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2022.06.21

その他のアジア【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第80回「フランチャイズ契約の登録制度の創設」
【フィリピン】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第80回「フランチャイズ契約の登録制度の創設」
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights139号(20226月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇フィリピン:フランチャイズ契約の登録制度の創設

2022年5月16日、フィリピン大統領府は、中小零細企業を保護することを目的として、フランチャイズ契約の登録制度の創設等を定める大統領令(Executive Order No.169:「本大統領令」)を公布し、本大統領令は同日施行されました。本大統領令の概要は以下のとおりです。
 
(1) フランチャイズ契約の登録制度の創設
 
フランチャイザーは、中小零細企業(Micro, Small and Medium Enterprise)をフランチャイジーとする全てのフランチャイズ契約について、契約締結後30日以内に貿易産業省(Department of Trade and Industry)に登録することが必要とされます。
なお、中小零細企業とは、以下に分類されるいずれかの企業に該当する企業をいいます。
 
(a)マイクロ企業:総資産50,000フィリピンペソ未満
   (現在の為替レートで約126,000円)
(b)コテージ企業:総資産50,001フィリピンペソ~500,000フィリピンペソ
   (現在の為替レートで約126,000円~130万円)
(c)小企業:総資産500,001フィリピンペソ~5,000,000フィリピンペソ
   (現在の為替レートで約130万円~1,260万円)
(d)中企業:総資産5,000,001フィリピンペソ~20,000,000フィリピンペソ
   (現在の為替レートで約1,260万円~5,060万円)
 
(2) フランチャイズ契約における必要的記載事項
 
中小零細企業をフランチャイジーとするフランチャイズ契約は、書面で作成され、公証を行うことが必要です。また、これに加えて以下の必要的記載事項を定めることが必要とされます。以下の必要的記載事項を定めたフランチャイズ契約でなければ、フランチャイズ契約の登録ができません。
 
(a)フランチャイズの対象となる商品又はサービスの名称と詳細
(b)中小零細企業のフランチャイジーに付与される権利(例えば、商標その他のフィリピン知的財産庁(IPOPHL)に登録されている知的財産権等の使用権等)
(c)中小零細企業のフランチャイジーに課される契約前の費用、初期費用又は継続的な費用の全ての開示(例えば、フランチャイズ料、販売促進料、ロイヤルティその他関連する料金等)
(d)フランチャイザーの責任の詳細(支援の種類及び項目の列挙、及び、貿易産業省へのフランチャイズ契約の提出を含む。)
(e)中小零細企業のフランチャイジーの責任の詳細
(f)差別禁止条項
(g)フランチャイズ契約の期間及び更新の条件
(h)フランチャイズ契約の中途解約、解除又は期間満了の原因及び効力
(i)中小零細企業が契約を終了できるクーリングオフ期間に関する規定
(j)紛争解決に関する事項(2004年裁判外紛争解決手続法(共和国法9285号)における調停を申し立てることができる規定を含むことが必須)
(k)フランチャイズ契約違反に対する救済
 
なお、中小零細企業ではない企業をフランチャイジーとするフランチャイズ契約については、上記の事項を定めることは義務ではありませんが、上記の事項を定めることはベストプラクティスとして推奨されています。
また、フランチャイズ契約において上記の事項を定めている場合には、フランチャイザーに対する優遇措置を設けることも検討されています。

(3) その他
 
上記(1)のフランチャイズ契約の貿易産業省への登録、及び、上記(2)のフランチャイズ契約への必要的記載事項の記載は、既に締結済みのフランチャイズ契約については、フランチャイズ契約を更新する際に遵守する必要があります。
また、認定されたフランチャイズ協会の会員であるフランチャイザーについては、①フランチャイズ契約のひな型を貿易産業省に登録すること、及び、②中小零細企業をフランチャイジーとするフランチャイズ契約において本大統領令が定める必要的記載事項を定める旨を確約すること、という要件を満たせば、個別フランチャイズ契約の登録は不要となります。
加えて、貿易産業省は、本大統領令の施行日から90日以内にガイドラインを定めるとされております。
本大統領令の概要は上記のとおりです。フィリピンにおいては、従前は小売業に対して厳しい外資規制が存在したことから、フランチャイズの方式でフィリピン進出を図る外資系企業も存在していました。今般、小売業の外資規制が大幅に緩和され(小売業の外資規制の改正については、本レター第134号(2022年2月号)をご参照ください。)、また、本大統領令によりフランチャイズ契約に規制が設けられたことは、外資系企業のフィリピン進出形態に一定の影響を与える可能性があります。

フランチャイズの方式でフィリピンに進出する日系企業は、本大統領令を踏まえ、フランチャイズ契約の内容の見直し等を検討する必要があります。
 
(ご参考)
本レター第134号(2022年2月号)
https://www.mhmjapan.com/content/files/00063987/20220221-102537.pdf

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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