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2020.04.24

タイタイ【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第54回『COVID-19に関連する通知等』NEW
【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第54回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国の新型コロナウイルス(「COVID-19」)に関連するリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights109号(20204月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇タイ:COVID-19に関連する通知等

①:COVID-19の影響による事業閉鎖の場合の従業員への賃金支払い
 
2020年3月22日以降、タイ政府のCOVID-19への拡大防止措置により、多くの営業施設(教育機関、娯楽施設、健康施設、ショッピングモール等)は一時閉鎖を余儀なくされています(現時点では、2020年4月末まで閉鎖)。また、その他の企業においても、COVID-19への対策として、工場の閉鎖、勤務時間の短縮又は自宅勤務等を実施又は検討しており、多くの企業が従業員への賃金の支払いに関する問題に直面する状況に至っています。そこで、このような場合における、使用者の賃金支払義務及び社会保障について、概要をご説明します。
 
(1) 使用者の賃金支払義務
 
タイ労働法上は、基本的に、労働者は、労働の対価として賃金を得ることができるとされていますが(ノーワーク・ノーペイの原則)、使用者が「不可抗力(force majeure)」に当たらない、使用者の事業に影響を及ぼし、使用者が通常通り事業を行うことができない「重大な事由(significant cause)」により事業の全部又は一部を閉鎖する場合には、使用者は、労働者に対して、閉鎖時点の賃金の75%を支払わなければならないとされています(Labour Protection Act B.E. 2541 (1998)(労働保護法)75条)。一方で、上記のような「重大な事由」が存在しないにもかかわらず事業の全部又は一部を閉鎖した場合には、使用者は賃金の全額を支払わなければなりません。しかし、2020年3月18日に労働福祉局(Department of Labour Protection and Welfare)から発行されたガイドライン(Practice Guidelines of the Ministry In Case of Closure of Places of Business as Ordered by Provincial Governors, Read Clause 3:「本ガイドライン」)によると、行政による営業停止命令に基づき事業閉鎖を余儀なくされた場合、使用者及び労働者のいずれの過失によるものでもないため、事業遂行を不可能にする「不可抗力」に該当するものと考えられ、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されると説明されています(本ガイドライン3条)。また、自主的な一時的な事業閉鎖であっても、テレワーク等の手段を通じて従業員に仕事を与えることができない場合には、「重大な事由」に該当するため、事業閉鎖の少なくとも3営業日前までに従業員及び労働検査官(Labour Inspector)に対して書面通知を行うことを条件として、通常賃金の75%以上を従業員に対して支払えば足りると説明されています(本ガイドライン4条、労働保護法75条)。ただし、本ガイドラインは、法令ではないため、これと異なる裁判所による判断がされる可能性がある点には留意が必要であり、また、使用者がどの範囲で賃金の支払を行うべきかについては個々の状況に応じて慎重な判断が必要となります。
 
 使用者の賃金支払義務
 1  管轄当局の命令に従った事業閉鎖の場合  賃金の支払義務なし
 2  自主的に事業閉鎖を行う場合であり、かつ、テレワークが不可能な場合  賃金75%以上の支払義務あり
 3  自主的に事業閉鎖を行う場合であり、かつ、テレ  ワークが可能な場合  賃金100%の支払義務あり
 
(2) 社会保険制度に基づく補償
 
また、管轄当局の命令による事業閉鎖等により、賃金の全額を受領できない労働者及び雇用関係が終了した労働者のために、一定の補償がなされることが発表されています。詳細は2020年3月31日の閣議決定により、以下のように定められています。なお、本件に関する正式な労働省令はいまだ発布されていないため、引き続き、今後の状況を注視する必要があります。
 
 
 事業閉鎖等により勤務できない場合
 1  感染者と接触し、14日間隔離する必要があり、使用者の命令により勤務できない場合  賃金の62%補償  最大90日分
 2  管轄当局の命令による事業閉鎖  賃金の62%補償  最大90日分
 事業閉鎖により雇用関係が終了した場合
 1  自主退職  賃金の45%補償  最大90日分
 2  解雇  賃金の70%補償  最大200日分
※上記の「賃金」は社会保険法に従い最大1万5,000バーツ(現在の為替レートで約4万9,383円)までとして、上記の比率にて補償額が計算されることになります。
 
②:COVID-19の影響による公開会社の定時株主総会延期に関する通知
 
2020年3月31日、Securities and Exchange Commission(証券取引委員会、SEC)は上場会社の定時株主総会開催の延期に関する通知(「本通知」)を発布しました。
本通知によると、定時株主総会の開催延期を決定した上場会社は、開催延期に関する登録を行った上、定時株主総会開催後、2020年3月4日付けで商務省事業開発局(Department of Business Development, Ministry of Commerce)が発布した、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、合理的理由による定時株主総会の遅延の説明文書提出」に関する通知に従った説明文書の提出を要請されています。
タイ法上、上場会社を含む公開会社は、貸借対照表の基準日後4か月以内に、会計監査人による監査済み貸借対照表及び損益計算書(「財務書類」)の承認を定時株主総会で受けなければならないとされています。しかし、非常事態宣言発令後、タイでは多くの活動が規制されており、既に多くの上場会社が本通知に基づき開催の延期を登録している状況にあります。
 
③:COVID-19の影響による財務書類の提出期限延長に関する通知
 
2020年3月25日、商務省事業開発局(Department of Business Development, Ministry of Commerce)は、COVID-19の感染拡大に伴い、財務書類の提出期限の延長に関する通知(「本通知」)を発布しました。
本通知によると、対象は限定的ではありますが、タイで事業を行う海外で設立された会社(例えば、海外法人の支店や駐在員事務所等)又は歳入法に基づき登録された合弁会社(joint venture under the Revenue Code)で、決算期が2019年10月から2020年3月に到来した会社について、財務書類の提出期限が2020年8月末まで延長されています。
タイ法上、これらの法人は、決算日から5か月以内に財務書類の提出を行う必要がありますが、COVID-19による影響に鑑み、最大5か月間、提出期限が延長されることになっています。しかしながら、COVID-19による影響の終息がいまだ見えない中、当該提出期間の更なる延長などを含め、今後のCOVID-19に関連する通知等の発布の動向に注視する必要があります。
 
(ご参考)
本レター第108号(2020年3月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00041532/20200323-012254.pdf

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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