2018.10.30
シンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第36回『2018年8月31日付けで施行された会社法改正の要点』
- 【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第36回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第91号(2018年10月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇ シンガポール:2018年8月31日付けで施行された会社法改正の要点
昨年成立したシンガポール会社法改正法(Companies (Amendment) Act 2017:「2017年会社法改正法」)のうち、未施行であった複数の規定が2018年8月31日から施行されました。以下、個別に詳述します。
(1) 定時株主総会の開催の要否・開催時期に関する改正
改正前の会社法(「改正前会社法」)においては、定時株主総会の開催時期は、前回の定時株主総会の開催日を基準として定められていました。具体的には、設立後2回目以降の定時株主総会は、前回の定時株主総会から15ヶ月以内に開催する必要がありました。これに対し、2017年会社法改正法では、事業年度の末日を基準にすることになったため、非上場会社については事業年度末日から6ヶ月以内に、また上場会社については事業年度末日から4ヶ月以内に定時株主総会を開催することが義務付けられることになりました。
また、2017年会社法改正法により、非公開会社においては、事業年度末から5ヶ月以内に全株主に財務書類を送ることで、定時株主総会の開催が原則として不要となりました。但し、以下のいずれかの場合、例外的に株主総会の開催が必要となります。
(a) いずれかの株主が事業年度末から6ヶ月後の日の14日前までに定時株主総会の開催を求めた場合
(b) いずれかの株主又は監査人が財務書類を受領してから14日以内に定時株主総会の開催を求めた場合
なお、上記規定は、事業年度末日が2018年8月31日以降の会社につき適用されます。
(2) 年次報告書の提出時期に関する改正
改正前会社法においては、年次報告書(annual returns)の提出時期も定時株主総会の開催日を基準として定められていました。具体的には、年次報告書は原則として、定時株主総会開催日から30日以内にACRAに提出する必要がありました。そのため、定時株主総会の開催が遅れた場合、その後の期限がいずれも後ろ倒しになり続けるという不合理性が生じていました。
しかし、2017年会社法改正法により、年次報告書の提出時期は、定時株主総会の開催日ではなく事業年度の最終日を基準として定められることになりました。すなわち、非上場会社については事業年度末から7ヶ月以内に、また上場会社については事業年度末から5ヶ月以内に、それぞれ年次報告書をACRAに提出する必要があります(なお、シンガポール国外に株式資本及び支店を有する会社については、非上場会社及び上場会社につきそれぞれ提出期限が1ヶ月ずつ延長されます)。
上記規定も、事業年度末日が2018年8月31日以降の会社につき適用されます。
(3) 事業年度に関する規制の新設
上記のように定時株主総会の開催時期及び年次報告書の提出時期の基準になったこととも関係していると思われますが、各企業が過度に自由に事業年度を変更することを防ぐため、改正前会社法には存在しなかった、事業年度に関する以下の各規制が新設されました。
(a) 設立時及びその後の変更の際に、事業年度(financial year)の末日を登記官(Registrar)に通知する必要がある
(b) 5年以内に事業年度の末日を変更した会社は、再度の変更に際して登記官の承認を得る必要がある
(c) 会社の事業年度は、登記官が承認する場合を除いて18ヶ月を超えてはならない
また、事業年度の変更が認められるとしても、当該時点の事業年度及び直前の事業年度に限られ、定時株主総会の開催、年次報告書の提出及び財務書類の送付の期限を徒過していないことが条件となります。
以上のとおり、シンガポールに現地法人を有する企業においては、施行された各規制内容に留意する必要があります。
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作