国別情報一覧

HOME > 国別情報一覧 > 中国 > 詳細

国別情報一覧

2018.06.26

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㊱「企業が従業員の職位を変更することは労働契約の内容の変更に該当するか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊱
企業が従業員の職位を変更することは労働契約の内容の変更に該当するか    

 
甲さんは2013年にA社に入社し、A社と労働契約を締結し、労働契約において甲さんの職位を製造部部長と約定した。その後、 A社は内部組織を改編し、製造部と品質管理部を一つの部署に統合し、製造部を製造課に変更し、製造部部長という職位を廃止したため、甲さんの職位を製造課マネージャーに変更した。但し、甲さんの職級、業務内容、賃金待遇などは変更していない。
 
A社は内部組織を改編する前に従業員全員に対し説明を行い、労働組合の意見を求め、改編の結果を公示した。 甲さんはA社からの職位変更通知を受領した後、「労働契約では甲さんの職位を部長と約定した。A社が甲さんの職位を部長から マネージャーに変更することは、労働契約の内容の変更に該当する。A社が甲さんの同意を得ずに一方的に職位変更を行うことは、 法律違反になる。」と判断し、A社の職位変更命令を拒否し、労働仲裁を提起し、「労働契約を解除し、経済補償金を支払う」ことを請求した。
 
係争点:
企業が内部組織の改編により、一方的に従業員の職位を変更することは、労働契約の内容の変更に該当するか。
 
『分析』:
『労働契約法』第17条には、「労働契約は以下の条項を備えていなければならない。」と規定されている。
(1)雇用企業の名称、住所及び法定代表者又は主な責任者
(2)労働者の氏名、住所及び住民身分証又はその他の有効な身分証明書類の番号
(3)労働契約の期間
(4)業務内容及び勤務場所
(5)勤務時間及び休憩・休暇
(6)労働報酬
(7)社会保険
(8)労働保護、労働条件及び職業的危険の防護など
 
上記の労働契約の必須条項には、職位が含まれていない。職位を設けたり、変更したりすることは雇用企業の経営自主権に該当し、雇用企業は事業発展のために、内部組織を小さくしたり、従業員の職位を変更したりする権利がある。
 
本件において、A社は内部組織の改編により製造部を統合し、製造部部長の職位を廃止した。A社が甲さんの職位を部長からマネージャーに変更することは、企業内部の人事管理行為に該当する。また、甲さんの職級、業務内容、賃金待遇などを変更したり、A社と甲さんの労働関係を変更又は解除したりしていないため、労働契約の内容の変更に該当しない。
甲さんの「経済補償金を支払う」 ことの請求は根拠となる事実がなく、法的根拠もない。
 
以上


※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
 
【直近記事】
陳弁護士の法律事件簿㉟「法定代表者変更時の注意事項」
陳弁護士の法律事件簿㉞「ウィーチャットなどのようなチャット履歴が証拠と認められるか」

 

【本レポート、メールマガジン「陳弁護士の法律事件簿」配信希望などに関するお問い合わせ】
 GPパートナーズ法律事務所 (japanese_group@gaopenglaw.com)まで
 会社名(屋号)、担当者様お名前、電話番号、メールアドレスに、問い合わせ内容を添えてメール願います。

                                     
  
【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP