 関税の撤廃、統一的な原産地規則、原産性証明制度
 
 RCEPは、日本の貿易総額の約5割を占める国々をカバーする経済的なインパクトの大きな協定です。日本からの輸出については、14か国全体で最終的に約92%の関税撤廃が実現されます。なお、RCEPは日本の最大の貿易相手国である中国及び第3位の韓国との間の初めてのEPAであり、中国及び韓国における無税品目の割合が大きく上昇する点(中国は8%から86%、韓国は19%から92%)が日系企業への大きなメリットです。

 RCEPを含むEPAでは、締約国からの輸出品であれば全て当該協定上約束されている撤廃又は削減された関税率の適用を受けることができるわけではなく、原産品となるための要件及びその証明方法を規定する原産地規則を満たす原産品のみが適用対象になります。もっとも、RCEPでは15か国で共通の原産地規則が採用されており、他の締約国の原産材料を自国の原産材料とみなすことを可能にする「累積」制度が導入されているため、事業者は15か国をまたいでサプライチェーンを効率的に構築することができます。このように、15か国から成る巨大な市場において、より柔軟なサプライチェーンを用いて有利な関税率で輸出入を行うことができることがRCEPの大きな意義の一つです。

 なお、日本はRCEP署名国のうち中国及び韓国以外の国とは既に別途発効済みのEPAを有しており、それらの国との間の輸出入に関していずれのEPAを利用するかは事業者が自ら選択することが可能であり、自社にとって最も有利なEPAを選んで活用することができます。

 原産性の証明方法については、日本が近時締結したTPP11協定や日EU・EPAでは輸出者、生産者又は輸入者による自己証明制度(対象となる産品が原産品であることを輸出者、生産者又は輸入者が自ら作成する書類によって証明する制度)のみが認められているのと異なり、RCEPでは第三者証明制度(日本商工会議所が原産地証明書を発行する制度)及び認定輸出者自己証明制度(一定の要件を満たし認定輸出者として事前に登録された事業者が、自らインボイス等の書面に原産品である旨を記載する証明制度)が採用されています。なお、日本への輸入については、これらの証明方法に加えて、輸入者による自己証明制度を導入することが可能とされています。
 
(2) サービス貿易に関する規定
 
   RCEPでは、WTOサービス貿易協定(GATS)やRCEP署名国との間の日本の従前のEPAでは規定されていないサービス貿易分野での約束が含まれている分野もあり、日系企業の海外進出における法的安定性及び予見可能性が高められています。例えば、以下のような約束がなされています。
 
 インドネシア  先端技術を活用するプロジェクト等を対象としたエンジニアリング・サービスについて外資出資比率の上限を51%とする
 タイ  海運貨物取扱サービスについて外資出資比率の上限を70%とする
 中国  生命保険及び証券サービスについて外資出資比率に関する規制を行わない
 フィリピン  居住用の不動産の賃貸・管理サービスについて外資出資比率の上限を51%にする
 ミャンマー  公告サービスについて外資出資比率に関する規制を行わない
 ラオス  国内道路貨物運送サービスについて外資出資比率に関する規制を行わない
 
 このほか、15か国に共通して適用される規定として、金融サービスに関して、自国の法令に従ったデータの管理・保管やシステムの維持等を要求することを除き、金融サービス提供者の業務上必要な情報の移転及び処理を妨げる措置をとること等が禁止されています。また、電気通信サービスについては、他の締約国のサービス提供者が合理的で、差別的でなく、透明性が確保された状態で適時に公衆電気通信ネットワーク等へのアクセス及び利用を認められることを確保する義務等が設けられています。これらの規定により、より安定した環境でRCEP締約国での事業を行うことが可能になります。
 
(3) RCEPの発効要件
 
   RCEPは、(a)ASEAN10か国の過半数及び(b)日本、中国、韓国、豪州及びニュージーランドの過半数が国内での承認手続を完了し、寄託者であるASEAN事務局長に寄託してから60日後に発効します。本稿執筆時点では、日本、中国、タイ及びシンガポールが国内手続を完了しています。RCEP署名国は早期の発効を目指して締結手続を進めているため、RCEPは早ければ年内にも発効することが見込まれています。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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