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2018.07.30

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㊲「野次馬の法的責任」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊲
野次馬の法的責任


2018年6月20日、女子高校生の李さんは百貨店の8階から飛び降り自殺を図ろうとし、消防士がやめるように説得したところ、李さんは躊躇し、膠着状態に陥った。地上では野次馬が大勢群がり、李さんを嘲ったり、悪口を言ったりした。さらには、「早く飛び降りろ、ぐずぐずするな、ためらっても恥をかくだけだ」などと大声で騒ぎ始め、「快手」というショート動画プラットフォームにより生放送される事態へと発展した。うつ病を患う李さんは嫌味や皮肉に耐えられず、8階から飛び降り、その場で死亡した。

『分析』:
道徳上の問題はともかくとして、公然と被害者を意地悪く非難したり皮肉を言うような野次馬は、それらの行為により法的責任を負わなければならないことを意識していない。民事責任において、『権利侵害責任法』第6条には、「行為者が過失によって他人の民事権益を侵害した場合、権利侵害責任を負わなければならない。」と規定している。また、第8条には、「二人以上が共同で権利侵害行為を実施し、他人に損害を与えた場合、連帯責任を負わなければならない。」と規定している。

本件において、野次馬の悪意のある言葉によって、李さんは最終的に自殺を選択した。仮に李さん本人に過失があり、『権利侵害責任法』第26条の規定により、悪意のある言葉を使った野次馬の責任を軽減できるとしても、李さんの死亡に対して、悪意のある言葉を使った野次馬は依然として法に従い連帯して賠償責任を負うべきである。

野次馬は、悪意のある言葉を使うなどの行為により李さんを死亡に至らせることを認識しながらも、当該結果を引き起こしたため、理論上刑法における「間接故意」 に該当する。勿論、李さんの死亡は主に本人の自由意志による自殺に該当し、野次馬が悪意のある言葉を使ったなどの行為は刑事責任になるか否かは検討の余地がある。それにもかかわらず、『治安管理法』第 42 条には、「次の行為の一つに該当する場合、5日以下の拘留又は500 元以下の罰金に処する。情状が比較的深刻な場合、5日以上10日以下の拘留に処し、500元以下の罰金を併科することができる。(1)脅迫状を書き、又はその他の方法で他人の人身の安全を脅かした場合。」と規定している。第23条には、「次の行為の一つに該当する場合、警告を与え、又は 200元以下の罰金に処する。情状が比較的深刻な場合、5日以上10日以下の拘留に処し、500元以下の罰金を併科することができる。(2)駅、港湾、埠頭、飛行場、デパート、公園、展覧館、又はその他の公共の場所の秩序を乱した場合。集団で前項の行為を実施した場合、主要なメンバーに対して10日以上15日以下の拘留に処し、1000元以下の罰金を併科することができる。」と規定している。

事件発生後、当地の公安機関は上述の規定に基づき、野次馬の中心人物を行政拘留に処した。

以上


※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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