2018.10.02
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㊴「 代理購入による当選宝くじの賞金は誰に帰属するか 」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿㊴
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代理購入による当選宝くじの賞金は誰に帰属するか
甲は宝くじを研究しており、購入することが多い。ある日、甲は宝くじの当選番号となるラッキーナンバーを予想した。しかし、あいにく仕事で手が離せず、やむを得ず甲は友人の乙に10元を渡し、当選予想番号の通りに宝くじを購入するように委託した。購入時に乙は突然当選予想番号の末位数字の「4」は縁起が悪いと感じ、それを「6」に変更して購入した。宝くじの抽選結果が発表された後、甲が乙に購入を代行してもらった宝くじは10万元の賞金が当たった。二人は当該賞金の帰属について紛争となった。
宝くじに当たった後、賞金がどのように配分されるかについては、異なる意見が三つある。
1番目の意見は、甲の当選予想番号の通りに宝くじを購入したら、当選できないため、乙が賞金を獲得し、甲に対し10元の宝くじ購入費を返還すべきであるというものである。
2番目の意見は、甲は出資者であるが、乙が労力及び知恵を提供したため、二人が共同で宝くじを購入したと看做され、二人は賞金を折半すべきであるというものである。
3番目の意見は、甲は委託者であり、乙は受託者である。受託者の行為による責任は当然委託者が負うため、甲が賞金を獲得すべきであるというものである
『分析』:
賞金は誰に帰属するかについては、甲乙間の法的関係によって決められる。甲と乙は「共同で宝くじを購入する」ことで合意していなかったため、2番目の意見で認定された双方間の法的関係には明らかに誤りがある。
本件において、双方は「甲が乙に宝くじを購入してもらうよう委託し、乙が受託した」という真実の意思表示をしたと看做される。つまり、乙は甲の利益を実現させるために受託し、双方間に委託者と受託者の関係が構築された。委託・受託に係る法的関係において、受託者は全力を尽くして職責を果たし、受託事項を遂行するので、受託者の行為による責任は委託者が負うものと考えられる。乙は甲の利益のために一桁目の数字を変更したため、数字変更による責任は甲が負うべきである。従って、甲が賞金を獲得する権利があり、乙は報酬を獲得する権利がある。但し、乙は報酬金額について事前に甲と協議して決定する必要があり、委託行為による責任について権利を主張するべきではない。
以上
※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員