2025.11.06
インドネシア【インドネシア】弁護士法人One Asia/第67回「電子的統合事業許可システム(Online Single Submission)を通じた、リスクベースの事業許可及び投資促進優遇措置の実施についての指針及び手続に関する投資・下流化大臣/投資調整庁長官規則2025年5号の施行」- 【インドネシア】弁護士法人One Asia/第67回「電子的統合事業許可システム(Online Single Submission)を通じた、リスクベースの事業許可及び投資促進優遇措置の実施についての指針及び手続に関する投資・下流化大臣/投資調整庁長官規則2025年5号の施行」
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◇インドネシア
1.はじめに
2025年10月1日、インドネシアの投資・下流化省及び投資調整庁は、電子的統合事業許可システム(Online Single Submission/OSS)を通じた、リスクベースの事業許可及び投資促進優遇措置の実施についての指針及び手続に関する同大臣及び長官規則2025年5号(「BKPM 5/2025」)を制定し、翌10月2日に公布しました。
本規則は公布と同時に施行され、従前同様の点を定めていたBKPM規則2021年第4号(「BKPM 4/2021」)は廃止されました。BKPM 5/2025は、上位規範であるリスクベース事業許認可の実施に関する政府規則2025年第28号(「GR 28/2025」)を受けて、同規則の施行規則として施行されたものであり、事業許認可手続の簡素化、行政負担の軽減、および外国直接投資(FDI)の促進を目的としています。

2. 基本的な枠組み
BKPM 5/2025は下記の内容を定めております。基本的にはGR 28/2025の施行規則として同規則の詳細を定めるものであるともに、後述の最低払込済資本額の減額等、非常に重要な規定も含んでおります。
(1)総則(第1章)
(2)適用範囲(第2章)
(3)リスクベースの事業許可に関する規定(第3章)
(4)基本要件(第4章)
(5)事業許可(第5章)
(6)事業活動を補完するための事業許可(第6章)
(7)その他のリスクベースの事業許可に関する規定(第7章)
(8)投資促進サービス(第8章)
(9)その他の許認可(第9章)
(10)リスクベースの事業許可に関する監督(第10章)
(11)電子統合事業許可システム(オンライン・シングル・サブミッション)(第11章)
(12)取消及び撤回(第12章)
(13)制裁(第13章)
(14)特定状況下におけるリスクベースの事業許可サービス
(15)倫理規定(第15章)
(16)その他の規定(第16章)
(17)経過規定(第17章)
(18)最終規定(第18章)
3. 最低払込済資本金の引下げ
BKPM 5/2025により、外国投資会社(「PMA」)が会社の設立時点で払込む必要のある資本金の額が、2021年以前の水準である25億ルピアに引き下げられました(26条10項)。この変更は、特に中小規模の外国投資家にとって参入障壁を下げるものであり、外国直接投資の促進策と位置づけられています。
ただし、当該引下げが、BKPM 5/2025施行前に設立されたPMAで、従前の最低払込済資本金額である100億ルピアを満たしていない会社に適用されるのか否かは現状では明確になっておりません。こちらに関しては、今後の運用を注視する必要がございます。
4. 最低投資金額の取扱い
従前のBKPM 4/2021では、PMAの最低投資金額は、KBLI(インドネシア事業分類コード)の5桁番号および事業ロケーションごとに土地・建物を除く100億ルピア超と定められていました。
BKPM5/2025はこの原則を維持しつつも、下記の業種について土地および建物の価値を最低投資金額の算定に含めることを認める(第26条第5項)新しい枠組みを導入しております(26条5項)。
・不動産開発(建設、販売、賃貸を含む)
・短期
・長期宿泊施設の提供
・農業
・プランテーション(農園)
・畜産
・水産養殖
これにより、土地や建物を保有または賃借する資本集約型の産業分野では、投資額要件の充足が容易になり、投資実施の柔軟性が高まりました。
5. 払込資本金の維持義務
BKPM 5/ 2025は、新たに払込資本金の12か月間の維持義務を導入しました。すなわち、PMA設立時に払い込まれた資本金は、以下の場合を除き、払込日から12か月間は引き出しまたは移動できない旨が規定されております(27条1項)。
・資産購入
・建物建設
・事業運営上の支出
この義務を遵守するため、投資者は事業許可申請時に「資本金を移動しない旨の誓約書(Surat Pernyataan)」をOSSシステム上で提出する必要があるとされております(27条2項)。
これに違反した場合、BKPMは警告書の発行、事業停止、行政罰金、または事業許可の取消といった行政制裁を課すことができます(27条4項)。
この規定は、払込資金が実際にインドネシア国内で事業運営に活用されることを確保するための措置とされています。
6. 経過規定
BKPM 5/2025は下記のようにかなり多くの経過規定を置いております。インドネシアにおいては、過去数年の間にライセンスを包括的に管理するOSSシステムや、リスクベースのライセンスシステム等、大規模なシステムの変更が行われてきたところ。上記経過規定は各変更前後にライセンスの取得や申請を行った当事者の権利義務を整理する点に趣旨があると考えられます。下記のようにPMAを対象とした規定もあるため、日系企業にとっても非常に重要な規定である一方で、条項によっては内容が必ずしも明確でないため、今後の運用を注視する必要がございます。
・既存のアクセス権の切り替え(388条)
・既存のリスクベース許可の有効性(389条)
・リスクベースシステム導入前の既存許可(390条)
・失効済み許可・未発効許可の扱い(391条)
・申請中案件の取扱い(392条)
・KBLIの改訂対応(393条)
・例外規定(394条)
・外資企業PMAに関する経過措置(395条)
・PB・PB UMKUの有効期間更新(396条)
7. 結論
BKPM 5/2025は、GR 28/2025と共に、インドネシアの投資制度改革における重要な意義を持つ規則となります。上記のように、最低払込済資本規制、資本金維持義務、最低投資額規制等、既インドネシアの日系企業はもちろん、これからインドネシアへの進出を考えている企業にとっても非常に重要な内容を規定しております。
他方で、内容が広範かつ複雑であるため、条文の文言のみからでは内容の把握が難しい点もございます。
実際の対応に当たっては、当地の法律事務所等に相談を行いつつ進めることが推奨されます。
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本ニュースレター(2025年10月15日号)
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