2025.11.06
- 【フィリピン】弁護士法人One Asia/第68回「投資家リース法改正によるリース期間の99年間への延長」
- 【フィリピン】弁護士法人One Asia/第68回「投資家リース法改正によるリース期間の99年間への延長」
-
◇フィリピン
Ⅰ.概要
フィリピンは、東南アジアにおける重要な投資先としての地位を確立する上で大きな一歩を踏み出しました。共和国法第12252号(Republic Act No. 12252)が成立し、これは共和国法第7652号「投資家リース法(Investors' Lease Act)」を改正するものであり、フィリピンは外国投資家による長期土地リースの枠組みを大幅に自由化しました。この法律は単なる改正にとどまらず、フィリピンが産業を大きく開放し、安定的で、安全、そして長期的な投資の可能性を外国資本に提供することを世界市場に強く示すものといえます。
東南アジアへの事業拡大を検討する外国企業にとって、この新しい法律は、投資先を判断するうえで最も重要な要素の一つである「事業用私有地の長期的な支配と安全性」の要求に対応するものです。

Ⅱ. 変更点:99年間のリース期間
本法の中心的な内容は、民間土地に関する最長リース期間を従来の50年間(最大25年間の更新可能)から、単一で途切れることのない最長99年間へと延長することです。
この長期化は大きな転換点といえ、99年間のリース期間は投資家に世代を超える時間軸を提供し、次のような利点をもたらします。
1. 長期的戦略の策定:企業は中途で更新交渉が必要になる不確実性に悩まされることなく、長期計画を策定・実行できるようになります。
2. 投資回収の可能性:完全外資が認められる分野における資本集約型プロジェクトについて、投資のライフサイクル全体に対する確実な見通しのもと、計画することができます。
3. 法的手続の簡素化:99年間の単一リース期間により、更新に伴う複雑な法的・行政的手続が不要となり、長期的なコストと不確実性が削減されます。
ただし、財務優遇審査委員会(FIRB)その他の関係政府機関の勧告に基づき、大統領は、国家安全保障上の観点や、政府が特定した国家開発上の優先事項に従い、重要なサービス又は重要インフラとみなされる産業に従事する投資家に対する賃借期間を短縮すること場合がありますので、ご留意ください
Ⅲ. 投資の保護と金融適格性の強化
延長された期間に加え、本法は投資を保護し、その財務的な実現可能性を高める強力な法的仕組みを取り入れました。
A. 登記による保護
新設された第4-A条は「登記の第三者効(Operative Act of Registration)」を定めています。長期賃貸借契約を、大統領令第1259号(改正後)の規定に従い州又は市の登記所に登録すれば、その契約は第三者に対して法的に拘束力を持ちます。
そのため、一旦登録されれば、賃貸借契約は「間接的な争い」(collateral attack)にさらされることはありません。つまり、その有効性は別の法的手続を通じて間接的に争うことはできず、正式かつ直接的な法的手続によって争わなければなりません。
B. 流動性と金融資産としての活用
改正法は、長期賃貸借で取得された賃借権を売却、譲渡、移転し、あるいは融資の担保とすることが可能であることを明確にしました。ただし、買主、譲受人、譲渡人又は債権者が外国人又は外資系企業である場合には、本法律に基づき定められた当該賃貸物件の使用に関する条件及び制限が引き続き適用されます。
これは投資家にとって極めて重要な変化であり。賃借権が単なる事業運営上の権利から、実質的な資産に転換したと捉えることができます。
Ⅳ. 明確かつ効率的な投資枠組み
本法は単に権利を付与するだけではなく、それを取得するための明確で予測可能かつ公正な手続を定めました。99年間の賃貸借を利用するためには、外国投資家は特定の条件を満たし、この枠組みが真に生産的な企業に利益をもたらすことを保証する必要があります。
主な要件は以下のとおりです。
1. 登録された投資であること:投資家は、外国投資法(共和国法第7042号)、CREATE法及びCREATE MORE法(それぞれ共和国法第11534号及び第12066号)などの関連するフィリピン法の下で承認された投資を有するか、又は適切な投資促進機関(IPA)が定める投資要件に従っていなければなりません。
2. 合目的性:賃借地は登録された投資プロジェクトの目的のためだけに使用され、国家開発目標に合致していなければなりません。
3. 正式な登録:賃貸借契約は正式に登録され、期間、土地の技術的記述、事業が開始されない場合の終了条項が明記されていなければなりません。
これらの条件により、投資家に対して不透明さがなく、透明な手続、要件が提供され、参入プロセスが効率化されました。
Ⅴ. 最後に
共和国法第12252号は、東南アジア地域において外国投資家にとって最も魅力的かつ安全な法的枠組みの一つを創出する、フィリピン政府による戦略的な施策です。最大99年間の賃貸借期間を提供し、強固な法的保護を与え、賃借権の金融適格性を確保することで、フィリピンは世界の資本に対して積極的に歓迎の姿勢を示しています。
本法により、数十年にわたる大規模投資に不可欠な長期的安定性と安全性を提供されました。
東南アジアにおいて大規模な拠点を構築しようとする企業に対し、フィリピンは、その投資価値を、これまで以上に明確で説得的に示しているといえ、今後フィリピン投資を検討する際に極めて重要な考慮要素となるでしょう。
---------------------------------◆ One Asia Lawyers ◆---------------------------------「One Asia Lawyers Groupは、アジア全域に展開する日本のクライアントにシームレスで包括的なリーガルアドバイスを提供するために設立された、独立した法律事務所のネットワークです。One Asia Lawyers Groupは、日本・ASEAN・南アジア・オセアニア各国にメンバーファームを有し、各国の法律のスペシャリストで構成され、これら各地域に根差したプラクティカルで、シームレスなリーガルサービスを提供しております。
この記事に関するお問い合わせは、ホームページまたは までお願いします。
なお、本ニュースレターは、一般的な情報を提供することを目的としたものであり、当グループ・メンバーファームの法的アドバイスを構成するものではなく、また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当グループ・メンバーファームの見解ではございません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず各メンバーファーム・弁護士にご相談ください---------------------------------◆ One Asia Lawyers ◆---------------------------------(ご参考)
本ニュースレター(2025年10月3日号)
Newsletter-Republic-Act-No.-12252-v2October2025-jp.pdf
〇第65回 【シンガポール】「シンガポールにおける仲裁」
〇第66回 【ベトナム】「2025年上半期のベトナムにおける法改正まとめ ②」
〇第67回 【インドネシア】「電子的統合事業許可システム(Online Single Submission)を通じた、リスクベースの事業許可及び投資促進優遇措置の実施についての指針及び手続に関する投資・下流化大臣/投資調整庁長官規則2025年5号の施行」
弁護士法人One Asia|One Asia法律事務所 福岡オフィス
- 【掲載元情報】
- 弁護士法人One Asia|One Asia法律事務所 制作





