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2025.06.21

シンガポールシンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第115回「マネー・ロンダリング防止関連法規の改正法の施行」NEW
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第115回「マネー・ロンダリング防止関連法規の改正法の施行」
◇シンガポール
 
マネー・ロンダリング防止関連法規の改正法の施行

2024年11月14日、シンガポールでAnti-Money Laundering and Other Matters Act 2024(「改正法」)が施行されました。本改正は、①法執行機関(LEA)によるマネー・ロンダリング(ML)犯罪の追及・起訴能力の強化、②差し押さえられた犯罪行為に関連する財産の取扱いの明確化・改善、及び③カジノ事業者に対するML及びテロ資金供与対策(AML/CFT)の枠組みを金融活動作業部会(Financial Action Task Force)の基準に準拠させることを目的とするものです。以下では、これらの目的ごとに改正法の主要なポイントについて紹介します。 

(1) 改正法の概要

(a)法執行機関(LEA)によるマネー・ロンダリング(ML)犯罪の追及・起訴能力の強化
 
改正法施行前までは、ML犯罪を起訴するためには、検察は、シンガポールでマネー・ロンダリングされたとされる資金について、所定の犯罪行為(「犯罪行為等」)と直接的に関連する収益であることを立証する必要があり、特に当該犯罪行為等が国外で実行された場合には、その犯罪行為等からML犯罪者までの資金の流れを立証する必要がありましたが、これが起訴に際しての大きな障壁となっていました。
改正法により、汚職、薬物取引その他重大犯罪の利得没収法(Corruption, Drug Trafficking and Other Serious Crimes (Confiscation of Benefits) Act)が改正され、検察は、「ML犯が、犯罪行為等による収益(criminal proceeds)を扱っていることを知っていた、又はそのように信じるに足る合理的な理由があった」ことを、合理的な疑いを超えて立証すれば足りることとなりました。これにより、海外で行われた犯罪行為等に関するMLであっても、起訴が容易になるとされています。
このほか、海外の重大な環境犯罪が犯罪行為等と指定されたり、ML、テロ資金供与、拡散金融の検知を強化するため、シンガポール各省庁間での情報共有を可能としたりするなどの改正がなされています。
 
(b)差し押さえられた犯罪行為に関連する財産の取扱いの明確化・改善
 
シンガポール法に基づく犯罪の疑いがあるものの、国外逃亡等により音信不通となっている被疑者については、その財産が差し押さえられることがありますが、改正法によりCriminal Procedure Code(刑事訴訟法)が改正され、当該差し押さえられた財産等に関する取扱いが厳格化されることになりました。
例えば、裁判所は、逃亡した被疑者に関する捜査が継続中である場合には、差し押さえた財産を返還等してはならないなどの規定が盛り込まれ、今回の改正の結果として、逃亡中の被疑者がシンガポールへの帰国・捜査に協力しない場合には、MLその他の犯罪行為による財産的利益が没収された状態となることとなり、実効的な捜査に資するものとされています。

(c)カジノ事業者に対するAML/CFTの枠組みを金融活動作業部会の基準に準拠させること
 
改正法によりCasino Control Act(カジノ管理法)が改正され、カジノ運営者に対するML及びテロ資金供与対策(AML/CFT)の枠組みを金融活動作業部会基準に準拠したものとされました。これにより、カジノ事業者は、Customer Due Diligence(CDD)に際して、ML/テロ資金供与リスクに加え、拡散金融リスクをも考慮することが必要となり、また、CDDが要求される閾値については、5,000シンガポールドル(約55万円)以上のデポジット又は10,000シンガポールドル(約110万円)以上の現金取引から、4,000シンガポールドル(約45万円)以上のデポジット又は現金取引に引き下げられました。。
 
(2) 本改正法案提出に至る背景・経緯

シンガポールでは、近年ML対策に力を入れており、2023年8月に摘発されたシンガポール史上最大規模のML事件が明るみになって以降、信頼性の高い金融市場としてシンガポールの地位を維持するため、規制強化の動きが加速しています。
今回の改正法はその最たる例ではありますが、昨年7月に改正されたシンガポール会社法において、名義取締役及び名義株主並びに実質的支配者に関する情報の登録等が義務付けられたことも、ML対策の一環となります。
 
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて、資格を有するシンガポール法事務所と協働して対応させていただきます。

 本記事掲載URL
https://www.morihamada.com/ja/insights/newsletters/116546

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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