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2022.09.21

タイタイ【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第83回「民商法改正草案(吸収合併の創設等)」
【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第83回「民商法改正草案(吸収合併の創設等)」
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights142号(20229月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
 
◇タイ: 民商法改正草案(吸収合併の創設等)
 
これまで長らく国会で審議されてきたタイ民商法(Civil and Commercial Code:「民商法」)の改正草案(「本改正草案」)について、今般上院・下院の双方で承認がなされました。本改正草案は、今後、国王の承認を経た上で官報によって告示されることになり、告示から90日後に施行される予定です。以下では、本改正草案の重要と思われる点について概説します。
 
(1) 吸収合併の創設
 
従前、民商法においては、会社の合併のスキームとして新設合併(合併当事会社の全てが消滅して新会社を設立)のみが定められており、吸収合併(合併当事会社の一方が他方を吸収して存続)は許容されておりませんでした。そのため、タイにおけるM&A取引においては、新設合併と事業譲渡が主な選択肢となっておりましたが、本改正草案により新たに吸収合併が創設されるため、今後M&A取引やグループ内組織再編における活用が期待されます。
 
(2) 合併に反対する株主の株式買取制度の創設
 
これまで特別決議事項である新設合併については、出席株主の4分の3以上の賛成があれば行うことができ、これに反対する少数株主の保護を図る制度はありませんでした。本改正草案により、新設合併(及び新たに創設される吸収合併)に反対する少数株主の株式買取制度が認められることになります。
株主総会において新設合併・吸収合併に反対する株主(「反対株主」)がいる場合、新設合併・吸収合併を行おうとする会社は、反対株主が保有する株式の買取者を手配する必要があります。株式買取価格について当事者間で合意が得られない場合には、鑑定人が任命され、当該鑑定人の評価額が最終的な買取価格となります。
買取価格の決定後、買取の申し出から14日以内に株式譲渡手続が完了しない場合、新設合併・吸収合併の手続は進行し、反対株主は新会社(新設合併の場合)又は存続会社(吸収合併の場合)の株主となります。
 
(3) 最低株主数
 
従前、民商法においては、会社の「株主が3名未満」となった場合、裁判所が当該会社に対する解散命令を下すことができるとされていました。したがって、この解散命令を回避する目的で、例えば日系企業のタイ子会社については、最低3名の株主が必要であることを前提に、親会社以外にも、関連会社や個人(役員や従業員等)が株主となり、3名を維持することが実務上一般的でした。本改正草案では、解散命令を下すことができる事由が「株主が1名の場合」へと変更されましたので、最低株主数については2名を維持することで良いことになりました。よって、上記のようなケースでは、親会社以外の株主は1名で足りることになります。また、これと関連して、会社設立時の発起人についてもこれまで3名必要とされていたのが、2名で充足することになります。
 
(4) 株主総会招集通知の新聞公告
 
これまでは、非公開会社であっても、株主総会開催に際しては招集通知の各株主への個別送付に加え、新聞公告の掲載も必要とされておりましたが、本改正草案により、無記名式の株券を発行している会社(タイの日系企業においてはほとんどみられません。)でない限り、株主総会開催のための招集通知の個別送付は引き続き必要であるものの、新聞公告の掲載は不要となります。
 
(5) 株主総会の定足数
 
株主総会の定足数について、発行済株式数の資本の4分の1以上を有する株主の出席と定める民商法の規定に加え、判例上、「会議」であることを前提に複数の株主又は代理人が出席する必要があるとされていました。本改正草案は、その判例を明文化し、2名以上の株主又はその代理人の出席が必要であることが民商法上に明記されることになります。
 
(6) 電子的方法による取締役会の開催
 
2014年6月の暫定政権下での布告及び2016年9月の商務省告示、さらに2020年4月の緊急勅令及び2021年のデジタル経済社会省告示に基づき、一定の要件の下で電子的方法による会議を開催することが認められていましたが、民商法にはこれに関連する規定は存在していませんでした。また、特に取締役会の開催については取締役本人が出席する必要があることとの関係でも、電子的方法による会議が民商法上許容されるのか、これまではその解釈において不透明な部分がありました。本改正草案により、附属定款に別段の定めがない限り、電子的方法による取締役会開催可能である旨が明記されたため、電子的方法により出席した取締役も定足数の計算に含められることが明確になりました。
 
(ご参考)
本レター第112号(2020年7月号)
https://www.mhmjapan.com/content/files/00042667/20200720-112955.pdf

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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