国別情報一覧

HOME > 国別情報一覧 > 中国 > 詳細

国別情報一覧

2023.12.01

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第71回「治安管理処罰法改正草案の「中華民族の精神を損ない、中華民族の感情を傷つける」という内容を検討する」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第71回
『 治安管理処罰法改正草案の「中華民族の精神を損ない、
                                           中華民族の感情を傷つける」という内容を検討する』


最近、ある女の子がアニメのキャラクターに扮してバスに乗り、バスの乗客に罵倒された事件はインターネットで話題になっている。同じ事は他にもある。先日、広州地下鉄は、ハロウィンに「恐怖」、「血痕」の化粧や「お化け」など怖いイメージの乗車を禁止する旨の規定を公布し、好評を博した。

2023年8月28日、中国の『治安管理処罰法』は公布以来17年ぶりに初めての改正を迎えた。『治安管理処罰法』改正草案によると、新たに追加された「民族精神を損ない、民族感情を傷つける」行為は処罰対象になる可能性がある。この条項は広く注目・検討されている。 
 
『分析』:


改正草案第34条には、「以下の行為の一つに該当する場合は、5日以上10日以下の拘留に処し、または1000元以上3000元以下の過料を科す。情状が深刻な場合は、10日以上15日以下の拘留に処し、5000元以下の過料を併科することができる。

(1)公共の場で中華民族の精神を損ない、中華民族の感情を傷つける服装、イラストを着用し、又は他人に強制的に公共の場で中華民族の精神を損ない、中華民族の感情を傷つける服装、イラストを着用させる場合。

(2)中華民族の精神を損ない、中華民族の感情を傷つける物品や言論を作成、伝播、宣伝、散布する場合。」と規定している。「民族精神を損ない、民族感情を傷つける」については今回の改正において大きな論争がある。法律では、どの行為が民族精神を損ない、民族感情を傷つけるかについて明確にしていないため、違法行為の定義があいまいで法律執行の混乱を招くという問題がある。

例えば、アニメイベントで海外のアニメキャラクターの衣装を着たコスプレ、海外ブランドの商品購入、「西洋の祝日」での仮装イベントは、民族精神を損ない、民族感情を傷つけるのではないかと心配する人が多い。これについては考えすぎる必要はないと思われる。

今回の改正草案では、違法行為の関連規定を一層明確化・細分化するために上述の条項を公布した。現行の『治安管理処罰法』における違法行為は、主に公共の秩序を乱し、公共の安全を妨害し、他人の合法的権益を侵害する行為を対象とする。

今回の改正草案の公布前に、類似の行為が発生した場合に、通常、公安機関は挑発・騒動や公共の秩序を乱す行為と認定して処罰する。従って、処罰を受けるか否かは行為の危害性による。もし服装、言動が他人の非難を受けておらず、警察に通報する人がなく、社会に注目される問題にもなっていない場合は、当該行為自体は、あまり社会を害していないと見做され、通常、公安機関は処罰を行わない。そうでなければ、当該行為自体は社会に対して一定の悪影響を与え、秩序を乱したと見做され、公安機関は処罰を行う。

今後、立法部門は当該条項に対する認定を一層細分化する可能性がある。例えば、このような行為とは、侮辱誹謗などにより中華民族の歴史・文化を歪曲、冒涜、攻撃、けなすことを指し、このような行為の結果は社会に悪影響をもたらし、公共の利益を損ない、公共の秩序を乱すなどを明確にする。

以上のことから、今回の『治安管理処罰法』の改正草案では上述の条項を可決したか否かにかかわらず、日常生活において言動を規範化し、公共の秩序を乱さないように注意しなければならない。例えば、国慶節や歴史的な記念施設など、敏感な時期や場所に不適切な仮装や言動をしないようにしたり、ハロウィンなどの祝日に恐ろしい仮装で通行人を脅かさないようにしたりしなければならない。さもなければ、処罰を受ける可能性がある。  

【直近記事】
陳弁護士の法律事件簿第68回「有限公司の取締役は如何に合法的に辞任するべきか」
陳弁護士の法律事件簿第69回「雇用企業がセクハラ防止義務をどのように履行すれば免責されるか」
陳弁護士の法律事件簿第70回「「企業中長期外債審査登記管理弁法」及び関連文書の検討
【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP