2018.02.15
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㉞「ウィーチャットなどのようなチャット履歴が証拠と認められるか」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿㉞
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ウィーチャットなどのようなチャット履歴が証拠と認められるか
張さん(ウィーチャットアカウント名:「雨後の虹」)と李さん(ウィーチャットアカウント名:「可愛い猫」)はグループチャットを通じて知り合いになり、ウィーチャットのグループで行われた会食に数回参加した後、親友になった。
ある日、張さんはウィーチャットを通じて李さんに対し、「事業のために急遽6万元を借りたい」というメッセージを送り、李さんは同意して張さんにお金を貸した。しかし、それ以降、張さんは返済のことに一切触れなかった。
李さんはウィーチャットにより何回も返済を督促したが、張さんはいつも「近いうちに返済する」と返事し、長期間返済していなかった。李さんはやむを得ず、ウィーチャットのチャット履歴を証拠として裁判所に訴訟を提起した。
意外なことに、法廷において張さんは借金のことをどうしても認めようとせず、「自分は李さんからお金を借りたこともないし、李さんから提供されたチャット履歴における「雨後の虹」でもない」と主張した。
『分析』
インターネットが発達している今、電子データは訴訟において証拠として使用されることが多くなっている。『<中華人民共和国民事訴訟法>適用に関する最高人民法院の解釈』の規定によると、電子データとは、電子メール、電子データ交換、ネット上のチャット履歴、ブログ、ミニブログ、携帯電話のショートメッセージ、電子署名、ドメイン名などにより電子媒体において収集、保存した情報を指す。従って、ネット上のチャット履歴は電子証拠に該当する。
証拠は「真実性、関連性、合法性」の条件を満たさなければならないため、判例から見て、裁判の証拠として提出するウィーチャットのチャット履歴は、以下の条件を満たす必要がある。
1、ウィーチャットのチャット履歴の出所が法律規定に合致していること。
『民事訴訟証拠に関する若干規定』によると、他人の合法的権利を侵害し、又は法律の禁止規定に違反する方法で取得した証拠は、事実認定の根拠にはならない。従って、証拠として提出するチャット履歴は、当事者本人のチャット履歴でなければならず、他人のプライバシー侵害により取得した他人のチャット履歴であってはならない。
2、実名登録を行っていない場合に、ウィーチャットのチャット履歴の当事者双方が事件に関係する当事者であることを確認する。
ウィーチャットアカウント名はユーザーが自ら設定したもので、実務において証拠を提出する当事者一方は、当該ウィーチャットアカウント名が事件と無関係な第三者ではなく、事件に関係する相手方であることを証明できない場合、通常、当該証拠は裁判所に認められない。
3、チャット履歴の時間が本件の発生時間帯にあること。
審理において借金の発生日など重要な事実に対して認定を行うため、証拠として提出するウィーチャットのチャット履歴は、チャットする時間を正確に表すものでなければならない。
4、チャット履歴の内容は曖昧でなく、当事者が証明したい事実を表明でき、かつ完全性を有するものでなければならず、削除又は改ざんされてはならない。
注意すべきことは、ウィーチャットは音声通話機能を具備し、音声は修正されやすい、認識されにくいなどの特徴があるため、実務において、音声通話の履歴のみを証拠として提出する場合は、単独で事実認定の根拠にはならず、適切な証拠を別途提出する必要がある。
以上
※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員