国別情報一覧

HOME > 国別情報一覧 > シンガポール > 詳細

国別情報一覧

2023.10.06

シンガポールシンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第95回「 AIシステムの開発・導入等における個人情報の利用に関するガイドライン案の公表」
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第95回「 AIシステムの開発・導入等における個人情報の利用に関するガイドライン案の公表」
◇シンガポール

シンガポール個人情報保護委員会(Personal Data Protection Commission:「PDPC」)は、2023年7月18日に、AIによる提案・決定システムにおける個人情報の利用に関するガイドライン案(Proposed Advisory Guidelines on Use of Personal Data in AI Recommendation and Decision Systems:「本ガイドライン案」)を公表し、同年8月31日まで意見公募手続を実施しました。そこで本レターでは本ガイドライン案の概要について紹介します。
 
(1) 本ガイドライン案の目的
 
本ガイドライン案は、自律的に意思を決定する又は提案することで人の意思決定を補助するAIシステム(「AIシステム」)の開発・導入等において、個人情報を収集・利用等する企業又はその外部委託業者を対象とし、シンガポール個人情報保護法(Personal Data Protection Act 2012:「PDPA」)がどのように適用されるかを明確にすることを目的としています。
 
(2) 本ガイドライン案の概要
 
本ガイドライン案は、下記のとおり、AIシステムの(a)開発・テスト・モニタリング(「開発等」)、(b)導入、及び(c)委託の段階別に構成されており、各概要は以下のとおりです。
 
(a) 開発・テスト・モニタリング
企業は、AIシステムの開発等において個人情報を利用する場合、下記①及び②の例外を除き、関連する個人から同意を取得するPDPA上の義務について検討する必要があります。
 
① 業務改善の例外
業務改善の例外に該当する場合、企業は、PDPAに従って取得した情報について、同意を取得せずに利用することができます。本ガイドライン案は、業務改善の例外に該当するかどうか判断するに際して、主に以下の事項を検討するように定めています。
 
  • ●当該目的のために個人情報を利用することが、AIシステムの品質の向上に寄与するかどうか
    ●当該AIシステムの開発等に他の手段を用いることが技術的に可能かどうか、また、費用対効
     果が高いかどうか
    ●当該AIシステムの開発等に関する業界の慣行・慣習
 
② 研究の例外
研究の例外に該当する場合、企業は、一定の条件の下、同意を取得せずに個人情報を利用することができます。本ガイドライン案は、研究の例外に該当するかどうか判断するに際して、主に以下の事項を検討するように定めています。
 
  • ●当該AIシステムの開発が科学及び工学をどのように発展させるか
    ●生活の質を向上させることで社会に寄与する製品やサービスの革新のために当該AIが用いら
     れる可能性
    ●当該AIシステムの開発等に関する業界の慣行・慣習
 
 
(b) 導入
企業は、個人情報を収集・利用等するAIシステムを導入する場合、PDPA上、関連する個人に通知をして同意を取得する義務、及び当該個人に対して説明をする義務について検討する必要があります。
 
① 通知義務・同意取得義務
本ガイドライン案は、当該通知・同意取得に際して主に以下の情報を提供するように定めています。
 
  • ●個人情報を収集・利用する製品の機能
    ●収集・利用される個人情報の種類に関する一般的な説明
    ●収集された個人情報が製品のどの機能に関連して利用されるか
    ●製品の機能に影響を与える個人情報の性質
 
② 説明義務
また、本ガイドライン案は、説明義務に関して、主に以下の対応を求めています。
 
  • 透明性と公正性を達成するための方針と慣行を含む明文のポリシーを策定すること
    当該ポリシーを、個人からの要請があった場合のみではなく、ウェブサイトを通じて事前に公開するように検討すること
 
(c) 委託
サービスプロバイダ-がAIシステムの開発等や導入について顧客から委託を受け、個人情報を処理する場合に、当該サービスプロバイダ―はPDPA上の個人情報仲介業者(Data Intermediaries)に該当するとみなされ、PDPA上の通知義務、同意取得義務又は説明義務を負うとされています。また、本ガイドライン案は、業務を委託する顧客側にも同様にこれらのPDPA上の義務を遵守するために行うべき指針についても定めています。
 
本ガイドライン案はいまだ草案の段階であるものの、適用をうける企業においてはPDPAの義務がどのように事業に影響するかを事前に検討することが望ましいと思われます。
 
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて、資格を有するシンガポール法事務所と協働して対応させていただきます。
 
本記事掲載URL
20230920-033806.pdf (mhmjapan.com)

(直近記事)
第92回【タイ】タイの電気自動車(EV)推進に向けた政策の最新情報」
第93回【タイ】外国会社の株主名簿等の登録義務の一部免除
第94回【タイ】「取引競争委員会におけるリニエンシー制度の法制化の検討」
【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP