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2018.10.22

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㊵「執行協力義務者は直ちに異議申立てを行うべきである」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊵
執行協力義務者は直ちに異議申立てを行うべきである


李さんは株式投資のために王さんから2万元を借りた。その後、李さんは株式投資で失敗し、借金返済ができなくなったため、王さんは裁判所に訴訟を提起した。裁判所は審理した上で、「判決の効力が生じた後10日以内に、李さんは王さんに対し2万元の借金を返済し、利息を支払う」よう判決を下したが、李さんはその後も当該判決を履行していなかった。
 
やむを得ず、2018年3月に王さんは裁判所に強制執行を申し立てた。執行過程において調査により、「李さんはその不動産をA社に賃貸することで、毎月6000元の家賃収入を取得でき、家賃は半年ごとに支払われる(毎年1月と7月の初旬)」ことが判明した。そこで、裁判所は2018年4月にA社に執行に協力するように要請する通知書(以下「執行協力通知書」という)と裁定書を送達し、「李さんに支払う予定の年間の家賃合計36000元を10日間以内に裁判所の指定口座に振り込む」よう命令した。
 
A社は執行協力通知書と裁定書に受け取りのサインをしたが、李さんとの賃貸借関係に影響を及ぼすのではないかと心配する一方、必ず裁判所に協力しなければならないのか、どのように正確に対応すべきかが分からず困っていた。
 
『分析』
 
1.A社は法定の協力義務を負う。
『人民法院執行の若干問題に関する最高人民法院の規定(試行)』第36条には、「執行対象者が関係組織からの収入を受領していない場合、人民法院は当該組織に執行協力通知書を発送し、その収入の差し押さえ又は引き出しに協力させる裁定を下す。」と規定している。当該規定から見て、A社が裁判所に協力し、李さんに支払うべき家賃を裁判所の指定口座に振り込むことには法的根拠がある。A社は協力する法定義務がある。
 
2.A社は執行異議の申立てを直ちに行うものとする。
『民事訴訟法』第225条には、「当事者、利害関係人は、執行行為が法律の規定に違反すると判断した場合に、執行につき責任を負う人民法院に対し書面による異議申立てをすることができる。
当事者、利害関係人が書面による異議申立てをした場合には、人民法院は、書面による異議申立てを受領した日から15日以内に審査しなければならず、理由がある場合には取り消し又は是正する旨の裁定を下し、理由がない場合には棄却する旨の裁定を下す。」と規定している。
従って、裁判所からの裁定書及び執行協力通知書が発送された後、A社は直ちに書面による異議申立てを行なければならない。さもなければ、裁定書及び執行協力通知書の法的効力が生じた後、債務者である李さんは執行協力義務者であるA社に対する債権を持っていると看做され、A社は裁定書及び執行協力通知書に従い協力しなければならない。
 
3.A社が執行協力命令を拒否する場合、法的責任を負う。
『民事訴訟法』第114条によると、調査又は執行に協力する義務を負う企業が人民法院からの執行協力通知書を受領した後、協力を拒否する場合、人民法院は、当該企業の主要な責任者又は直接責任者を、過料に処することができる。
それでもなお協力義務の履行を拒否する場合、人民法院は拘留を科すことができ、かつ監察機関又は関連機関に紀律処分を提案することができる。
『判決・裁定の執行を拒否する刑事案件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈』第1条によると、執行協力義務者が人民法院の判決及び裁定について執行能力を有しているにもかかわらず執行を拒絶し、情状が深刻な場合には、判決・裁定執行拒絶罪により処罰を受ける。従って、執行協力義務者は執行を拒否する場合は、行政、刑事責任を負うことになる。
 
本件のA社は法定の協力義務を負う。又、裁判所はA社に対する李さんの債権の有無などの財産状況、支払期限が到来したか否かなどの情報を把握していないが、A社は前述の情報をはっきり知っている。従って、家賃の支払期限が到来していない状況下で、A社は裁判所からの「10日間以内に家賃を裁判所の指定口座に振り込む」命令について異議申立てをする場合、裁判所の執行協力通知書が送達された時点で直ちに申立てて、裁判所に状況説明を行うべきである。直ちに異議申立てを行わない場合、A社は法に従い裁判所に協力しなければならない。さもなければ、相応の法的責任を負う。
 
以上


※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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