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2018.11.30

ベトナムベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第37回『ベトナム 外国人労働者の社会保険加入に関する政令の施行』
【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第37回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第92号(2018年11月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇ ベトナム:外国人労働者の社会保険加入に関する政令の施行
 
2018年10月15日、外国人労働者による社会保険の加入義務を定めた政令(Decree No.143/2018/ND-CP:「本政令」)が公布され、2018年12月1日からの施行が予定されています。ベトナムの社会保険法(Law No.58/2014/QH13)においては、2018年1月1日から外国人労働者が社会保険の加入対象に加えられましたが(Decree No.595/QD-BHXH 4条2項参照)、その詳細を定める政令が存在しなかったため、本政令について外国企業から注目が集まっています。本レターでは、本政令の概要についてご説明します。
 
(1) 加入対象者
 
本政令では、以下の(a)及び(b)の要件を満たす外国人労働者は、原則として社会保険の加入が義務付けられます。
(a) ベトナムにおいて労働許可書(work permit)、職業証明書(practicing certificate)又は職業ライセンス(practicing license)の発給を受けていること
(b) 無期限の雇用契約、又は1年以上の有期雇用契約を締結していること
 
もっとも、上記要件を満たすすべての外国人労働者が社会保険の加入を義務付けられるわけではなく、以下のいずれかの条件を満たす者は、社会保険の加入義務の対象から除外されています。このうち、(c)は、本国で社会保険に加入する外国人労働者が保険料の二重払いをしなければならない事態を考慮して規定されたものと考えられます。
(c) 「内部異動者」(intra-corporate transferee)に該当する者
(d) ベトナム労働法(Law No.10/2012/QH13)上の定年(男性60歳・女性50歳)に達している者
 
上記(c)の「内部異動者」とは、他の政令(Decree No.11/2016/ND-CP)において、ベトナムに拠点(子会社・支店・駐在員事務所)を有する外国企業において12か月以上の勤務歴を有する者で、一時的に当該拠点に異動する者が該当すると定められています。もっとも、異動の期間が相応に長期となる場合にまで「一時的」な異動として認められるか否かは法令上必ずしも明らかではなく、またこの点に関するガイドライン等もいまだ公表されていないため、どの範囲の駐在員が社会保険の加入義務の対象外となるかについては、慎重な検討が必要と思われます。また、ハノイとホーチミンでは運用が異なる可能性があることにも留意する必要があります。
 
(2) 社会保険の種類と保険料
 
外国人労働者が加入を義務付けられる社会保険は、①疾病手当、②妊娠出産手当、③労災・職業障害手当、④退職年金及び⑤遺族給付金の5種類となります。このうち、①疾病手当・②妊娠出産手当・③労災・職業障害手当については、2018年12月1日から適用される一方、④退職年金及び⑤遺族給付金については、直ちに適用されるわけではなく、2022年1月1日から適用されることとなっています。
これらの各社会保険の保険料は以下のとおりです。すなわち、2021年12月末までは、負担保険料率は雇用者3.5%・被用者0.0%であり、2022年1月1日からは、負担保険料率は雇用者17.5%・被用者8.0%となります。当該保険料は、基本給・諸手当その他の補充額を基準として算出されますが、基準額には上限が設けられており、公務員の一般最低賃金の20倍(本レター作成日現在では月額139万ベトナムドン × 20 = 2,780万ベトナムドン(現在の為替レートで約13万6,000円))とされています。外国人労働者の給与等はベトナムでは高額である場合も少なくありませんが、その場合でも、保険料の算出基準額はこの上限を超えることはありません。
 
種類 保険料率 適用日
雇用者 被用者
疾病手当・妊娠出産手当 3.0% 0.0% 2018年12月1日
労災・職業障害手当 0.5% 0.0%
退職年金・遺族給付金 14.0% 8.0% 2022年1月1日
合計 17.5 8.0  
 
以上のとおり、ベトナムに駐在員を派遣している外国企業は、社会保険料の加入義務の内容を把握し、今後の本政令の詳細なガイドラインの公表等を注視することが重要となります。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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