2022.12.29
シンガポール【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第86回「暗号資産に関する規制案の公表」
- 【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第86回「暗号資産に関する規制案の公表」
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第145号(2022年12月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
※本レターに記載した円建て表記は、ご参照のために、各現地通貨を現在の為替レートで換算したものとなります。
◇シンガポール: 暗号資産に関する規制案の公表
シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore:MAS)は、2022年10月26日に、一般投資家の保護に重点を置いた暗号資産の取り扱い事業者に対する規制案とステーブルコインに関する新しい規制案として、それぞれ「デジタル・ペイメント・トークンに関する規制」及び「ステーブルコインの発行や仲介事業に関する規制」を公表しました。そこで本レターではそれらの概要を取り上げます。
なお、当該規制案に対するパブリックコメントが同年12月21日まで募集されており、それを踏まえて新規制が施行される見込みとなっています。
(1) 暗号資産の取り扱い事業者に対する規制
「デジタル・ペイメント・トークンに関する規制」案の内容は下表のとおりです。なお、紙面の都合上、規制案として公表されている全ての内容を網羅していない点にご留意ください。
(2) ステーブルコインに関する規制
「ステーブルコインの発行や仲介事業に関する規制」案において、発行可能なステーブルコインは、シンガポールドルと他の10通貨(豪ドル、英ポンド、カナダドル、ユーロ、日本円、ニュージーランドドル、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、スイスフラン、米ドル)と紐づけられたものに限られるとされています。なお、ノンバンクによるステーブルコインの発行も可能とされていますが、一定額を超えるステーブルコインを発行する場合はライセンスを取得する必要があるとされています。
また、ステーブルコインの発行者への、ステーブルコインと紐づく通貨建てでのステーブルコイン額面金額100%以上の準備資産(Reserve Assets)の確保の義務付けや、当該準備資産と発行者の資産との分別管理が求められる内容等となっています。
MASは、一般・個人投資家による仮想通貨を含むデジタル・ペイメント・トークンへの投資・取引は現段階ではいまだリスクが高いとして警告を発するとともに、一般大衆への広告について規制を設けるなどやや慎重な姿勢を見せており(なお、本広告規制について、本レター第134号(2022年2月号)をご参照ください。)、今回の「デジタル・ペイメント・トークンに関する規制」案もこの流れを汲むものといえます。
ただ他方で、MASは、仮想通貨の中でも法定通貨と連動するステーブルコインについては、シンガポールにおける暗号資産エコシステムにおける取引を活性化・促進するための革新的デジタルツールとして好意的に捉え、一般投資家へのリスク対応と技術革新・導入促進のバランスを見定めようとしており、「ステーブルコインの発行や仲介事業に関する規制」案もその一つのステップといえそうです。
(ご参考)
本レター第134号(2022年2月号)
https://www.mhmjapan.com/content/files/00063987/20220221-102537.pdf
本レター第145号(2022年12月号)
20221220-020538.pdf (mhmjapan.com)
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作